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季刊文芸誌「小説トリッパー」(3、6、9、12月発売)のweb版です。連載(小説やエッ…

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季刊文芸誌「小説トリッパー」(3、6、9、12月発売)のweb版です。連載(小説やエッセイ)のほかに、朝日新聞出版発行の文芸ジャンルの単行本や文庫に関する書評やインタビュー、試し読みなども掲載していく予定です。本と出会えるサイトになればと思っています。

マガジン

  • 北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』

    平成を大法する大ベストセラー作家・佐伯泰英。その膨大な著作をすべて読破してレポート。読者をひきつけてやまない魅力を全力で伝えます!

  • 麻見和史『殺意の輪郭 猟奇殺人捜査ファイル』

    都内で連続猟奇殺人事件発生! 警察小説の旗手・麻見和史さんによる、新シリーズ始動。

  • 朝日新聞出版の文芸書

    • 198本

    書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。

  • 年森瑛:連載エッセイ「バッド入っても腹は減る」

    パスタを茹でながら、キャベツを煮込みながら、一冊の本をじっくり読む――。いちばん読書がはかどるのはキッチンだ。いま再注目の新人作家による、おいしい読書日記連載スタート。毎月15日更新予定。

  • 川添愛:連載エッセイ「パンチラインの言語学」

    文学、映画、アニメ、漫画……でひときわ印象に残る「名台詞=パンチライン」。この台詞が心に引っかかる背景には、言語学的な理由があるのかもしれない。ひとつの台詞を引用し、そこに隠れた言語学的魅力を、気鋭の言語学者・川添愛氏が解説する連載がスタート! 毎月10日に配信予定。

北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』

平成を大法する大ベストセラー作家・佐伯泰英。その膨大な著作をすべて読破してレポート。読者をひきつけてやまない魅力を全力で伝えます!

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  • 3本

北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第3回

第1峰『密命』其の弐 大筋、中筋、個別事件の3本柱で巻を重ねる  ここで佐伯作品の読みやすさについて考えてみたい。私は困ってしまったのだ。1冊読み終えるとすぐに次の巻を手にして読み始めてしまうのである。冗談のつもりで、「寝ても覚めても佐伯漬け」と言っていたのに、その通りになってしまった。佐伯本、予想以上に中毒性がある。  第3巻を読み終えたところで、どうやらそういうことかと気がついたので報告しよう。〝やめられない止まらない”の秘密は各巻の巧みな構成にあると思うのだ。

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北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第2回

第1峰『密命』 すべてはここから始まった! 崖っぷちから放たれた、衝撃の時代小説デビュー作  1999年1月、書店の文庫本コーナーに1冊の時代小説が姿を現した。『密命 見参! 寒月霞斬り』という勇ましい題名がつけられていたが、覚えのある読者はいなかった。なぜなら、雑誌掲載もされず、単行本として出版されることもない〝文庫書き下ろし作品”だったからである。  だが、売れた。大宣伝をされたわけでもないこの作品を、おもしろい時代小説が読みたいと書店へやってくる読者たちは見

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北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第1回

はじめに(佐伯泰英山脈をこれから登る人たちへ)  佐伯泰英。平成時代を代表するベストセラー作家のひとりであり、賞レースに縁のない無冠の帝王であり、遅咲きの〝オヤジの星”であり、〝書き下ろし時代小説文庫”を定着させて出版のありようまで変えた男。本好きの誰もが名前くらいは知っているエンタメ小説界の巨人だ。  新刊が出れば必ずと言っていいほど書店の売れ筋ランキング上位に入る売れっ子作家。しかも、それが現在までずっと続いている。代表作の『居眠り磐音 江戸双紙シリーズ』はいった

