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多々あるファミリーレストランの中でも、ここでしか食べられない一線を画したお料理と心地のよいサービスで、多くのファンを獲得しているロイヤルホスト。そんな特別な場での一人一人の記憶を味わえるエッセイ連載。毎週月曜日と金曜日に公開中!
書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。
喉につかえてしまった魚の小骨のように、あるいは撤去できていない不発弾のように、自分の中でのみ込みきれていない思い出や気持ちなどありませんか。あなたの「人生の呪い」に、歌人・上坂あゆ美が短歌と、エッセイでこたえます。
新人女性警官が未解決の一家惨殺事件に挑む! 二転三転する容疑者、背後で暗躍する指定暴力団、巧妙に張り巡らされた伏線――。ラストに待ち受ける驚愕の真犯人とは!? 警察小説の新たな傑作誕生!! 毎週木曜17時更新予定
作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストのジェーン・スーさんと文筆家・モデルの伊藤亜和さんによる往復書簡。朝日新聞出版のPR誌「一冊の本」で連載中の内容を転載します。毎月第2火曜日に伊藤亜和さんのお便り、第4火曜日にジェーン・スーさんのお便りを公開予定です。
2 捜査資料を参照して、尾崎たちは郷田を撥ねた男性を訪ねた。 彼の勤務先や親族、友人、知人を調べたのだが、不審な人間関係は見つからなかった。男性はやはりシロだ。五年前の三月六日、偶然四ツ目通りで郷田裕治を撥ねてしまった。彼にとっては不運以外の何物でもない事故だっただろう。 自販機の缶コーヒーを飲みながら、尾崎は今後の捜査について広瀬と相談した。 「このまま郷田と手島の関係、さらに白根さんのことを調べる? 尾崎くんがそうすると言うなら、私は従います」 「君はどう
タクシーに乗って錦糸町駅に移動した。 錦糸町事件の現場を見ておきたい、と思ったからだ。 車を降りて、尾崎は辺りを見回した。総武線の南側には映画館の入った大きな商業施設がある。 「『楽天地』という名前を聞くと、なんだか昭和の時代を思い出すな」 尾崎は商業ビルを見上げて言った。隣を歩く広瀬が、苦笑いを浮かべた。 「私も尾崎くんも、物心ついたころには昭和は終わっていたじゃない?」 「それでも昭和を感じるんだよ。体験していなくても心動かされることってあるじゃないか
「小学生のころ、私の父は病気で亡くなりました。それ以来、母が仕事に出ている間、私は近所に住む豊村義郎という人によく面倒を見てもらっていたんです。家に行って宿題を見てもらったり、おやつを食べさせてもらったり、いろいろ助けてもらいました。……ところが今から二十一年前、私が十六歳のとき、豊村さんがある事件の重要参考人になったらしいんです。下高井戸で起こった強盗殺人事件でした。八十代の夫婦が自宅で殺害され、現金や預金通帳が奪われたというんです。 豊村さんは警察から何度も呼び出され
「創作大賞」の特設サイトから、この朝日新聞出版の文芸部門が運営しているwebTRIPPERまで足を運んでくださった方もいらっしゃると思います。どうもありがとうございます! このたび朝日新聞出版は、noteの投稿コンテスト「創作大賞」に協賛することになりました。「エッセイ」「ミステリー小説」「恋愛小説」「お仕事小説」と昨年も選考に参加した部門に加えて、「漫画原作」「創作漫画」「コミックエッセイ」部門の選考にも参加します(新規で参加する3部門の選考は弊社のコミック部門が担います
6 講堂に集まった捜査員たちは、みな緊張した表情を浮かべている。 まもなく午後八時、夜の会議が始まる時間だ。捜査員たちは席に着き、それぞれ資料を広げたり、メモ帳の記録を確認したりしている。 いいネタを仕入れてきた者は、その情報を効果的に報告し、幹部から評価されたいと思っているはずだ。一方、あまりいい情報を得られなかった者は、会議でどのように釈明するか、いかにして叱責から逃れるかを真剣に考えているかもしれない。 尾崎も新米のころ、夜の捜査会議が嫌で仕方がなかった
5 改札を抜けると、尾崎たちは急ぎ足で目的地に向かった。 ここは昨日通ったばかりの道だ。あのときは何の勝算もないまま聞き込みに行っただけだった。しかし今は違う。ひとつの手がかりを得て、尾崎たちはその場所へと急いでいるのだ。 雑居ビルの一階に事務所がある。尾崎は広瀬と顔を見合わせたあと、入り口のドアを開けた。 「いらっしゃいませ」 椅子から立って、女性社員がこちらにやってきた。彼女は尾崎たちの顔を思い出したようだ。 「あ、警察の方……」 「どうも」と尾崎は