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多々あるファミリーレストランの中でも、ここでしか食べられない一線を画したお料理と心地のよいサービスで、多くのファンを獲得しているロイヤルホスト。そんな特別な場での一人一人の記憶を味わえるエッセイ連載。毎週月曜日と金曜日に公開中!
書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。
喉につかえてしまった魚の小骨のように、あるいは撤去できていない不発弾のように、自分の中でのみ込みきれていない思い出や気持ちなどありませんか。あなたの「人生の呪い」に、歌人・上坂あゆ美が短歌と、エッセイでこたえます。
新人女性警官が未解決の一家惨殺事件に挑む! 二転三転する容疑者、背後で暗躍する指定暴力団、巧妙に張り巡らされた伏線――。ラストに待ち受ける驚愕の真犯人とは!? 警察小説の新たな傑作誕生!! 毎週木曜17時更新予定
作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストのジェーン・スーさんと文筆家・モデルの伊藤亜和さんによる往復書簡。朝日新聞出版のPR誌「一冊の本」で連載中の内容を転載します。毎月第2火曜日に伊藤亜和さんのお便り、第4火曜日にジェーン・スーさんのお便りを公開予定です。
「五年前、手島恭介が郷田裕治の命令を受けて、廃屋などを探していたことがわかっている。今回おまえは手島が見つけた建物の近くで、あらためて廃屋を探し、死体遺棄に使った。郷田が起こした誘拐事件への復讐だったからだな。自分だけのこだわりでもあっただろうし、あわよくば警察に過去の事件を思い出させようとしたのか」 「そうですね……。五年前の事件と結びつけられる刑事がいれば、たいしたものだと思いました。まあ結局、誰ひとり気づかなかったようですが」 悔しいが、彼の言うとおりだ。尾崎と広
5 応援のメンバーや救急車が到着するまで、少し時間がかかるようだ。 加工室で坂本の様子を確認した。頭を殴られてかなり出血していたが、尾崎が介抱しているうち、彼は意識を取り戻した。 「坂本さん、私がわかりますか?」 「ああ……刑事さん。すみません、頭を殴られて……」 尾崎はハンカチを取り出して、坂本の額や顔の血を拭った。言葉もはっきりしているし、調べてみて、ほかに外傷はないのでほっとした。坂本は左脚が悪かったはずだ。救急車がやってくるまで、そのまま畳んだ段ボール
第1峰『密命』其の弐 大筋、中筋、個別事件の3本柱で巻を重ねる ここで佐伯作品の読みやすさについて考えてみたい。私は困ってしまったのだ。1冊読み終えるとすぐに次の巻を手にして読み始めてしまうのである。冗談のつもりで、「寝ても覚めても佐伯漬け」と言っていたのに、その通りになってしまった。佐伯本、予想以上に中毒性がある。 第3巻を読み終えたところで、どうやらそういうことかと気がついたので報告しよう。〝やめられない止まらない”の秘密は各巻の巧みな構成にあると思うのだ。
4 この建物のどこかに負傷者がいる可能性があった。 いったいその人物の怪我はどれほどのものなのか。通路に落ちた血からは、傷の程度は想像できない。怪我をした部位によって重傷度も変わってくるだろう。もし頭部からの出血であれば、かなり深刻なものになっているかもしれない。 ──いや、もしかして負傷者はもう……。 嫌なことが頭に浮かんだ。尾崎は首を左右に振って、その考えを追い払う。 今はあれこれ想像していても仕方がない。それによって萎縮してしまい、的確な行動がとれな
広瀬はうなずきながらメモを見ている。彼女にも状況の整理ができたらしい。 メモの一部を指差しながら、尾崎は言った。 「②と③と⑤と⑥の写真は多いから、手島の目的はこれらを撮影することだったと考えられる。しかし現在、一連の事件現場となっているのは①と④と⑦だ。どうしてこうなったかという疑問が生じるわけだが……」 「事件で廃屋が使われた理由は、想像がつきますよね」藪内が言った。「死体遺棄をするには、廃屋のほうが便利だからでしょう」 「藪ちゃんの言うとおりだ」尾崎はうなず
第1峰『密命』 すべてはここから始まった! 崖っぷちから放たれた、衝撃の時代小説デビュー作 1999年1月、書店の文庫本コーナーに1冊の時代小説が姿を現した。『密命 見参! 寒月霞斬り』という勇ましい題名がつけられていたが、覚えのある読者はいなかった。なぜなら、雑誌掲載もされず、単行本として出版されることもない〝文庫書き下ろし作品”だったからである。 だが、売れた。大宣伝をされたわけでもないこの作品を、おもしろい時代小説が読みたいと書店へやってくる読者たちは見