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麻見和史『殺意の輪郭 猟奇殺人捜査ファイル』

都内で連続猟奇殺人事件発生! 警察小説の旗手・麻見和史さんによる、新シリーズ始動。

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  • 24本

麻見和史『殺意の輪郭 猟奇殺人捜査ファイル』第24回

4  この建物のどこかに負傷者がいる可能性があった。  いったいその人物の怪我はどれほどのものなのか。通路に落ちた血からは、傷の程度は想像できない。怪我をした部位によって重傷度も変わってくるだろう。もし頭部からの出血であれば、かなり深刻なものになっているかもしれない。  ──いや、もしかして負傷者はもう……。  嫌なことが頭に浮かんだ。尾崎は首を左右に振って、その考えを追い払う。  今はあれこれ想像していても仕方がない。それによって萎縮してしまい、的確な行動がとれな

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麻見和史『殺意の輪郭 猟奇殺人捜査ファイル』第23回

 広瀬はうなずきながらメモを見ている。彼女にも状況の整理ができたらしい。  メモの一部を指差しながら、尾崎は言った。 「②と③と⑤と⑥の写真は多いから、手島の目的はこれらを撮影することだったと考えられる。しかし現在、一連の事件現場となっているのは①と④と⑦だ。どうしてこうなったかという疑問が生じるわけだが……」 「事件で廃屋が使われた理由は、想像がつきますよね」藪内が言った。「死体遺棄をするには、廃屋のほうが便利だからでしょう」 「藪ちゃんの言うとおりだ」尾崎はうなず

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麻見和史『殺意の輪郭 猟奇殺人捜査ファイル』第22回

 朝の捜査会議が終わると、刑事たちは次々と捜査に出かけていった。  尾崎と広瀬も深川署を出た。いくつか気になることはあるが、今は北野康則を見つけ出すのが先決だ。広瀬は彼と何度も会っているから、関係のありそうな場所で聞き込みをすれば何かわかるかもしれない。期待を込めて、情報収集を開始した。  しばらく空振りが続いたが、一時間ほど経ったころ高田馬場で当たりが出た。 「ああ、この写真の人、東川さんですよね?」  新陽エージェンシーの近くにあるカフェバーで、マスターがそう言っ

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麻見和史『殺意の輪郭 猟奇殺人捜査ファイル』第21回

 午後十一時四十五分。尾崎はマンションの敷地内にいた。  ごみ収集箱の陰に隠れて、静かに前方を見つめている。この時刻、敷地内を歩く者はひとりもいない。たまに表の通りを車が走っていくが、このマンションに入ってくる車両は一台もなかった。  敷地内にはぽつりぽつりと街灯が灯っている。青白い光が辺りを照らしていたが、充分な明るさとは言えなかった。あちこちに暗がりがあるから、尾崎がこうして隠れていても容易にはわからないだろう。  前方三十メートルほどの場所に、地域の集会所が見える

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朝日新聞出版の文芸書

書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。

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  • 198本

「読んで書く生活、または火曜日の地獄」 斎藤美奈子さん『あなたの代わりに読みました 政治から文学まで、意識高めの150冊』刊行記念エッセイを特別公開!

 子どものころ、私は読書感想文がわりと得意だった。相手のニーズ(教師が何を求めているか)が子どもながらにわかったからだ。なので心にもないことを書くのも平気だった。  だが後に、読書感想文というものを客観的に分析する機会を持って、私のような賢しらな子どものインチキ作文には何の価値もないことがわかった。読書感想文とは、本についてではなく「本を読んだ私」について書くもので、いわば1種の体験記だからである。  今年で70回目を迎える「青少年読書感想文全国コンクール」(主催/全国学

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共感必須!松井玲奈さんが好きなことも苦手なこともすべて詰め込んだエッセイ集『私だけの水槽』の一編を特別公開

クリストファー・ロビンに従って  地方での撮影を終えてようやく自宅に戻ってきた。猫たちは飼い主が帰ってきてもまったりくつろいで我関せずで、荷物を下ろすと緊張の糸が切れ詰め込んでいたセリフたちが頭から耳へと流れ、外にドロドロと溶け出していった。数日間の撮影の中、朝から晩までみっちり毎日十何ページも撮影しセリフを喋り、もうしばらくセリフなんて覚えたくない! 台本なんて開いてたまるか! 頭を休めさせてくれ!と荒んだ気持ちだった。初めてのチームの中に飛び込んでいった緊張感もあり、疲

