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朝日新聞出版の文芸書

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書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。
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記事一覧

精神的な支配を受ける苦しみと周囲に理解されない辛さを描いた、櫻木みわ著『カサンドラのティータイム』/瀧井朝世さんによる、著者インタビューを特別公開

 2018年に作品集『うつくしい繭』で小説家デビューした櫻木みわさんの第3作『カサンドラのティータイム』(朝日新聞出版 1760円・税込み)は、2人の女性が主人公だ。  東京でスタイリストのアシスタントとして働く友梨奈と、琵琶湖湖畔で夫と暮らす未知。異なる場所で生きる彼女たちの人生が、やがて思わぬところで交錯する。 「以前、身近な人の言動で苦しんだことがあったんです。渦中にいる時は、自分の状況がよく理解できなかった。後に人と話したり本を読んだりするうち、少しずつ分かってく

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「まるで、長い光の中をお慶と共に歩いたような心地」――6年ごしの作品に遂に「グッドバイ」朝井まかてさんの随筆を特別公開

 一編の小説を書いて世に出して、それからも作品とのつきあいは続く。  作家によって事情は違うけれど、私の場合は文芸誌や新聞に連載してから単行本になり、そして数年後に文庫化される。むろんその間に他の作品に取り組んでいるので間断するのだが、ざっと6、7七年もの間、主人公と登場人物たち、その時代、その土地との縁が続く。  たとえば、この10月に文庫が刊行された『グッドバイ』は連載前の取材から算えればやはり足掛け6年のつきあいになった。私は数字にことのほか弱いので、担当の編集者に「

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大河ドラマ「鎌倉殿の13人」「どうする家康」「光る君へ」の女性キャラを網羅したゴージャスな歴史エッセイ『歴史をさわがせた女たち』の細谷正充氏による文庫解説を特別公開!

 今年(2022年)のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は、源平合戦から鎌倉幕府の成立、そして幕府内の闘争を描いている。三谷幸喜の脚本は秀逸であり、鎌倉幕府の複雑な人間関係を分かりやすく見せながら、北条義時を始めとする人々の魅力を表現。大きな人気を獲得した。ドラマによって、この時代の面白さを知り、歴史書や歴史小説を購入した人も多いだろう。私も毎年、ドラマと関係ある本を積み上げてしまう。そして気づくのだ、また、永井路子の『歴史をさわがせた女たち 日本篇』が、積み上げた本の中に入

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明日も生きていくために、この物語が必要な人がどこかにいる…新川帆立さんによる書評『カサンドラのティータイム』(櫻木みわ著)

『カサンドラのティータイム』は 11月11日(金)まで期間限定で全文公開中 届かぬ声が届くとき  イソップ寓話「嘘をつく子供」をご存じだろうか。「オオカミが来た!」と嘘をつき続けた結果、本当にオオカミが来たときも信じてもらえず、オオカミに襲われてしまう。いわゆる「オオカミ少年」の話である。常日頃から嘘をついていると、もしものときに誰も信用してくれない。だから嘘をつくのはよくない、という寓意を含んでいる。  だがもし、少年の村にSNSがあったらどうだろう。何百万人という人

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「この物語を必要としていた」「心底励まされた」感動の声続々!櫻木みわ著『カサンドラのティータイム』への書店員さんの感想を一挙公開

「小説トリッパー」2022年夏号に一挙掲載した直後より、この物語を必要としていた、読み終わって心底励まされたとの声が広がる櫻木みわさんの『カサンドラのティータイム』。2022年11月7日(月)の発売にあわせて期間限定で全文公開をいたします。それに先立ち発売前より続々と届いている全国の書店員のみなさまからの感想を紹介させていただきす。 期間限定全文公開はこちらから

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大人が読んで面白い『ガリバー旅行記』。柴田元幸さんのみごとな翻訳が生み出した魅力を、英文学者・阿部公彦さんが読み込む

■奇妙なガリバーが生み出すむずむずする魅力 『ガリバー旅行記』という書名をはじめて聞くという人はあまりいないだろう。しかし、「内容は?」と訊かれると言葉に詰まるかもしれない。漱石の『坊っちゃん』などとならび、この本は「子供の頃に読んだきり、手に取っていない本」ランキングでいつも上位にくる。出会いが早すぎて、損をしてきた。  あらためて強調したい。『ガリバー旅行記』は子供が読んでもおもしろいが、大人が読んだらもっとおもしろい。しかも、変におもしろいのだ。  この変さを生み

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【試し読み】櫻木みわさんの最新作『カサンドラのティータイム』/「この物語を必要としていた」「心底励まされた」雑誌掲載時から共感の声が広がる話題作

カサンドラのティータイム 1 友梨奈  照明がまぶしかった。アナベルの花が雪のようにかがやいていた。北アメリカ原産の、アジサイ科の花だった。大きな霧吹きを持った美術係のスタッフが、花と葉に、水をたっぷり吹きかけている。照明の熱から守るための処置だった。花のあまい香りが濃くなった気がしたが、気のせいだったかもしれない。  戸部友梨奈は、カメラ機材の邪魔にならないよう後方のうすぐらい壁際に立ち、照明とカメラが向けられた先を一心にみつめていた。テレビ局の第一報道スタジオ。ニュー

