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季刊文芸誌「小説トリッパー」(3、6、9、12月発売)のweb版です。連載(小説やエッ…

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季刊文芸誌「小説トリッパー」(3、6、9、12月発売)のweb版です。連載(小説やエッセイ)のほかに、朝日新聞出版発行の文芸ジャンルの単行本や文庫に関する書評やインタビュー、試し読みなども掲載していく予定です。本と出会えるサイトになればと思っています。

マガジン

  • 川添愛:連載エッセイ「パンチラインの言語学」

    文学、映画、アニメ、漫画……でひときわ印象に残る「名台詞=パンチライン」。この台詞が心に引っかかる背景には、言語学的な理由があるのかもしれない。ひとつの台詞を引用し、そこに隠れた言語学的魅力を、気鋭の言語学者・川添愛氏が解説する連載がスタート! 毎月10日に配信予定。

  • 北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』

    平成を大法する大ベストセラー作家・佐伯泰英。その膨大な著作をすべて読破してレポート。読者をひきつけてやまない魅力を全力で伝えます!

  • 朝日新聞出版の文芸書

    • 248本

    書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。

  • 上坂あゆ美:連載エッセイ、短歌「人には人の呪いと言葉」

    喉につかえてしまった魚の小骨のように、あるいは撤去できていない不発弾のように、自分の中でのみ込みきれていない思い出や気持ちなどありませんか。あなたの「人生の呪い」に、歌人・上坂あゆ美が短歌と、エッセイでこたえます。

  • 鶴谷香央理:連載コミック「傲慢と善良」(原作・辻村深月)

    【単行本第1巻、9月13日発売!!】 婚約者・坂庭真実が忽然と姿を消した。彼女はなぜ姿を消したのか。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる――。 現代社会の生きづらさを恐るべき解像度で描き、多くの共感を呼んだ、2023年最大のベストセラー小説『傲慢と善良』を、名手・鶴谷香央理がコミカライズ!! 【毎月20日 11時更新予定】 小説公式サイトはこちら https://publications.asahi.com/feature/gouman/

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web TRIPPERへ、ようこそ

はじめまして。 web TRIPPERにお運びいただき、ありがとうございます。 このサイトは、朝日新聞出版が発行している季刊文芸誌「小説トリッパー」のweb版です。 朝日新聞出版の文芸部門の源流は、1879(明治12)年にまでさかのぼります。この年に朝日新聞が創刊し、その10月には文芸誌を創刊しています。 140年以上の歴史の中で、朝日新聞グループの文芸部門は、いつの世も綺羅星のような作品を送り続けてきました。 最初期から現在までつづく新聞本紙の連載小説、そして「週

    • 最もフィジカルで最もプリミティブで、そして最もフェティッシュ(ドラマ『地面師たち』)――川添愛「パンチラインの言語学」第11回

       NETFLIXのドラマ『地面師たち』にハマっている。今ちょうど髪型がトヨエツ演じるハリソン山中の髪を少し長くしたぐらいの感じなので、サングラスをかけるたびにハリソンになりきって「地面師になりませんか……?」とつぶやいている。街を歩くと、辻本拓海の憂いを帯びた表情が頭に浮かび、ウ~ウァ~ワ~ワ~ンというカタカナでは表現しづらい石野卓球の音楽が脳内再生される。たぶん私と同じような人が、今(2024年9月現在)の日本には100万人ぐらいいると思う。  同作は、新庄耕の同名小説を大

      • 北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第27回

        第12峰『オムニバスシリーズ』『照降町四季』『柳橋の桜』其の壱 時代小説の鉄人が放つ“アラ傘”群峰 読み切りの『オムニバスシリーズ』で新境地を開拓 こんな話が読みたかった! 小さな話の大きな満足感  傘寿を控えた70代後半の佐伯泰英が、長いシリーズばかりを書き継いで行くのは老化もあってつらくなってきたこと、出版事情も長期シリーズには適さなくなったことを理由に立ち上げたのが『オムニバスシリーズ』。2020年から23年にかけて1年1作のペースで4冊刊行された。各作品に関連性

      • 遊郭独特の慣習を見事に取り入れた時代ミステリー『吉原面番所手控』/戸田義長さん刊行記念エッセイ公開!

