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川添愛:連載エッセイ「パンチラインの言語学」

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文学、映画、アニメ、漫画……でひときわ印象に残る「名台詞=パンチライン」。この台詞が心に引っかかる背景には、言語学的な理由があるのかもしれない。ひとつの台詞を引用し、そこに隠れた… もっと読む
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記事一覧

「今のあの子ではムリ」(『ガラスの仮面』)――川添愛「パンチラインの言語学」第4回

 前回の連載が公開される前、私が「南ちゃんは本当に恐ろしい子である」と書いた部分について、校閲の方から「(『ガラスの仮面』での)原文は『おそろしい子!』のようです」との参考情報をいただいた。私も当然『ガラスの仮面』を意識してそのように書いたわけだが、こんな小ネタにもかかわらず、元ネタにまで当たっていただいたことに驚いた。最終的には漢字表記の方が読みやすいと判断したため平仮名表記に直すことはしなかったが、その流れ(?)で『ガラスの仮面』を読み始めた。  まだ全巻は読めていない

「めざせカッちゃん甲子園」(『タッチ』)――川添愛「パンチラインの言語学」第3回

 前回の原稿を提出したとき、担当Uさんから「次は『タッチ』や『キン肉マン』はどうでしょう?」という提案があった。どうやらUさんはこの連載の主なターゲットを五十代と考えているようなので、こういうチョイスになっているのだろう。とりあえず今回は『タッチ』を取り上げることにする。  この作品を知らない、あるいは読んだことがない読者がいる可能性を考慮して、簡単に紹介しておく。本作にはメインキャラクターとして、上杉達也、上杉和也という双子の兄弟と、彼らの隣家に住む幼なじみで快活な少女、

「とびきり甘い人生」(『チャーリーとチョコレート工場』)――川添愛「パンチラインの言語学」第2回

 今回は『チャーリーとチョコレート工場』を取り上げる。これは私が「バレンタインシーズンだから」と気を利かせたがゆえのチョイスではなく、この連載2回目にして早くもどの作品を取り上げたらいいか分からなくなり、担当Uさんのおすすめに唯々諾々と従った結果だ。飲食店で「店長のおすすめ」ばかり注文する主体性のなさが露呈した。  この映画、実は未見だった。2005年の公開当時は、『おそ松くん』のイヤミを彷彿とさせるおかっぱ頭のジョニー・デップが不気味すぎて、見る気になれなかった。実際に見

「フラッシュ・ゴードンが来てる」(『テッド』)――川添愛「パンチラインの言語学」第1回

 今回からweb TRIPPERで連載をさせていただくことになった。皆さんもどういう連載なのかよく分からないと思うが俺も分からねえという状況だ。どうやら映画やアニメ、漫画などで印象に残る台詞(パンチライン)を言語学的に考察しなさい、という感じらしい。  たぶんこの依頼の本来の意図は、誰でも知ってる作品の誰でも知ってる台詞、たとえば『ワンピース』の「海賊王に おれはなる!!!!」とか、『スター・ウォーズ』の「ア~イ アム ユア ファ~ザ~(シュコォ〜 ←呼吸音)」とか、そういう