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季刊文芸誌「小説トリッパー」(3、6、9、12月発売)のweb版です。連載(小説やエッセイ)のほかに、朝日新聞出版発行の文芸ジャンルの単行本や文庫に関する書評やインタビュー、試し読みなども掲載していく予定です。本と出会えるサイトになればと思っています。

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季刊文芸誌「小説トリッパー」(3、6、9、12月発売)のweb版です。連載(小説やエッセイ)のほかに、朝日新聞出版発行の文芸ジャンルの単行本や文庫に関する書評やインタビュー、試し読みなども掲載していく予定です。本と出会えるサイトになればと思っています。

マガジン

  • 鶴谷香央理:連載コミック「傲慢と善良」(原作・辻村深月)

    【単行本第1巻、絶賛発売中!!】 https://www.amazon.co.jp/dp/4022144041 婚約者・坂庭真実が忽然と姿を消した。彼女はなぜ姿を消したのか。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる――。 現代社会の生きづらさを恐るべき解像度で描き、多くの共感を呼んだ、2023年最大のベストセラー小説『傲慢と善良』を、名手・鶴谷香央理がコミカライズ!! 【毎月20日 11時更新予定】 小説公式サイトはこちら https://publications.asahi.com/feature/gouman/

  • ロイヤルホストで夜まで語りたい

    多々あるファミリーレストランの中でも、ここでしか食べられない一線を画したお料理と心地のよいサービスで、多くのファンを獲得しているロイヤルホスト。そんな特別な場での一人一人の記憶を味わえるエッセイ連載。毎週月曜日と金曜日に公開中!

  • ジェーン・スー 伊藤亜和:往復書簡 日々の音沙汰

    作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストのジェーン・スーさんと文筆家・モデルの伊藤亜和さんによる往復書簡。朝日新聞出版のPR誌「一冊の本」で連載中の内容を転載します。毎月第2火曜日に伊藤亜和さんのお便り、第4火曜日にジェーン・スーさんのお便りを公開予定です。

  • 朝日新聞出版の文芸書

    • 263本

    書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。

  • 川添愛:連載エッセイ「パンチラインの言語学」

    文学、映画、アニメ、漫画……でひときわ印象に残る「名台詞=パンチライン」。この台詞が心に引っかかる背景には、言語学的な理由があるのかもしれない。ひとつの台詞を引用し、そこに隠れた言語学的魅力を、気鋭の言語学者・川添愛氏が解説する連載がスタート! 毎月10日に配信予定。

最近の記事

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web TRIPPERへ、ようこそ

はじめまして。 web TRIPPERにお運びいただき、ありがとうございます。 このサイトは、朝日新聞出版が発行している季刊文芸誌「小説トリッパー」のweb版です。 朝日新聞出版の文芸部門の源流は、1879(明治12)年にまでさかのぼります。この年に朝日新聞が創刊し、その10月には文芸誌を創刊しています。 140年以上の歴史の中で、朝日新聞グループの文芸部門は、いつの世も綺羅星のような作品を送り続けてきました。 最初期から現在までつづく新聞本紙の連載小説、そして「週

    • 鈴峯紅也『警視庁監察官Q ZERO2』第1回

      1  12月も中旬を過ぎると、本格的な冬将軍の到来となる。  東大本郷キャンパス前の銀杏並木も葉を落とし、本郷通りは一面の散り敷く黄金色に染まる。  この日の昼下がり、早くもビルの影が車道に伸び始めた本郷郵便局前の歩道を、1人の女性が歩いていた。  淡いグレーの地味なパンツスーツに身を包み、濃いグレーのコートを羽織った引っ詰め髪の女性だった。  一見すると学校の先生風でそれも主任クラスだが、よく見るとまだ若い。  主任に見えるのは偉そうというか、その堂々とした姿勢

      • 吉川英梨『新人女警』第4回

           二週間が経った。エミは日勤を終えて十七時半ごろに署に戻った。帰り道に浅川沿いで取った桑の葉を蚕の箱に入れる。 「あら」  いちばん小さかった最後の一頭が、頭を左右に振り続けている。餌を食べようとしない。これは繭を作り始める合図だ。他の蚕たちは一週間前に相次いでトイレットぺーパーの芯の中で繭を作っていた。繭は源田が買ってきた虫かごの中に移動してある。 「そろそろ羽化しちゃうのかな。急がないと」  エミは市内の小学校一覧表を出した。八王子市は面積が広く人口も五十五万人以上い

        • 【保阪正康著『田中角栄の昭和』春名幹男氏解説】対米従属を拒否した田中角栄

          対米従属を拒否した田中角栄 春名幹男  著者の保阪正康氏は半世紀にわたって昭和史の研究成果を世に発表し続けてきた。豊富な資料を駆使して分析し、時代を解き明かし、読者の支持を得てきた。彼の魅力は総合力だ。新聞社で言えば、政治部、文化部、経済部といった主要各部が収集するような情報を一人で集めて巧みに構成する。だから、既存の田中伝記では「田中角栄は語られているように見えて、その実、語られていない」と切り捨てている。  彼は、昭和時代を3期に分けて、前期を戦前・戦中の「軍事主導体制」

