記事一覧
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/146951365/rectangle_large_type_2_b6ba2612e4701daed71c656d2d86908e.png?width=800)
「仏教文学の新しいジャンルを切り拓いてきたと言ってもいい」伊藤比呂美さん話題の単行本がついに文庫化!/『いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経』曹洞宗僧侶・藤田一照さんによる文庫解説を公開
伊藤比呂美さんは、「ひろみ」と呼ばれると快感を感じると言う。だから、僕は彼女のことをいつも「比呂美さん」と呼ぶことにしている。僕と比呂美さんは二〇一四年八月一日の夜、名古屋市内のとある居酒屋で初めて顔を合わせた。僕が一九五四年生まれ、彼女が一九五五年生まれだから、その年、僕は還暦を迎え、彼女は還暦一年前というタイミングだったことになる。お互いいい歳になってからの邂逅だ。もっとも僕の方は、東京大学の駒場の学生だった頃から彼女の存在を知っていた。身体や性、セックスをテーマに過激
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/146158389/rectangle_large_type_2_12b01972f3a9051a2769556b7a2a4b6a.png?width=800)
【特別試し読み】鴻巣友季子さん集中連載「小説、この小さきもの~孤独、共感、個人~」第1部から「はじめに」と第2章冒頭公開!/なぜ人は小説に共感を求めようとするのか? 小説が書かれる・読まれる歴史の背景を遡りながら、その起源と本質に迫る本格評論
小説、この小さきもの ~孤独、共感、個人~ 鴻巣友季子第一部 小説、感情、孤独 はじめに 小説とはなにか? などという問いはあまりにプリミティヴに響くだろう。 西洋の物語の起源には詩があった。文学とは長らくおもに韻文の詩を意味していた。しかしどうだろう、いまの世界を見わたしてみると、西洋で生まれた散文文芸である小説が文学の中心であるかのごとく扱われている国や文化圏は多く、日本もそのひとつだ。 どうして小説はときに「涙が止まらない」「切なさ一〇〇パーセント」「共感しか
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/144582061/rectangle_large_type_2_1e00aab865d66a468f773f35ace13d74.png?width=800)
私たちの「きちんとしたい」を救う物語/せやま南天著『クリームイエローの海と春キャベツのある家』小説家・大原鉄平さんによる書評を公開!
私たちの「きちんとしたい」を救う物語 私は広い古民家をリノベして一家で住み、デザインした部屋の写真をSNSで発信している。それらの綺麗に撮られた写真ではさぞ私たちが優雅に暮らしているかのように見えるだろうが、実際は優雅どころではなく、床に脱ぎ捨てられた誰かの服の下に隠れた、意図的に仕掛けられた罠としか思えない尖ったレゴを踏み抜いて悲鳴を上げる日々である。 特に古民家は部屋数が多い上に私以外の人間は片付けるということをしないため、週末ごとの掃除は私の役目となっている。家
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/143904219/rectangle_large_type_2_ee5b18522b24cdf2bba99249546e2a94.png?width=800)
永井路子さんが描いた藤原道長と能信が「望みしもの」とは? 朝日文庫『望みしは何ぞ』刊行記念! 文芸評論家・細谷正充さんが読み解く『この世をば』『望みしは何ぞ』
道長のイメージを一変させた歴史的名著 今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の主役は紫式部である。そのため紫式部や、その周囲の人々に、あらためて注目が集まっている。ドラマで紫式部のソウルメイトになる藤原道長も、そのひとりだ。そして道長の描き方も、昔と比べるとずいぶん変わったものだと、感慨深いものがあった。 そもそも道長のイメージは、非常に悪かった。彼が、娘三人を天皇の后とし、三人の天皇の外祖父となったことは、周知の事実であろう。このため娘を政治の駒として使い、天皇家に強い
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/143170225/rectangle_large_type_2_6953abd4f5f93919904f0bb737077a55.png?width=800)
「不思議な、体験だった。」川上弘美さんが12年の時を経て描いた、『七夜物語』の次の世代を生きる子どもたち/『明日、晴れますように 続七夜物語』刊行記念エッセイ
未来から今へ このたび上梓することになった『明日、晴れますように』は、今から十二年前、二〇一二年に出版された『七夜物語』の、続篇である。 『七夜物語』は、二人の小学生が七つの不思議な夜を冒険する、というファンタジーだった。二人は名前を鳴海さよ、仄田鷹彦といい、多少内向的な、けれど冒険に際してはじゅうぶんに勇敢な子どもたちだった。一生に一度は子どもが主人公のファンタジーを書いてみたいと思って始めた連載中、わたしは主人公二人が大好きでしかたなく、小説を書いている時にどちらかと
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/143019278/rectangle_large_type_2_48ffabc3763a31fd418a669067b531eb.png?width=800)
夏季号は創作が1本に、新連載2本スタート! 新刊をめぐる評論と対談も。〈「小説TRIPPER」2024年夏季号ラインナップ紹介〉
◆創作高山羽根子 「パンダ・パシフィカ」 春先になると花粉症で鼻が利かなくなるモトコは、副業で働くアルバイト先の同僚・村崎さんから自宅で飼う小動物たちの世話を頼まれる。2008年、上野動物園ではパンダのリンリンが亡くなり、中国では大地震と加工食品への毒物混入事件が起きる。命を預かることと奪うこと。この圧倒的な非対称は、私たちの意識に何を残すのか? テロルの時代に抗う、小さく、ささやかな営為を描く問題作、一挙掲載285枚。 ◆新連載武内涼 「歌川 二人の絵師」 東海道