        川柳から見た遊女たち 拙著『吉原面番所手控』は私の4冊目の著書で、これまで商業出版された作品はすべて時代ミステリとなっています。かつて現代ミステリを公募新人賞に何度か投稿したこともありますが、いずれもあえなく落選しました。  それゆえ目先を変えて時代ミステリに転向したというわけでもないのですが、ジャン=クリストフ・グランジェ著『クリムゾン・リバー』を読んだことが大きな切っ掛けとなったことは間違いありません。グランジェが割合あっさりと流しているあるネタについて「この使い方は勿

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      • 川添愛:連載エッセイ「パンチラインの言語学」
        11本
      • 北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』
        25本
      • 朝日新聞出版の文芸書
        248本
      • 上坂あゆ美:連載エッセイ、短歌「人には人の呪いと言葉」
        8本
      • 鶴谷香央理:連載コミック「傲慢と善良」(原作・辻村深月)
        3本
      • 年森瑛:連載エッセイ「バッド入っても腹は減る」
        9本

      記事

      • 『源氏物語』が面白いだけでなく悲しみにも効く理由を、「こころ」の言葉に照準を絞り解きほぐした帚木蓬生さんの『源氏物語のこころ』/尾崎真理子さんによる書評公開

        悲しみに効く、言葉の妙薬として『源氏物語』ばかりは、既成の現代語訳を読み通せば、それで終わりとはならない。全体の筋を頭に置くのはその世界への参加最低条件であって、そこからが面白いのだ。  幾種かの解説書に目を通して、一応の知識を得たつもりでも、十年、二十年に一度は必ず、『源氏』絡みの話題作が現れるのもこの作品の特別さ。しかも、社会の風潮や研究の進展によって、これほど評価や解釈が変わり続けてきた物語もないから、ブームのたびに新たな知識を得る楽しみも生じる。大河ドラマ「光る君へ

        『源氏物語』が面白いだけでなく悲しみにも効く理由を、「こころ」の言葉に照準を絞り解きほぐした帚木蓬生さんの『源氏物語のこころ』/尾崎真理子さんによる書評公開

        上坂あゆ美連載「人には人の呪いと言葉」第8回

         なまものさん、こんにちは。  いやー大変ですね。あなたの状況を想像しただけでかなりしんどかったです。本当に申し訳ないですが私だったら即、お母さまと縁を切るか明確に距離を置きます。ただ、なまものさんは私よりずっとご家族への慈しみに溢れた人なのだろうと思います。その上で「母との関わりを断たずに、どんな心持ちでいたら母の振る舞いに耐えられるか」ということなのですが…………あの、色々、本当に色々考えたのですが、妙案は思いつきませんでした。すみません。    例えば、お母さまを宇宙人

        上坂あゆ美連載「人には人の呪いと言葉」第8回

      • 【全文公開】田中慎弥『死神』/11月12日までの期間限定!

        ▼刊行記念エッセイはこちら 死神 中学二年の時、初めて本当に死のうとした。つまり、初めてあいつに会った。そのことをあとであいつに言うと、 「お前が死にたがるのは俺のせいなんかじゃない。お前の意思だよ。」  だが、どう考えても、死とあいつとは一体だ。何しろ、死神なのだから。  なぜ死のうとしたのか、正直分らない。しかし、十年以上も生きていて、一度も死にたいと思ったことがないなんて、あり得るだろうか? 普通、人は、あいつと会わずにすむのだろうか? 私は作家になり、十代の頃のこと

        【全文公開】田中慎弥『死神』/11月12日までの期間限定!

        北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第26回

        第11峰『交代寄合伊那衆異聞』其の弐 変化を恐れず突き進む、藤之助の前のめり人生 全読者が期待した坂本龍馬が登場するが……  フィクションといえども史実から逸脱しすぎると興を削ぐということなのか、幕末前夜の時代を藤之助が疾走する本作には、実際に起きた出来事や、将軍をはじめ勝海舟やシーボルトなど実在した人物がしばしば登場する。  その場合、ある程度は史実を再現しつつ、そこに架空の登場人物たちを紛れ込ませるような手法を選ぶ作家もいるだろうが、佐伯泰英は物語優先派。藤之助と

        北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第26回

      • 【田中慎弥著『死神』刊行記念エッセイ】生きるための小説/期間限定全文試し読み公開も決定!

        ※※ 本書の刊行を記念して、11月5日(火)11時から12日(火)朝10時までの間、全文をwebTRIPPER上で無料公開いたします ※※ 生きるための小説 他人から見ればたいしたことでもないのだろうが、まだ幼かった頃からいろいろいやな体験をして、十代になっても、一生人に言いたくないと思うような事態も含め本当に暗い日々を過したため、これまで何度も自分で命を終らせようとしてきた。五十代になったいまもまだ、その衝動から解放されてはいない。過去の体験ばかりでなく、作家になってから

        【田中慎弥著『死神』刊行記念エッセイ】生きるための小説/期間限定全文試し読み公開も決定!

      • 【冒頭部分読めます!】あまりの衝撃に担当編集者も打ち震えた、恐怖の限界会社員ミステリ『死んだら永遠に休めます』/続きはネットギャリーで全文公開!

