web TRIPPER

季刊文芸誌「小説トリッパー」(3、6、9、12月発売)のweb版です。連載(小説やエッセイ)のほかに、朝日新聞出版発行の文芸ジャンルの単行本や文庫に関する書評やインタビュー、試し読みなども掲載していく予定です。本と出会えるサイトになればと思っています。

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季刊文芸誌「小説トリッパー」(3、6、9、12月発売)のweb版です。連載(小説やエッセイ)のほかに、朝日新聞出版発行の文芸ジャンルの単行本や文庫に関する書評やインタビュー、試し読みなども掲載していく予定です。本と出会えるサイトになればと思っています。

    マガジン

    • 鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」

      鈴峯紅也さんの人気シリーズ「警視庁監察官Q」の主人公・小田垣観月の学生時代を描いたスピンオフシリーズです。11月24日より、毎週木曜日に最新回を掲載予定です。

    • 朝日新聞出版の文芸書

      • 86本

      書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。

    • 李琴峰「日本語からの祝福、日本語への祝福」

      台湾出身の芥川賞作家・李琴峰さんによる日本語への思いを綴ったエッセイです。朝日新聞出版のPR誌「一冊の本」で連載中の内容を1カ月遅れで転載します。毎月1日に最新回を公開予定です。

    • 小川哲『君のクイズ』

      • 8本

      2022年10月7日発売の小川哲さん『君のクイズ』に関する記事をまとめています。

    • 中山七里「特殊清掃人」

      中山七里さんによる連載小説です。2022年11月7日に単行本が発売になりました

    鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」

    鈴峯紅也さんの人気シリーズ「警視庁監察官Q」の主人公・小田垣観月の学生時代を描いたスピンオフシリーズです。11月24日より、毎週木曜日に最新回を掲載予定です。

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    • 10本

    鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」第10回

    十 「ああ。お陽様が気持ちいい。多分」  観月はこの日、〈四海舗〉にいた。件の中庭の、半分ずつが陽と影に染まる円卓の奥の椅子だ。  午前に来て、温かい桂花茶を貰い、少し眠った。  いや、たいがい眠っていたか。  秋晴れの、いい天気だった。午前の陽光に包まれ、風に頬を撫でられ、それで落ちた。  胸を広げ、大きく腕を広げ、背凭れに寄せ掛けていた背中が痛い。  少し固まってもいるか。そのくらいの時間は寝たようだ。  円卓の陽と影が、見事に反転していた。 〈四海舗〉

    鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」第9回

    九  この夜、観月は新人キャストとして、店で働く者たちの前で挨拶した。  オープンは午後八時で、一時間前には開店前ミーティングが始まるという。  この日、時間までに出勤してきたのは、先程の児玉店長以下の黒服が十人と、全員がまだ私服状態のキャストが七人だった。 〈銀座スリー〉のワンフロアは広く、〈蝶天〉は、銀座でもそう多くはない大箱だ。  素人の観月にもわかるほど、そんな店のオープニングを彩るには少人数に見えたが、開店十分前には、キャストが今の三倍にはなるという。

    鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」第8回

    八 〈銀座スリー〉は、銀座五丁目の並木通り沿いにあった。寿司屋のある場所からなら、約六百メートルくらいだろう。さほど遠くはない。  まず銀座四丁目の交差点を目指し、晴海通りを数寄屋橋方面に向かう。  並木通りに入り、交差するみゆき通りとの角にシャネル銀座並木の独特なビルが見えたらその手前辺りだ。 〈銀座スリー〉は、天然石にも似た光沢のある白い結晶化ガラス建材で外壁を覆い、辺り一帯にひと際の高級感を醸すビルだった。袖看板も一階エントランスの総合案内も、鏡面仕様でデザイン

    鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」第7回

    七  仏滅の金曜日になった。天気は少し下り坂のようだ。  空一面を覆う雲は厚く、ときおり吹く風が湿っていた。夜には雨になるだろう。どこかのTVチャンネルの気象予報士もそんなことを言っていた。  裕樹とは東銀座の、三原橋交差点近くで落ち合った。  この日の裕樹は、モスグリーンのポロシャツに同系のジャケットを合わせた出で立ちだった。季節らしいと言えばらしい。  観月はと言えば、グレーのカットソーに薄手の黒いジャケットと黒いジーパン、つまりいつもの格好だ。バッグも武骨に、

    朝日新聞出版の文芸書

    書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。

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    • 86本

    植物状態の母と娘にしか紡げない「親子の形」と「生きる意味」とは?作家・町田そのこによる、朝比奈秋著『植物少女』書評

    繋がりゆくもの  本作『植物少女』を読んでいる間じゅう、亡き祖母を思い出していた。  祖母は認知症とパーキンソン病を併発しており、その進行は俗に言われる“坂道を転がり落ちる”ようではなく、“落とし穴にすぽんと落ちる”ようであった。言葉を用いてのコミュニケーションはあっという間にできなくなり、次いで表情やしぐさから何かを察するということも難しくなった。祖母が病であることを受け入れられたころにはもう、ベッドの上で無表情に虚空を見つめ、奇妙に体をこわばらせていたように思う。

