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北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第24回
第10峰『古着屋総兵衛影始末』『新・古着屋総兵衛』其の四
狭い日本を飛び出して国際貿易に活路を見出す
が、前述したように、本シリーズで佐伯泰英が描きたいのはそこではない。船だ。海だ。狭い日本を飛び出さんとする総兵衛のガッツだ。
そのために作者は、「そこまで望む佐伯ファンがいるのかなあ」と思うほどの熱量で、早い段階から船の描写に精を出す。総兵衛は、今後の商売のためにも多くの荷を運ぶだけでは
年森瑛「バッド入っても腹は減る」第9回
肌寒さで目を覚ました。
重たい窓ガラスをずるりずるり引きずって開けると、冷たく湿った空気が肺を満たした。日が当たるところまで身を乗り出す。残り火のような日差しが私を包んだ。秋だった。
ここ3週間くらい、帯状疱疹という病気によって右足の神経がウイルスにやられてしまい、ろくに歩けない状態になっていた。寝ても覚めても激痛で、上司に平身低頭して在宅勤務にさせてもらった。上司の上司からは睨まれたが、痛
なりたい自分になりたい(『違国日記』)――川添愛「パンチラインの言語学」第10回
今回はヤマシタトモコの『違国日記』を取り上げる。ガッキー主演の実写映画も見ようと思ったが、この原稿の締め切り前に見られなさそうなので、取り上げるのはもっぱら原作漫画の方だ。
本作は、突然の事故で両親を亡くした15歳の少女・朝と、彼女の叔母である小説家・槙生との同居生活を描くものだ。槙生は姉(朝の亡き母)と折り合いが悪く、朝ともほとんど面識がなかったが、朝が両親の葬式で親戚中からたらい回しにされ
上坂あゆ美連載「人には人の呪いと言葉」第7回
セフレの言葉に嫉妬してしまう
AUさん、こんにちは。
5年は長いですね。「彼女にはしない、ならないという前提で」関係が始まっているということなので、彼の方に特に落ち度はなく、まあ、だからこそしんどいわけですよね。
私はどうかあなたに健やかに生きてほしいと思っています。できるだけ傷つくことが少なく、喜びや楽しみが豊富な人生を歩んでほしいです。だからご自分でも仰る通りセフレに執着するのはやめ