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季刊文芸誌「小説トリッパー」(3、6、9、12月発売)のweb版です。連載(小説やエッ…

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季刊文芸誌「小説トリッパー」(3、6、9、12月発売)のweb版です。連載(小説やエッセイ)のほかに、朝日新聞出版発行の文芸ジャンルの単行本や文庫に関する書評やインタビュー、試し読みなども掲載していく予定です。本と出会えるサイトになればと思っています。

マガジン

  • 朝日新聞出版の文芸書

    • 241本

    書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。

  • 鶴谷香央理:連載コミック「傲慢と善良」(原作・辻村深月)

    【単行本第1巻、9月13日発売!!】 婚約者・坂庭真実が忽然と姿を消した。彼女はなぜ姿を消したのか。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる――。 現代社会の生きづらさを恐るべき解像度で描き、多くの共感を呼んだ、2023年最大のベストセラー小説『傲慢と善良』を、名手・鶴谷香央理がコミカライズ!! 【毎月20日 11時更新予定】 小説公式サイトはこちら https://publications.asahi.com/feature/gouman/

  • 北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』

    平成を大法する大ベストセラー作家・佐伯泰英。その膨大な著作をすべて読破してレポート。読者をひきつけてやまない魅力を全力で伝えます!

  • 年森瑛:連載エッセイ「バッド入っても腹は減る」

    パスタを茹でながら、キャベツを煮込みながら、一冊の本をじっくり読む――。いちばん読書がはかどるのはキッチンだ。いま再注目の新人作家による、おいしい読書日記連載スタート。毎月15日更新予定。

  • 川添愛:連載エッセイ「パンチラインの言語学」

    文学、映画、アニメ、漫画……でひときわ印象に残る「名台詞=パンチライン」。この台詞が心に引っかかる背景には、言語学的な理由があるのかもしれない。ひとつの台詞を引用し、そこに隠れた言語学的魅力を、気鋭の言語学者・川添愛氏が解説する連載がスタート! 毎月10日に配信予定。

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web TRIPPERへ、ようこそ

はじめまして。 web TRIPPERにお運びいただき、ありがとうございます。 このサイトは、朝日新聞出版が発行している季刊文芸誌「小説トリッパー」のweb版です。 朝日新聞出版の文芸部門の源流は、1879(明治12)年にまでさかのぼります。この年に朝日新聞が創刊し、その10月には文芸誌を創刊しています。 140年以上の歴史の中で、朝日新聞グループの文芸部門は、いつの世も綺羅星のような作品を送り続けてきました。 最初期から現在までつづく新聞本紙の連載小説、そして「週

  • 「誰にも奪えない」「自分にしか書けない」自分だけの言葉を大切にした新人作家ふたりの眼差し

    「心がふっと軽くなった」「共感しかない」「清々しい気持ちになった」といった感想がSNSやnoteに寄せられたふたつの作品。  2024年1月に初のエッセイ集『置かれた場所であばれたい』(以下、『置かあば』)を刊行した潮井エムコさんは、書くことが苦手だったという。  4月にデビュー小説『クリームイエローの海と春キャベツのある家』(以下、『クリキャベ』)を刊行したせやま南天さんが、初めて書く中編小説のテーマに選んだのは、家事だった。  そんなふたりが、書くことに込めた思いや

    • +21

      鶴谷香央理:『傲慢と善良』第7話

      • 北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第24回

        第10峰『古着屋総兵衛影始末』『新・古着屋総兵衛』其の四 狭い日本を飛び出して国際貿易に活路を見出す  が、前述したように、本シリーズで佐伯泰英が描きたいのはそこではない。船だ。海だ。狭い日本を飛び出さんとする総兵衛のガッツだ。  そのために作者は、「そこまで望む佐伯ファンがいるのかなあ」と思うほどの熱量で、早い段階から船の描写に精を出す。総兵衛は、今後の商売のためにも多くの荷を運ぶだけではなく、外国の列強とも戦える戦闘能力を兼ね備えた船が必要だと考え、大枚をはたいて勝

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      • 鶴谷香央理:連載コミック「傲慢と善良」(原作・辻村深月)
        4本
      • 北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』
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      • 年森瑛:連載エッセイ「バッド入っても腹は減る」
        9本
      • 川添愛:連載エッセイ「パンチラインの言語学」
        10本
      • 上坂あゆ美:連載エッセイ、短歌「人には人の呪いと言葉」
        7本

      記事

      • 【いまこそ読みたい!不朽の名作】吉川英治文学賞受賞の傑作短編集、待望の復刊/北原亞以子著『夜の明けるまで 深川澪通り木戸番小屋』末國善己さんによる文庫解説を公開