        \書店関係者、レビュアーの皆様!/ ━━━━内容紹介━━━━  死んでほしいと思っていたパワハラ上司が死んだらしい。容疑者は――部下、全員。  無能なパワハラ上司に苦しめられながら毎日深夜まで働き詰めの生活を送る28歳の主人公・青瀬。突然失踪したパワハラ上司・前川から届いたメールの件名は「私は殺されました」。本文には容疑者候補として「総務経理本部」全員の名前があった。  限界会社員・青瀬と妙に頭の冴える派遣社員・仁菜は二人で真相解明に取り組むのだが……。 ━━━━━━━━

        【冒頭部分読めます!】あまりの衝撃に担当編集者も打ち震えた、恐怖の限界会社員ミステリ『死んだら永遠に休めます』/続きはネットギャリーで全文公開!

      • 「おねしょする5歳」に「あばれる小6」子どもたちのリアルな苦しみ描く、ふたりの新人作家が生み出す“新時代”の空気

         子どもはいきいきしていて明るいだけではない。ときにストレスで「気持ちとからだが別」になってしまうこともある。  今年デビュー作を上梓したふたりの新人作家が、そんな子どもたちの姿をリアルに書き上げた。  ひとりは潮井エムコさん。初めて書いた高校時代の思い出についてのエッセイをnoteにアップしたところ、SNSで拡散され、累計30万を超える「いいね」を獲得。2024年1月に初のエッセイ集、『置かれた場所であばれたい』(以下、『置かあば』)を刊行した。  そしてもうひとり。

        「おねしょする5歳」に「あばれる小6」子どもたちのリアルな苦しみ描く、ふたりの新人作家が生み出す“新時代”の空気

        北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第25回

        第11峰『交代寄合伊那衆異聞』其の壱伊那の山猿が巻き起こすサムライ・アクション巨編 腰に名刀、懐にピストル。和洋折衷ヒーロー見参! 我らが佐伯御大が幕末に狙いを定めた  佐伯泰英山脈をひとつのカタマリとして見ると、私はいま8合目あたりにいる計算になるだろうか。先が見えてきたとも言えそうだが、疲労のため読書ペースが落ちてきているのが心配だ。ということで1週間ほど休息をとり、気分も新たに〝交代寄合岳”の第1巻を開くなりニヤケてしまった。 「とうとう幕末ものがきた!」  

        北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第25回

      • \今年も開催!/朝日文庫「秋の時代小説フェア」ラインナップを紹介します!

        〈新刊〉■北原亞以子『夜の明けるまで 深川澪通り木戸番小屋』  木戸番夫婦のもとには、さまざまな事情を抱えた人々が訪れる。無鉄砲な女友達に振り回されるおもよ(「女のしごと」)、かつて身勝手な理由で捨てた妾腹の娘を取り戻そうとする駒右衛門(「絆」)。江戸の片隅でたくましく生きる庶民を描いた傑作短編8編。《解説・末國善己》 ■佐々木裕一『遥かな絆 斬! 江戸の用心棒』  諸国放浪から江戸に戻って3年。市井の暮らしに馴染んだ真十郎は、身寄りのない五人姉妹の用心棒を引き受けた。

        \今年も開催!/朝日文庫「秋の時代小説フェア」ラインナップを紹介します!

      • 「誰にも奪えない」「自分にしか書けない」自分だけの言葉を大切にした新人作家ふたりの眼差し

        「心がふっと軽くなった」「共感しかない」「清々しい気持ちになった」といった感想がSNSやnoteに寄せられたふたつの作品。  2024年1月に初のエッセイ集『置かれた場所であばれたい』(以下、『置かあば』)を刊行した潮井エムコさんは、書くことが苦手だったという。  4月にデビュー小説『クリームイエローの海と春キャベツのある家』(以下、『クリキャベ』)を刊行したせやま南天さんが、初めて書く中編小説のテーマに選んだのは、家事だった。  そんなふたりが、書くことに込めた思いや

        「誰にも奪えない」「自分にしか書けない」自分だけの言葉を大切にした新人作家ふたりの眼差し

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        鶴谷香央理:『傲慢と善良』第7話

        鶴谷香央理:『傲慢と善良』第7話

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        北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第24回

        第10峰『古着屋総兵衛影始末』『新・古着屋総兵衛』其の四 狭い日本を飛び出して国際貿易に活路を見出す  が、前述したように、本シリーズで佐伯泰英が描きたいのはそこではない。船だ。海だ。狭い日本を飛び出さんとする総兵衛のガッツだ。  そのために作者は、「そこまで望む佐伯ファンがいるのかなあ」と思うほどの熱量で、早い段階から船の描写に精を出す。総兵衛は、今後の商売のためにも多くの荷を運ぶだけではなく、外国の列強とも戦える戦闘能力を兼ね備えた船が必要だと考え、大枚をはたいて勝

        北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第24回