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全国主要書店で開催中! 朝日文庫「グランドフェア2024」ラインナップを紹介します

朝井リョウ『スター』 新人の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞した尚吾と紘。二人は大学卒業後、名監督への弟子入りとYouTubeでの発信という真逆の道を選ぶ。受賞歴、再生回数、完成度、受け手の反応──プロとアマチュアの境界線なき今、世界を測る物差しを探る傑作長編。 伊坂幸太郎『ガソリン生活』 聡明な弟・亨とのんきな兄・良男のでこぼこ兄弟がドライブ中に乗せたある女優が、翌日急死! 一家はさらなる謎に巻き込まれ…!? 車同士が楽しくおしゃべりする唯一無二の世界で繰り広げら

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安部龍太郎著『生きて候』/文芸評論家・高橋敏夫氏による文庫解説を公開!

 安部龍太郎の物語世界には、なにかとてつもなく不穏なものが見え隠れする。  血なまぐさい臭いをはこぶ不穏な風がふいている。  物語世界に、ときおり亀裂がはしり、その裂け目から、まがまがしく、むごたらしい、ゆがんだイメージと雑音とが、とめどなくあふれだす……。凄惨な合戦場面や、互いに深傷を負いながらなおつづく剣戟シーンだけではない。甘美な恋愛のさなかにも、このうえもない栄誉をえた喜びの頂点においても、また、かがやかしい前途に胸をふくらませるときにも。  その瞬間、極上のエンター

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年森瑛:連載エッセイ「バッド入っても腹は減る」

パスタを茹でながら、キャベツを煮込みながら、一冊の本をじっくり読む――。いちばん読書がはかどるのはキッチンだ。いま再注目の新人作家による、おいしい読書日記連載スタート。毎月15日更新予定。

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  • 5本

年森瑛「バッド入っても腹は減る」第5回

 年度末の記憶がない。  ただでさえ職場の繁忙期だというのに確定申告も重なり、さらに医療費を稼ぐため短編の依頼まで引き受けてしまったため、ここ数ヶ月は土日返上で働き詰めだった。同じく兼業作家で年中激務のサハラさんと毎週末に通話していなければとっくにメンタルは崩壊していただろう。「自分へのご褒美で金曜夜にナゲットを山盛り買って家で食べようとしたらソースがついていなくて、だけど取りに帰る気力もないから結局ケチャップで食べたんですよ」というような、週明けにわざわざ同僚たちに語るほど

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年森瑛「バッド入っても腹は減る」第4回

 トマトなんてなんぼあってもいいですからね、というイマジナリー土井善晴のささやきに身を任せて1個15円叩き売りトマトを大量購入した。さっそく生で食べてみるとほとんど味がしないうえ舌触りもざらついていて、どれもこれもトマトからトマトみを抜いたナニカって感じでそこそこ落ち込む。こうなったら煮込んでスープにするしかない。  トマトを崩さず切るために、まず包丁の角でヘタをくりぬいてからひっくり返し、中央から放射状に伸びている白い*マークの線と線のあいだに刃を入れる。これでまな板がトマ

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年森瑛「バッド入っても腹は減る」第3回

 かなり長いこと、背中から腰にかけての強烈な痛みと付き合っている。特にひどいのは椅子に座っているときで、雷が落ちたような痛みが脊椎に走る。鎮痛薬を飲んでいてもまあまあ痛いので家ではほぼ寝たきりだ。  病院は5軒回った。どの医者も初診は自信たっぷりに告げる。「レントゲンでは特に異常はないですから、すぐ治まりますよ」それから1ヶ月後には決まってこう言う。「うーん、MRIでも異常がないんだよねえ。薬を変えてみようか。運動はちゃんとしてるの。姿勢良く座ってる?」さらに1ヶ月後。「スト

