web TRIPPER
季刊文芸誌「小説トリッパー」(3、6、9、12月発売)のweb版です。連載(小説やエッセイ)のほかに、朝日新聞出版発行の文芸ジャンルの単行本や文庫に関する書評やインタビュー、試し読みなども掲載していく予定です。本と出会えるサイトになればと思っています。
最近の記事
- 固定された記事
小説にはりめぐらされた、ドイツと日本の歴史、名作の読み直しを鮮やかに読み解く/多和田葉子さん著『白鶴亮翅』 早稲田大学文学学術院准教授・岩川ありささんによる書評を公開!
隣人小説そして魔女小説 多和田葉子の最新作『白鶴亮翅』は、「朝日新聞」(2022年年2月1日から8月14日)に連載された、初の新聞小説である。私はこの小説を隣人小説として読んだ。 ベルリンのある地区に引っ越してきたばかりの翻訳者・美砂は、コーヒーを飲もうとするが、煎れるための道具がどのダンボール箱にあるのかわからない。気分転換に散歩でもしようと出た裏庭でめぐりあったのが隣に住むMさんだ。勘が鋭く、優しいMさんとの、コーヒーをめぐる不思議な意思疎通がきっかけで、その日、
マガジン
マガジンをすべて見る すべて見る記事
記事をすべて見る すべて見る【試し読み】書店員さんから大反響! 精神疾患を抱えた妻の介護と仕事…約20年にわたる苦悩の日々を綴った傑作ルポ『妻はサバイバー』
あとがき「奥さんの闘病について、連載記事を書いてみませんか」。かつて貧困問題をともに取材した同僚の清川卓史記者(社会保障担当編集委員)から、2017年にそんな提案を受けたことが、この本の発端でした。 そのとき、「やる意味はあるが、実現可能性は極めて低い」というのが率直な思いでした。 患者や家族から見た医療や福祉のあり方、精神障害への偏見。そうした問題について自分の体験を通して提起することは記者として取り組む意味を感じました。しかし、そのためには、妻にとって思い出したくない
「水曜どうでしょう」D・藤村忠寿さんが、自身の新刊ではなく「日本のサッカー」について熱く語る/『人の波に乗らない』刊行記念エッセイ
王道でないからこそ サッカーについて語ります。でも私はサッカー経験がありません。現在57歳。北海道テレビに勤務するサラリーマンです。「ローカル局制作のバラエティー番組としては異例のヒットを飛ばし、大泉洋を生み出した」と言われている『水曜どうでしょう』という番組のディレクターを務めてきました。あくまでも「異例」と称されているわけで、それは世間的には「王道ではない」ということです。では始めましょう。 まずはサッカーのルールについて。「ゴールキーパー以外は基本、手を使っては