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季刊文芸誌「小説トリッパー」(3、6、9、12月発売)のweb版です。連載(小説やエッセイ)のほかに、朝日新聞出版発行の文芸ジャンルの単行本や文庫に関する書評やインタビュー、試し読みなども掲載していく予定です。本と出会えるサイトになればと思っています。

マガジン

  • 李琴峰「日本語からの祝福、日本語への祝福」

    台湾出身の芥川賞作家・李琴峰さんによる日本語への思いを綴ったエッセイです。朝日新聞出版のPR誌「一冊の本」で連載中の内容を1カ月遅れで転載します。毎月1日に最新回を公開予定です。

  • 朝日新聞出版の文芸書

    • 156本

    書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。

  • 警察短篇小説競作

    名手による警察小説をお楽しみください。

  • 塩田武士『存在のすべてを』

    2023年9月7日発売の塩田武士さん『存在のすべてを』に関する記事をまとめています。

  • 宮内悠介『ラウリ・クースクを探して』

    2023年8月21日発売の宮内悠介さん『ラウリ・クースクを探して』に関する記事をまとめています。

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web TRIPPERへ、ようこそ

はじめまして。 web TRIPPERにお運びいただき、ありがとうございます。 このサイトは、朝日新聞出版が発行している季刊文芸誌「小説トリッパー」のweb版です。 朝日新聞出版の文芸部門の源流は、1879(明治12)年にまでさかのぼります。この年に朝日新聞が創刊し、その10月には文芸誌を創刊しています。 140年以上の歴史の中で、朝日新聞グループの文芸部門は、いつの世も綺羅星のような作品を送り続けてきました。 最初期から現在までつづく新聞本紙の連載小説、そして「週

    • コンビニ勤務記――李琴峰「日本語からの祝福、日本語への祝福」第19回

      第19回 コンビニ勤務記  台湾にいた頃、私は学力と学歴を活かしてもっぱら家庭教師のアルバイトをしていた。教えたことがあるのは国語と英語、そして日本語である。家庭教師は時給が高く、コンビニ店員の四、五倍だった。  ところが日本に来ると、台湾での学力と学歴は一切通用しなくなった。日本の義務教育も入試も受けたことがないし、台湾随一の大学に通っていても、日本では「何それ聞いたことない」状態である。当たり前だが、台湾の「国語」と日本の「国語」は内容が全然違う。日本語の家庭教師のニ

    • 冬季号は創作が1本に、新連載もスタート! 連載、連作3本堂々完結。評論も充実!〈「小説TRIPPER」2023年冬季号ラインナップ紹介〉

      ◆創作屋敷葉 「常時録画の愛」  将来を約束した恋人でもなく、一生食べていける仕事でもない。「交際」を「職業」にしているカップルYouTuberの雪葉と晃。偶然バズった動画配信を中途半端な気持ちのまま続ける二人だが、晃が化粧水のプロデュースに乗り出したことで、雪葉は「お笑い」への道を意識しはじめる。真の「相方」を探す現代の成長小説。 ◆新連載真保裕一 「共犯の畔」  ある国会議員の事務所で立て籠もり事件が発生、犯人はあっさり逮捕されるが黙秘を貫く。やがて33年前に行われ

    • 【累計40万部突破!】群ようこさんの大人気「生活」シリーズ最新文庫『たべる生活』が発売

      ■最新文庫『たべる生活』  とにかく体は、たべるものでできている――。料理はどちらかというと嫌いだと語る群さんが、自分の身体を一番心地よい状態に保てるよう、〈たべること〉にとことん向き合った「食」エッセイ。「自分で御飯を作るということは、“米と味噌さえ家にあれば大丈夫”という気持ちの根っこができること」。 ■やたらとしんどいときこそ、ぬるーく。シリーズ第1作『ぬるい生活』  年齢を重ねるにつれ、体調不良、心の不調など、様々な問題は出てくるもの。そんな“ままならなくなって

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    • 森絵都『獣の夜』
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    • ステージ4のがん患者、「ガン遊詩人」の鎌田東二・京都大学名誉教授が、島薗進さんの『死生観を問う 万葉集から金子みすゞへ』を評す

      「あなた自身の死生観」のために、多大なヒントと気づき  島薗進さんとは半世紀の付き合いだ。二十代の半ばに宗教社会学研究会で初めて出会って以来、さまざまな局面で伴走してきた。  その50年近くの島薗進の学道探究の旅路を間近に見て来た者として、最新著『死生観を問う 万葉集から金子みすゞへ』は、折口信夫研究(修士論文)から死生学研究(東京大学COE拠点リーダー)を経て、グリーフケア研究に参入してきた「島薗学」の総括とも集大成とも言える渾身の一冊であると受け止めている。島薗進の眼