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年森瑛「バッド入っても腹は減る」第2回

 実家からみかんを大量にもらった。連日食べているのでなんとなく手のひらが黄色くなっている気がする。早く消費せねばと先日はパウンドケーキにしてみたが、使用した砂糖とバターの量がえげつなく、数日かけて食べていたら当然お太りあそばした。今後しばらくヘルシーにいきたい。ヘルシーヘルシー。冷蔵庫オープン。本日消費期限の合い挽き肉を発見。その下敷きになった、同じく期限スレスレの餃子の皮50枚入りも発見。  ……みかん餃子。いけるか。酢豚のパイナップル的なものと考えればいけるのでは。仁王立

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川添愛:連載エッセイ「パンチラインの言語学」

文学、映画、アニメ、漫画……でひときわ印象に残る「名台詞=パンチライン」。この台詞が心に引っかかる背景には、言語学的な理由があるのかもしれない。ひとつの台詞を引用し、そこに隠れた言語学的魅力を、気鋭の言語学者・川添愛氏が解説する連載がスタート! 毎月10日に配信予定。

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  • 5本

「あの鳥のこと、好きだったのかい?」(『機動戦士ガンダム』)――川添愛「パンチラインの言語学」第5回

 今回はアニメ『機動戦士ガンダム』を取り上げる。なぜだ。坊やだからさ……ではなくて、前回の連載でなにげなく「お子様ゆえのあやまち」というフレーズを書いたのが直接の理由だ。私の頭の中にあったのは、本作のメインキャラの一人「赤い彗星のシャア」のセリフ、「認めたくないものだな、自分自身の若さゆえのあやまちというものを」なのだが、よく考えたらシャアがこれをどんな場面で言ったのかを完全に忘れていた。それで確認すべく第1話から見始めたら、頭がすっかり「ガンダム脳」になってしまった。  同

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「今のあの子ではムリ」(『ガラスの仮面』)――川添愛「パンチラインの言語学」第4回

 前回の連載が公開される前、私が「南ちゃんは本当に恐ろしい子である」と書いた部分について、校閲の方から「(『ガラスの仮面』での)原文は『おそろしい子!』のようです」との参考情報をいただいた。私も当然『ガラスの仮面』を意識してそのように書いたわけだが、こんな小ネタにもかかわらず、元ネタにまで当たっていただいたことに驚いた。最終的には漢字表記の方が読みやすいと判断したため平仮名表記に直すことはしなかったが、その流れ(?)で『ガラスの仮面』を読み始めた。  まだ全巻は読めていない

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「めざせカッちゃん甲子園」(『タッチ』)――川添愛「パンチラインの言語学」第3回

 前回の原稿を提出したとき、担当Uさんから「次は『タッチ』や『キン肉マン』はどうでしょう?」という提案があった。どうやらUさんはこの連載の主なターゲットを五十代と考えているようなので、こういうチョイスになっているのだろう。とりあえず今回は『タッチ』を取り上げることにする。  この作品を知らない、あるいは読んだことがない読者がいる可能性を考慮して、簡単に紹介しておく。本作にはメインキャラクターとして、上杉達也、上杉和也という双子の兄弟と、彼らの隣家に住む幼なじみで快活な少女、

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「とびきり甘い人生」(『チャーリーとチョコレート工場』)――川添愛「パンチラインの言語学」第2回

 今回は『チャーリーとチョコレート工場』を取り上げる。これは私が「バレンタインシーズンだから」と気を利かせたがゆえのチョイスではなく、この連載2回目にして早くもどの作品を取り上げたらいいか分からなくなり、担当Uさんのおすすめに唯々諾々と従った結果だ。飲食店で「店長のおすすめ」ばかり注文する主体性のなさが露呈した。  この映画、実は未見だった。2005年の公開当時は、『おそ松くん』のイヤミを彷彿とさせるおかっぱ頭のジョニー・デップが不気味すぎて、見る気になれなかった。実際に見

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