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        マガジン

        • 鶴谷香央理:連載コミック「傲慢と善良」(原作・辻村深月)
          3本
        • ロイヤルホストで夜まで語りたい
          21本
        • ジェーン・スー 伊藤亜和:往復書簡 日々の音沙汰
          5本
        • 朝日新聞出版の文芸書
          263本
        • 川添愛:連載エッセイ「パンチラインの言語学」
          13本
        • 吉川英梨『新人女警』
          3本

        記事

          ロイヤルホストで夜まで語りたい・最終回「褪せない夢」(平野紗季子)

          褪せない夢平野紗季子  幸せってどういうことかというと、例えば体の芯まで冷え切った夜にオレンジ色のロゴが輝くロイヤルホストへ駆け込んで、熱々のコスモドリアを食べること。今日の飾りレモンの立ち具合は国立競技場みたいだ〜、と喜んだりすること。途中から追いレモンと追い黒胡椒をマストでお願いしてガリガリやらせてもらうこと。ハフハフしながら中から甘い栗が飛び出すのを喜ぶこと。チキンは空で、マッシュルームは陸で、エビは海で、このドリアには世界があるからコスモポリタンなドリアなんだ〜、と

          ロイヤルホストで夜まで語りたい・最終回「褪せない夢」(平野紗季子)

          往復書簡 日々の音沙汰 ー第5回「いくらキリンの容姿が良くても」(伊藤亜和)ー

          ■前回のジェーン・スーさんからのお手紙はこちら ✉ ジェーン・スーさま ← 伊藤亜和 こんにちは。先日は北海道へのプロレス遠征旅行へお誘いいただきありがとうございました。祖父の故郷である北海道(とはいっても祖父は札幌近辺の出身で、今回行った網走からは遠く離れておりますが)への旅は、私にとっては約20年ぶりのことでした。20年前の私はまだほんの子どもで、北海道らしいものはなにひとつ口にせず、いまやどこにでもある「びっくりドンキー」のサイコロステーキを食べて満足していた記憶があ

          往復書簡 日々の音沙汰 ー第5回「いくらキリンの容姿が良くても」(伊藤亜和)ー

          急死した伯父の部屋には“幽霊”が付いてきた! 王谷晶さん『他人屋のゆうれい』冒頭特別公開

          第一章 小さい夢 入り口のドアを開けようとしたら、中で誰かが言い争う声が聞こえてきた。  大夢はそれに気付いて、「くそ、またかよ」と小声で呻いた。  一旦、どこか別の場所で時間を潰そうかと思ったけれど、持っているビニール袋にはさっきスーパーで買ってきた生の鶏胸肉と、定価税抜き三十円からさらに一〇%値引きされたモヤシが入っている。  まだ六月なのに、今夜は歩いているだけで汗をだらだらかくほど蒸し暑かった。すぐに生肉を調理したい。モヤシも傷みかけている。水も飲みたい。  ため息を

          急死した伯父の部屋には“幽霊”が付いてきた! 王谷晶さん『他人屋のゆうれい』冒頭特別公開

          ロイヤルホストで夜まで語りたい・第19回「未知のおいしさに出会える場所」(稲田俊輔)

          未知のおいしさに出会える場所稲田俊輔  僕にとってロイヤルホストの思い出は、子ども時代の幸せな記憶に始まります。外食好きな家族だったので、行きつけのお店はいくつかあったのですが、僕が一番好きだったのは間違いなくロイヤルホスト。何ならそれ以外だと少しがっかりするほどでした。  まだ「お子様ランチ」でもおかしくない年齢でしたが、僕ははなからそれを拒絶し、大人と同じようなものを食べたがりました。もっとも、最初のうちは専らハンバーグです。ハンバーグは家でもよく作ってもらっていました

          ロイヤルホストで夜まで語りたい・第19回「未知のおいしさに出会える場所」(稲田俊輔)

          「できないやつは、教えればいい」(『スクール・オブ・ロック』)――川添愛「パンチラインの言語学」第13回

           今回は私の大好きな映画『スクール・オブ・ロック』を取り上げる。のちにブロードウェイでミュージカルにもなった、ファンの多い映画だ。私は20年前に映画館で見てどハマりし、以来、DVDを定期的に見返している。  主人公は、いい加減な中年男・デューイ(ジャック・ブラック)。定職に就かず、売れないロックバンドでギターを弾いているが、勝手にギターソロを20分やったり、一人で熱くなって客席にダイブしたりするので、メンバーからは煙たがられている。かつてのバンド仲間で今は小学校の臨時教員とし

          「できないやつは、教えればいい」(『スクール・オブ・ロック』)――川添愛「パンチラインの言語学」第13回

          パラティー4杯目 働く仲間との夜ごはんは神保町店で〈連載:ロイヤルホストで夜まで語りたい・番外編〉

          パラティー4杯目 働く仲間との夜ごはんは神田神保町店で髙橋ユキ  本の街として知られる神保町には出版社もひしめく。ときどき私も神保町に行き、出版社での用事を済ませたりする。そんなとき、こんなLINEが届くことがある。 「ユキさん今日神保町いる?」  送り主は同業の河合桃子。過去には同じ週刊誌でともに記者として働いていた。今は週刊誌だけでなく、複数の週刊誌系ウェブ媒体でも仕事をしている彼女とは、愚痴を言い合ったり仕事の相談をしたりする間柄だ。また同年代で、ともに子育て中という