      ステージ4のがん患者、「ガン遊詩人」の鎌田東二・京都大学名誉教授が、島薗進さんの『死生観を問う 万葉集から金子みすゞへ』を評す

      鬼火 鳴神響一

             【1】    石造りの建物のなかは陰うつな蛍光灯の明かりで照らされていて湿っぽかった。一〇〇年以上は経っていそうな古めかしく陰気な警察署内だった。鉄格子の向こうには隣接するワイナリーを取り巻く明るい緑の森が見えている。 「小僧たち、いい加減に観念しろ。おまえたちは麻薬の密売人なんだ。一生刑務所暮らしは覚悟するんだな」  訛りの強い英語が響いた。  黒い制服を着た痩せぎすの中年警察官は、人さし指を突き出して脅した。 「ウィーンで借りたレンタカーです。トラン

      鬼火 鳴神響一

    • 大矢博子さんが「夫婦」をテーマに編んだ名作短編集『朝日文庫時代小説アンソロジー めおと』文庫解説を特別公開!

       時代小説の醍醐味は、現代とは異なる文明、異なる社会システム、異なる価値観の中で暮らす人々が描かれているという点にある。  中でも結婚の制度は時代によって大きく変わってきた。たとえば江戸時代をとってみても、結婚のシステムやそこに求められる夫婦像も、民法の内容に至るまで、今とはかなり異なっている。  本書では、そんな異なる社会に生きる「夫婦」に焦点を当てて、6作をセレクトした。武家の夫婦ものと町人の夫婦ものが3作ずつ。新婚から歳月を重ねた老夫婦まで、明るく微笑ましい夫婦から

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    • NHK大河「光る君へ」をより深く楽しめる一冊!永井路子著『この世をば 藤原道長と平安王朝の時代 上・下』澤田瞳子さんによる文庫解説を特別公開!

       英雄を一点非の打ちどころのない人物として描くことは、非常にたやすい。なぜなら英雄とは凡人の予想もつかぬ人間であるがゆえに英雄たりえ、突飛な行動も非論理的な言説も「英雄」という設定の前には、すべて許されてしまうからだ。  難しいのはむしろ、英雄をただの平凡な生身の人間として描くこと。超人であれば遭わぬであろう悩み苦しみ、ただ人であるがゆえの苦悶……生身の人間を余さず文章を以て捉えるには、残酷なまでにひたむきな観察と精緻な描写が必須となる。  本作において永井路子は、平安中

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    • 「本、とりわけ歴史小説の未来について」 火坂雅志・伊東潤著『北条五代 上・下』刊行エッセイで伊東潤氏がその想いを熱く綴る!

       本が売れなくなったと言われて久しいが、1996~97年をピークにして、紙の本の売り上げは減り続けている。2020年頃のコロナ禍の巣ごもり需要でいったん下げ止まったものの、微減状態は続いている。とくに情報性や緊急性の低い文芸本の需要は、依然として下げ止まっていない。  考えてみれば、周囲を取り巻くすべてが便利になった社会で、文字を読むという行為だけは文字ができた氷河期から変わらず、電子書籍が登場しても、その手間が改善されたわけではない。  最近はAudibleと呼ばれる、

      「本、とりわけ歴史小説の未来について」 火坂雅志・伊東潤著『北条五代 上・下』刊行エッセイで伊東潤氏がその想いを熱く綴る!

    • 「誰かひとりが思索を深めるだけで、ここまでインパクトのある仕事ができるのか」社会学者の橋爪大三郎さんが「勇気をもらった」と激賞する、東浩紀さん話題の新書『訂正する力』書評公開

      訂正する力、訂正できない人びと 『訂正可能性の哲学』(ゲンロン)を2023年8月に出版したばかりの東浩紀氏の、語り下ろしだ。聞き手は辻田真佐憲氏、構成も手がけている。できた原稿にもう一度東氏がすっかり手を入れたのが、本書『訂正する力』である。二人のコンビが絶妙で、なめらかプリンのような仕上がりだ。のど越しがよく、しっかり栄養もとれる。これまでの東氏の手強い文章と違い、すらすら読みやすい。  なぜいま「訂正可能性」なのか。混乱する世界を導くこの概念の誕生の秘密を、本書は丁寧

      「誰かひとりが思索を深めるだけで、ここまでインパクトのある仕事ができるのか」社会学者の橋爪大三郎さんが「勇気をもらった」と激賞する、東浩紀さん話題の新書『訂正する力』書評公開

      新宿、ガラケー、円高――李琴峰「日本語からの祝福、日本語への祝福」第18回

      第18回 新宿、ガラケー、円高    日本に着いて最初の数日間は、手続き事に追われていた。  私が住んでいたのは早稲田の留学生寮である。住所で言えば天下の新宿区だ。日本に到着した翌日(四月一日金曜日)、早速新宿区役所へ出向いた。区役所が東洋一の繁華街である歌舞伎町に位置しているのは驚きだった。  震災直後なので区役所は空いているだろうと高を括っていたが、意外とそれなりに人がいた。私以外の外国人もたくさんいて、日本語が不自由な人も多かった。区役所に入るなり一人の来庁者に

      新宿、ガラケー、円高――李琴峰「日本語からの祝福、日本語への祝福」第18回

    • 「久米宏は罪深い」の真意とは? 久米氏初の自叙伝『久米宏です。ニュースステーションはザ・ベストテンだった』をライター・テレビっ子の戸部田誠(てれびのスキマ)さんがレビュー!