         江戸の市中には、警備を容易にするため町の境界に木戸があった。木戸は夜四つ(午後10時頃)に閉じられ、それ以降に木戸を抜けるには、(町医者と産婆を除いて)木戸番がチェックをした後に、木戸の横に作られた潜戸を通っていたという。  犯罪が起こると、木戸を閉じて捕物に協力する木戸番は、町を火事と犯罪から守っていたが、少ない予算で運営されていたため、屈強な若者ではなく安い給料で働いてくれる老夫婦が雇われることが多かった。給料が少ない代わりに、木戸番は番小屋での商売が認められていて、

        【いまこそ読みたい!不朽の名作】吉川英治文学賞受賞の傑作短編集、待望の復刊/北原亞以子著『夜の明けるまで 深川澪通り木戸番小屋』末國善己さんによる文庫解説を公開

        年森瑛「バッド入っても腹は減る」第9回

         肌寒さで目を覚ました。  重たい窓ガラスをずるりずるり引きずって開けると、冷たく湿った空気が肺を満たした。日が当たるところまで身を乗り出す。残り火のような日差しが私を包んだ。秋だった。  ここ3週間くらい、帯状疱疹という病気によって右足の神経がウイルスにやられてしまい、ろくに歩けない状態になっていた。寝ても覚めても激痛で、上司に平身低頭して在宅勤務にさせてもらった。上司の上司からは睨まれたが、痛いものは痛いし、歩けないものは歩けない。そうしてベッドでうねうねしている間に夏が

        年森瑛「バッド入っても腹は減る」第9回

      • 「自分を癒やす」「人生のちょっとしたおもしろさを楽しむ」ふたりの新人作家が読者に届けるエール

        「読者の圧倒的支持を得る」。どこかで耳にしたことがある言葉だと思う方も多いだろう。しかし、実際にはそんなに当たり前のことでも、簡単なことでもない。  今年相次いでデビュー作を上梓したふたりの新人作家、潮井エムコさんとせやま南天さん。  潮井さんはエッセイストとして、せやまさんは小説家としてデビューした。ふたりの作品は多くの読者に支持され、ネット上には共感の声や応援する声が届けられている。  まずはふたりのデビュー作について紹介したい。 新人作家ふたりが、お互いや読者か

        「自分を癒やす」「人生のちょっとしたおもしろさを楽しむ」ふたりの新人作家が読者に届けるエール

        北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第23回

        第10峰『古着屋総兵衛影始末』『新・古着屋総兵衛』其の参 『新・古着屋総兵衛』の主役は、まさかの新キャラだった 10代総兵衛にこめた佐伯泰英の狙いとは  佐伯泰英山脈の登山も後半に差し掛かると、仕事部屋に佐伯本があふれかえっている状態になる。  紙の本は読みやすいが、かさばるのが難点なのだ。頭を悩ませた私は、シリーズごとに段ボールにまとめ、ベッド下のスペースに収納している。 『古着屋総兵衛影始末』を読み終えたので、購入したまま段ボール箱にしまっていた『新・古着屋総兵

        北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第23回

        なりたい自分になりたい(『違国日記』)――川添愛「パンチラインの言語学」第10回

         今回はヤマシタトモコの『違国日記』を取り上げる。ガッキー主演の実写映画も見ようと思ったが、この原稿の締め切り前に見られなさそうなので、取り上げるのはもっぱら原作漫画の方だ。  本作は、突然の事故で両親を亡くした15歳の少女・朝と、彼女の叔母である小説家・槙生との同居生活を描くものだ。槙生は姉(朝の亡き母)と折り合いが悪く、朝ともほとんど面識がなかったが、朝が両親の葬式で親戚中からたらい回しにされそうになっているのを見かねて、ほぼ勢いで彼女を引き取ることを決める。そのとき親戚

        なりたい自分になりたい(『違国日記』)――川添愛「パンチラインの言語学」第10回

      • パンダと人類の歴史をひもとく、小さく、ひそやかな問題作 /高山羽根子著『パンダ・パシフィカ』小川公代さんによる書評を特別公開!

        弱きものの“命をあずかる”  高山羽根子はデビュー以来、一貫して“命をあずかる”責任について書いてきている。“命をあずかる”とはどういうことか。それは子どもを授かった親のケア実践かもしれない。あるいは、医療従事者が提供するケアかもしれない。獣医もまた大切な命をあずかっている。無数の名もなき人たちも、日々小さくて、脆弱な生きものの命を育て、見守っている。高山のデビュー作「うどん キツネつきの」では、宇宙生物である可能性が示唆される犬が、三人姉妹の愛を一身に受ける対象として描か

        パンダと人類の歴史をひもとく、小さく、ひそやかな問題作 /高山羽根子著『パンダ・パシフィカ』小川公代さんによる書評を特別公開!