          パラティー4杯目 働く仲間との夜ごはんは神保町店で〈連載:ロイヤルホストで夜まで語りたい・番外編〉

          吉川英梨『新人女警』第3回

                 *    間中がプロジェクターの映像を指し示しながら、淡々と事件現場の概要を説明していく。エミはこれまでは公式的には第一発見者、もしくは被害者の知人という立場でしかなかったので、このような捜査本部の会議に出たことはなかった。八王子警察署に配属されてからも、四階にある特捜本部には数えるほどしか入っていない。間中は「いつでも来ていいよ」と言ってくれていたが、指導係の源田が「交番勤務に集中」と許してくれなかったのだ。  正義感の強い熱血漢で、背が高く胸板も厚い間中は、

          吉川英梨『新人女警』第3回

          ロイヤルホストで夜まで語りたい・第17回「ロイヤルホストと勤務医時代」(朝比奈秋)

          ロイヤルホストと勤務医時代朝比奈秋  郊外の、国道沿いにあるロイヤルホストだった。地方ともなると夜の12時を越えれば、国道を走る車はめっきり減って、周りの建物からの灯りも消えだす。そのせいか、オレンジ色の看板が遠くからでもぼんやりと浮き上がって見えた。暗い道の先に、そこだけ人の気配が灯ったようだった。そこに向かって私は急ぐともなく、ただぼんやりとマイペースに歩いていたと思う。  10年ほど前、そのロイヤルホストは深夜営業をしていて、私は深夜帯に通う常連客の一人だった。平日の

          ロイヤルホストで夜まで語りたい・第17回「ロイヤルホストと勤務医時代」(朝比奈秋)

          ロイヤルホストで夜まで語りたい・第16回「ロイホがロイホであるために」(村瀬秀信)

          ロイホがロイホであるために村瀬秀信  大塚くんだりにロイホがあってくれたおかげで、俺の人生はギリギリの潤いを保てている。  東京に出てきて二十余年。10年ほど前に75歳までの玉砕ローンで買ったネコの額の一軒家。最寄りのファミレスはロイホである。たいした出世だ。生まれ育った貧乏くさい家から含めて、引っ越しても、引っ越してもロイヤルホストのない町からついに脱却した。  ロイホはいまや大塚における最高級レストランである。かつてファミレス御三家なんて言われたことも遠い昔。ロイホはこ

          ロイヤルホストで夜まで語りたい・第16回「ロイホがロイホであるために」(村瀬秀信)

          ロイヤルホストで夜まで語りたい・第15回「ロイヤルホスト慕情」(織守きょうや)

          ロイヤルホスト慕情織守きょうや  私にとって外食チェーンのファミレスは、愛すべき日常の一部だ。しかしその中でロイヤルホストは、よそいきとまではいかないまでも、ちょっとだけ特別感のある場所だ。ロイヤルホストの思い出を書いてほしい、と依頼をいただき喜んで受けたはいいものの、どのエピソードを書こうか迷うくらいにはたくさん思い出がある。   たとえば、近所の店舗へモーニングを食べにいったことがある。新型コロナウイルスの自粛期間が明けてしばらくして、まだ外食には少しためらいが残ってい

          ロイヤルホストで夜まで語りたい・第15回「ロイヤルホスト慕情」(織守きょうや)

          吉川英梨『新人女警』第2回

           エミは特に体の異常はなく、八王子署に戻った。源田が地域課フロアで、日報を書いていた。エミを見て心配する。 「もう大丈夫なの」 「はい。ご迷惑をおかけしました」 「いやいや、そこまで虫が苦手だと知らなくて、ごめんね」 「いえ――虫が苦手なわけではないんです」  源田のデスクには、件の箱があった。耳を澄ますと確かにチリチリと音が聞こえる。 「もう一度、見せてもらってもいいですか」 「いいけど、倒れないでよ」  エミは箱を開けた。箱の底に桑の葉が敷き詰められている。蚕は大きいもの

          吉川英梨『新人女警』第2回

        • 2024年に朝日新聞出版から発売された文芸書を一挙に紹介します!

          『いつかまた、ここで暮らせたら』大崎百紀著(2024年1月19日発売)  90歳で認知症の父と、84歳で寝たきりの母を介護することになった著者。両親の愛着たっぷりの我が家で在宅介護することを目標に、介護福祉士の資格まで取得したものの……。福祉サービスをはじめ、お役立ち情報満載の介護奮闘記。 『黙って喋って』ヒコロヒー著(2024年1月31日発売)  感情がほとばしって言い過ぎた言葉、平気をよそおって言えなかった言葉。「もう黙って」「もっと喋って」と思わずにはいられない、

          2024年に朝日新聞出版から発売された文芸書を一挙に紹介します!