       久米宏は罪深い――。  そう僕は思っていた。なぜならテレビのニュースを「わかりやすいもの」に変えてしまったからだ。それまでニュース番組は視聴率競争とは無縁のものだった。そもそも数字が獲れる発想はなかったのだ。そんな中、1985年に始まった久米宏がキャスターを務める『ニュースステーション』は、その「面白さ」で高視聴率を獲得。他のニュース番組も視聴率獲得を目指すようになった。  本作は、「『土曜ワイドラジオTOKYO』『料理天国』『ぴったしカン・カン』『ザ・ベストテン』『お

      「久米宏は罪深い」の真意とは? 久米氏初の自叙伝『久米宏です。ニュースステーションはザ・ベストテンだった』をライター・テレビっ子の戸部田誠(てれびのスキマ)さんがレビュー!

    • 【今年も開催!朝日文庫の秋の時代小説フェア】ラインナップを一挙公開!

      ■朝井まかて『グッドバイ』  長崎の油商・大浦屋の女あるじ、お希以──のちの大浦慶。黒船来航騒ぎで世情が揺れる中、無鉄砲にも異国との茶葉交易に乗り出し、一度は巨富を築くが、その先に大きな陥穽が待ち受けていた──。実在の商人・大浦慶の生涯を円熟の名手が描いた、傑作歴史小説。 ■伊東潤『江戸を造った男』  明暦の大火の折に材木占買で財を成した商人・七兵衛(河村瑞賢)は、海運航路整備・治水・潅漑・鉱山採掘などの幕府事業を手がけ、その知恵と胆力で難題を解決していく。新井白石をし

      【今年も開催!朝日文庫の秋の時代小説フェア】ラインナップを一挙公開!

    • 「『悪逆』は面白い。文句なしに面白い。絶対のお薦めだ」文芸評論家・池上冬樹さんが太鼓判を押す、本年度最注目のクライム・サスペンス!【黒川博行著『悪逆』書評】

      カタルシス vs.ピカレスクの魅力  黒川博行の小説は読みとばせない。軽妙ですいすい読めるのに、台詞の一つひとつに味があり、笑いがあり、キャラクター描写の冴えがある。相変わらず語りの巧さは天下一品で、大胆で不埒なストーリー、賑々しいキャラクターの妙、リズミカルで生き生きとした会話が素晴らしく、笑いながら頁を繰っていく。退屈に思えるところなど微塵もない。さすがは「浪速の読物キング」(伊集院静)だ。  物語はまず、殺し屋が広告代理店元社長大迫を殺す場面から始まる。綿密に計画を

      「『悪逆』は面白い。文句なしに面白い。絶対のお薦めだ」文芸評論家・池上冬樹さんが太鼓判を押す、本年度最注目のクライム・サスペンス!【黒川博行著『悪逆』書評】

    • ※終了※【24時間限定試し読み】ひとが、より良く生きるための力。そして、この国が、より良くなるための力とは?/東浩紀『訂正する力』第1章までを公開!

      ※24時間限定試し読みは終了しました。たくさんの方に読んでいただき、誠にありがとうございました!  株式会社ゲンロンの創業者で、批評家の東浩紀さんによる新刊『訂正する力』が、2023年10月13日(金)に朝日新書から発売します。この夏にゲンロンから刊行したデビュー30周年の集大成『訂正可能性の哲学』は発売するや忽ち重版が決まり、いくつかの書店ランキングでも1位を飾りました。本書は、そこで提示されている「訂正可能性」という考え方について、ふだん哲学に馴染みのない読者にも分かり

      ※終了※【24時間限定試し読み】ひとが、より良く生きるための力。そして、この国が、より良くなるための力とは?/東浩紀『訂正する力』第1章までを公開!

    • 呉座勇一氏が読んだ火坂雅志・伊東潤著『北条五代 上・下』/文庫解説を特別公開!

       戦国時代関東における武田・上杉・北条の三つ巴の戦いは、俗に「戦国関東三国志」などと呼ばれる。だが、川中島の戦いで知られる武田信玄・上杉謙信のライバル関係に比して、北条氏(鎌倉時代の北条氏と区別するため、学界では後北条氏・小田原北条氏と呼ぶことが多い)の存在感は必ずしも大きくない。北条氏を主人公としたNHK大河ドラマはいまだに制作されていない。  戦国時代屈指の有力大名でありながら、北条氏はいささか地味な存在である。けれども親子兄弟骨肉の争いで弱体化したり、優れた後継者に恵

      呉座勇一氏が読んだ火坂雅志・伊東潤著『北条五代 上・下』/文庫解説を特別公開!