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    作家・高橋源一郎さんが読む「ふたりの上野千鶴子」/『上野千鶴子がもっと文学を社会学する』書評を特別公開

    おおぐま座のゼータ  おおぐま座でわかりにくければ、北斗七星といえば、わかってもらえるだろう。冬にはまだ地面近くにあるが、春に向って空高く上がってゆく。そのひしゃくの柄の端から2番目にある2等星が「おおぐま座のゼータ」、別名ミザール。およそ400年前、望遠鏡によって見つけられた最初の連星系。すなわち、肉眼では一つにしか見えないが、重力によってお互いに影響を受け合う「連星」だ。だが、真に驚くべきは、そのことではない。それから300年以上過ぎて、「連星」の片割れ「ミザールA」に

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    【辻村深月さん×加藤シゲアキさん対談全文公開!】変化する小説との向き合い方

    辻村深月(以下、辻村):文庫化された加藤さんの初のエッセイ集、『できることならスティードで』のテーマは旅です。そもそも、なぜ旅がテーマのエッセイ集を書くことになったのか伺ってもいいですか。 加藤シゲアキ(以下、加藤):最初は「小説トリッパー」から、旅というテーマのコラムでエッセイを一篇書きませんかという依頼があったんです。ちょうど一人でキューバに行こうと思っていた時期でした。一人で行くのは少し不安だったんですが、これは取材なんだ、と思うことで背中を押されるように飛行機に乗る

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    「敗者の視点で描かれた残酷な事実の先にある“勝利”」書評家・渡辺祐真さんによる、小川哲『君のクイズ』評論を特別公開!

    遊びとはなにか? ~ゲームとプレイ~  遊びとは何だろうか。  周りを見渡せば、子どものごっこ遊びから、スポーツやスマホゲーム、そしてクイズに至るまで、数えきれないほどの遊びやゲームに我々は囲まれている。有名な哲学者の言葉を持ち出すまでもなく、人間は遊ぶ生き物と言っていい。  文化人類学者のデヴィッド・グレーバーは、「ゲームとは純粋に規則に支配された行為」だと述べた。[注1]遊びやゲームには厳格なルールが定められている。将棋なら駒の動かし方や勝敗の決め方、スポーツなら使って

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    李琴峰「日本語からの祝福、日本語への祝福」

    台湾出身の芥川賞作家・李琴峰さんによる日本語への思いを綴ったエッセイです。朝日新聞出版のPR誌「一冊の本」で連載中の内容を1カ月遅れで転載します。毎月1日に最新回を公開予定です。

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    • 9本

    美しき数式――私的日本語文法論(後編)――李琴峰「日本語からの祝福、日本語への祝福」第9回

    第9回 美しき数式――私的日本語文法論(後編) 「て形」を習得したのは高校時代だった。中学を卒業した後、私は田舎を離れ、地方都市の高校に入学した。それに伴って、家を借りて一人暮らしを始めた。それは初めての都会暮らしで、四畳半程度の狭い部屋、バスもトイレも共用という快適とはとても言えない環境だったが、それでも、田舎とは全く異なる都会の華やかさと賑やかさに、私はすぐ惹きつけられた。都会は機会と選択肢に満ち溢れている。何かを習おうと思えば大抵それを教える教育施設があり、何かを買い

    美しき数式――私的日本語文法論(前編)――李琴峰「日本語からの祝福、日本語への祝福」第8回

    第8回 美しき数式――私的日本語文法論(前編)  表記(文字)、音韻(発音)、語彙(単語)――日本語を学習し始めた頃に感じていた日本語の魅力について書いてきたが、言語学習でもう一つ身につけなければならないものがある。そう、文法である。  文法とは大雑把に言えば、文を構成する際に従うべき法則のことである。例えば「私は昨日会社に行って仕事をした」という文は、「私/は/昨日/会社/に/行く/て/仕事/を/する/た」といった要素でできているが、要素さえ揃えば正しい文ができるという

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    変な日本語にご用心――李琴峰「日本語からの祝福、日本語への祝福」第7回

    第7回 変な日本語にご用心  日本語は台湾の公用語ではないが、台湾で暮らしていると、日本語の文字を目にする機会はまあまあ多い。屋台や店の看板から、商品のパッケージ、テレビCM、個人的な手紙、学生のメモや教師の板書まで、何故か仮名文字が愛用される。  手紙やメモ、板書の場合、その理由は明白で、漢字は画数が多いから、仮名文字で代用すれば手間が省けるからだ。要するに「一箇月」は面倒くさいから「一ヶ月」と書くようなものだ。  台湾人にとって一番身近な仮名文字は「の」である。「我

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    愛憎入り交じる外来語――李琴峰「日本語からの祝福、日本語への祝福」第6回

    第6回 愛憎入り交じる外来語 最新3回分のみWEBで公開いたします。公開を終了しました。   ※毎月1日に最新回を公開予定です。 李琴峰さんの朝日新聞出版の本 好評3刷!!