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思わず「そうくるか!」と叫んだ一冊・河崎秋子著『介護者D』は、親とのしんどい関係を変える介護物語だ。トミヤマユキコさんによる書評を特別公開

思わず「そうくるか!」と叫んだ一冊  東京で派遣社員をやっている琴美は、父親を介護するため30歳にして北海道の実家に戻った。母親は5年前に交通事故で亡くなっており、妹はアメリカにいるので、介護要員にカウントするのは難しい。東京での琴美は、大きな仕事を任されていたわけでも、生涯を共にするパートナーがいたわけでもなかった。しかし、だからって、喜んで実家に戻れたわけではない。なぜなら、大事な「推し」がいるから……。  琴美は、アイドルグループ「アルティメットパレット」のメンバー

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「こんな女の人がいたのか!」幕末の女商人・大浦慶の生涯を描いた、朝井まかて『グッドバイ』/文芸評論家・斎藤美奈子さんの文庫解説を特別公開!

「こんな女の人がいたのか!」と思わせる、胸のすくような一冊――幕末の女商人・大浦慶伝  図ったわけではないと思いますが、2010年代ころから、歴史に埋もれた有名無名の女性たちの業績を発掘し、再評価する動きが世界中で起きています。  日本でも翻訳書が出ているレイチェル・イグノトフスキー『世界を変えた50人の女性科学者たち』(野中モモ訳)ほか「50人の女性」シリーズ(創元社)や、ケイト・バンクハースト『すてきで偉大な女性たちが世界を変えた』(田元明日菜訳)ほか「すてきで偉大な女

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葉室麟さん最後の長編歴史小説『星と龍』が待望の文庫化! 東京大学史料編纂所・本郷和人教授による文庫版解説を特別公開

 戦前、楠木正成と後醍醐天皇は、日本史で五指に入るヒーローであった。とくに楠木正成は水戸学がその生涯を賞揚したから、水戸学に強い影響を受けた幕末の志士、明治の元勲たちは「われ楠木正成たらん」と願った。実証的な研究が不足していた時代であるからかえって、1人1人が「おれの楠木正成」像を作り上げ、行動の指針としたのである。  それでも明治初年には、議論があり得た。福沢諭吉は『学問のすゝめ』で一身独立して一国独立す、国民1人1人が学問して覚醒し、それを基礎として国家が自立することこ

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「虐待の連鎖ではなく、苦しみへの共感」女優・作家の中江有里さんによる丸山正樹著『キッズ・アー・オールライト』書評を特別公開!

ヤングケアラーたちの心の叫び  大人は子を守るもの──その前提に立てば虐待される子やヤングケアラーは存在しないはず。  しかし近年は子供の人権を損なう事例が多く、社会問題となっている。世の中は性善説では成り立たない。  本書には様々な問題を抱えた子供の事情が描かれるが、その子供を庇護する大人、逆に追い詰める大人たちの物語でもある。  子を庇護する側の河原はNPO法人「子供の家」の代表。子供を守るためには子供たちの声なき声を聞き取っていくしかない。ある日ネットに書き込ま

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【今年も開催!朝日文庫の秋の時代小説フェア】ラインナップを一挙公開!

<新刊>■朝井まかて『グッドバイ』  長崎の油商・大浦屋の女あるじ、お希以──のちの大浦慶。黒船来航騒ぎで世情が揺れる中、無鉄砲にも異国との茶葉交易に乗り出し、一度は巨富を築くが、その先に大きな陥穽が待ち受けていた──。実在の商人・大浦慶の生涯を円熟の名手が描いた、傑作歴史小説。 ■葉室麟『星と龍』  悪党と呼ばれる一族に生まれた楠木正成の信条は正義。近隣の諸将を討伐した正成は後醍醐天皇の信頼を得ていくが、自ら理想とする世の中と現実との隔たりに困惑し……。著者最後となっ

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誰も知らなかった“本物の関ヶ原”! 伊東潤が徹底的に研究本を読み込み描いた『天下大乱』の圧倒的なリアリティ <著者ロングインタビュー>

■『天下大乱』発刊記念ロングインタビュー ――関ヶ原の戦いは、これまでも多くの作家が取り上げてきましたが、まさに本作では、「書き換えられた」と言ってもよいくらい斬新な物語となっていました。 伊東潤(以下、伊東):本作では、これまでとは全く違った関ヶ原の物語を楽しんでいただけると思います。ここ10年ほどで、関ヶ原の戦いについての研究は急速な深化を遂げました。政治的駆け引きや合戦の様相など、従前のものとは全く違ったものになったと言っても過言ではありません。そうした研究成果を小

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書店員さんから続々感想が!小川哲『君のクイズ』ついに発売

■『君のクイズ』書店員さん感想集 クイズ番組を見るのが好きだ。クイズは知っている、知らない世界で、そしてそれは時とともに正解が更新されていく。クイズは客観的な外側の世界だと思っていた。この作品を読んでむしろ人生を含む内側の世界じゃないのかと思えた。クイズを見る目が180度変わった。驚くべきミステリーの謎の真実となるほどと、心から感心させられる解釈。こんなことが存在するなんて。 やられた!面白すぎる。 (ジュンク堂書店滋賀草津店 山中真理さん) 『君のクイズ』、とても面白く

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