      • 母娘問題の第一人者による力作『母は不幸しか語らない 母・娘・祖母の共存』/水上文氏による解説を特別掲載!

         私たちは親と共存することができるのだろうか?  親の加害性を告発する言説の洪水を見ると、時に私はそんな風に問いかけたくなってしまうことがある。  告発の言葉は増えた。もう、親からの加害を子どもの立場から告発しその長く続く悪影響を表現する「毒親」という言葉だけではない。ただ格差ばかりが拡大していく現代では、平等なレースなんてどこにもないことを誰もが知っている。そして「親ガチャ」という言葉も広まった。どんな親のもとに生まれるかは選ぶことができないという偶然性を強調し、親とガ

        母娘問題の第一人者による力作『母は不幸しか語らない 母・娘・祖母の共存』/水上文氏による解説を特別掲載!

        上坂あゆ美連載「人には人の呪いと言葉」第7回

        セフレの言葉に嫉妬してしまう  AUさん、こんにちは。  5年は長いですね。「彼女にはしない、ならないという前提で」関係が始まっているということなので、彼の方に特に落ち度はなく、まあ、だからこそしんどいわけですよね。  私はどうかあなたに健やかに生きてほしいと思っています。できるだけ傷つくことが少なく、喜びや楽しみが豊富な人生を歩んでほしいです。だからご自分でも仰る通りセフレに執着するのはやめたほうがいいと思いますが、そんなことわかってんだよ!!という声が聞こえてきそうで

        上坂あゆ美連載「人には人の呪いと言葉」第7回

        北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第22回

        第10峰『古着屋総兵衛影始末』『新・古着屋総兵衛』其の弐 抑え気味だった感情が、第3巻でついに爆発  家康の命が総兵衛個人ではなく鳶沢一族に与えられたものであることから、脇役陣が活躍する場面が多いのも本作の特徴。いい仕事をする彼らがおぜん立てをし、総兵衛が最後を締めるのが通常の流れだ。  個人技を生かして大黒屋に有利な状況を作り出す組織プレーは『鎌倉河岸捕物控』を思い出させるところもあるが、本作ではより職人的に任務が遂行され、プロ集団らしいストイックさが描かれる。  

        北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第22回

        同期の紅葉 松嶋智左                              

         友達とも違う。仲間というイメージでもない。戦友などというのはおこがましい。やはり同期は同期というしか、他にたとえようがないのかもしれない。    白堂市は、住宅地域と農業地域が七対三の割合で広がり、私鉄の普通列車のみ停まる駅がひとつある。県庁や県警本部のある中心部に行くには、途中で快速に乗り換えても四十分はかかった。  白堂警察署は署員数二百人弱で、県下では中規模署になる。管内に中小企業や商店はそれなりにあって、窃盗事案は多いが政治犯や経済犯罪はほとんどない。唯一、特殊詐欺

        同期の紅葉 松嶋智左                              

      • なぜ江藤淳の「喪失」は書き換えられなければならなかったのか?/佐々木敦著『成熟の喪失』西村紗知さんによる書評を特別公開!

        成熟論が成熟する方法 本書は佐々木敦が「日本的成熟」を世に問うた仕事で、メインの対象は庵野秀明監督『シン・エヴァンゲリオン劇場版』と江藤淳『成熟と喪失』である。著者は、『ラブ&ポップ』『キューティーハニー』といった実写作品から、「エヴァ」以降の「シン」シリーズに至るまでの庵野監督作品を通じ、主人公の「成熟」の史的分析に取り組んでいる。キーワードは「他者」「公と私」である。例えば、『シン・ゴジラ』で描かれているのは、「自信と確信を持って積極的に「公」の一部になることで自己実現を

        なぜ江藤淳の「喪失」は書き換えられなければならなかったのか?/佐々木敦著『成熟の喪失』西村紗知さんによる書評を特別公開!

      • 本当の“共犯者”はいったい誰なのか? 真保裕一『共犯の畔』池上冬樹さんによる書評を特別公開

        “畔”とは何か? 最後の最後に読者に激しく突きつけられる 真保裕一は何を読んでも面白い。直木賞をとってもおかしくないし、ベテラン作家対象の柴田錬三郎賞をとってもおかしくない。  たとえば、今年3月に出た『魂の歌が聞こえるか』(講談社)もそう。音楽ディレクターが無名バンドを世に送り出すという、真保裕一得意の職業小説でありながら、バンドのメンバーに秘密をもたせて、ミステリに仕立てているからたまらない。新人発掘とともにベテランの復活というストーリーも並行させ、そこにいくつものひね

        本当の“共犯者”はいったい誰なのか? 真保裕一『共犯の畔』池上冬樹さんによる書評を特別公開