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    小川哲『君のクイズ』

    2022年10月7日発売の小川哲さん『君のクイズ』に関する記事をまとめています。

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    • 8本

    「お会いしたことないけどお世話になっている」小川哲と伊坂幸太郎の不思議な関係 <本屋大賞ノミネート記念!小川哲×杉江松恋対談を特別公開>

    *前編はこちら ■クイズは本来、人間が持っている文化 杉江:この題材についての取材やクイズというジャンルについてどの程度調べたかということが大事だと思いますが、小川さんは執筆に際しどういう風に取材を進められたのでしょうか。 小川:基本的に、僕のクイズ知識は素人です。テレビを見ないので、クイズ番組とかも全然知らなかったし、「東大王」も実は1回も見たことがない。  去年、伊沢拓司くんが『クイズ思考の解体』という分厚い本を出版した。クイズ史とプレイヤー心理とクイズの作問の仕

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    本屋大賞ノミネートの超話題作『君のクイズ』はどうやって生まれたのか? 著者・小川哲さんが杉江松恋さんとの対談で明かす

    杉江松恋さん(以下:杉江):僕はYouTube(杉江松恋チャンネル「ほんとなぞ」)で千街晶之さんと一緒に、小説誌に載った短編を読んでオススメの作品を紹介するという番組(『千街・杉江の「短いのが好き」』)を配信しているのですが、「短編だ!」と言っているのに千街さんが『小説トリッパー』に載った中編小説の『君のクイズ』を挙げてきたんです。で、読んでみたらまぁ、面白いのなんのとびっくりして。Twitterにも書いたんですが、今年は『地図と拳』で直木賞を獲るだけじゃなくて『君のクイズ』

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    「敗者の視点で描かれた残酷な事実の先にある“勝利”」書評家・渡辺祐真さんによる、小川哲『君のクイズ』評論を特別公開!

    遊びとはなにか? ~ゲームとプレイ~  遊びとは何だろうか。  周りを見渡せば、子どものごっこ遊びから、スポーツやスマホゲーム、そしてクイズに至るまで、数えきれないほどの遊びやゲームに我々は囲まれている。有名な哲学者の言葉を持ち出すまでもなく、人間は遊ぶ生き物と言っていい。  文化人類学者のデヴィッド・グレーバーは、「ゲームとは純粋に規則に支配された行為」だと述べた。[注1]遊びやゲームには厳格なルールが定められている。将棋なら駒の動かし方や勝敗の決め方、スポーツなら使って

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    【たちまち6刷】小川哲『君のクイズ』を取り上げてくださったメディア&著名人を一覧で紹介!

     直木賞ノミネートでもいま大注目の作家・小川哲さんの最新小説『君のクイズ』は、2022年6月、小説トリッパーに掲載されたのち、10月7日に書籍として刊行。発売後、SNSを中心に瞬く間に話題となり、この3カ月で多様なメディアで幅広く取り上げていただきました。取り上げられ方も様々で、広義のエンタメとして、狭義のミステリとして、より広い文学として……などなど、ジャンルを越え、業界を越え、話題にしていただきました。  年も改まった今、取り上げてくださったメディアや著名人のみなさまを

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    中山七里「特殊清掃人」

    中山七里さんによる連載小説です。2022年11月7日に単行本が発売になりました

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    • 32本

    はやくも3刷! 中山七里著『特殊清掃人』刊行記念エッセイ「自作解説は恥ずかしい」

    自作解説は恥ずかしい  本音を言ってしまえば、自作解説なんて死んでも書きたくない。そもそも中山七里の小説のメイキングなんて誰が読みたいものか。  だが本エッセイの依頼内容は400字詰め原稿用紙に換算して7枚半から8枚。とても近況報告などでお茶を濁せる枚数ではなく、朝日新聞出版の担当者を呪いながら作品の成立過程を述べる所存である。興味のない人はすっ飛ばしてください。  孤独死という言葉は既に70年代から存在していたように思う。当時10代の僕はその頃より想像力たくましく、「

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    2022年11月7日単行本発売――中山七里「特殊清掃人」試し読み

    一 祈りと呪い  1 〈真垣総理予算委員会突如欠席 持病再発か〉 〈「この街にゲイバーは要りません!」金目教信者新宿歌舞伎町をデモ行進〉 〈片足のビーナス市ノ瀬沙良 パラ二百メートル代表決定〉 〈年間交通事故死者 昨年比二割増〉  今日もネットニュースは煽情的な見出しに溢れている。だが自分の求めている孤独死のニュースはなかなか見当たらない。  各ニュースサイトを漁っていると、目の前の卓上電話が鳴った。 「はい、〈エンドクリーナー〉です」 『あのう、部屋のクリ

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    ※掲載終了しました※ 連司郎の死を望む者が、カルシウム拮抗薬を彼の手の届かぬ場所に隠してしまえば目的が達成できる――中山七里「特殊清掃人」第31回

         2022年12月7日文庫本発売決定 中山七里さんの朝日新聞出版からの既刊

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    ※掲載終了しました※ 近々遺言状の作成を依頼されるのかとばかり思っていたんですけど、まさか自分で作ってしまうとは――中山七里「特殊清掃人」第30回

    2022年12月7日文庫版発売決定  中山七里さんの朝日新聞出版からの既刊

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