書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。
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【単行本第1巻、9月13日発売!!】 婚約者・坂庭真実が忽然と姿を消した。彼女はなぜ姿を消したのか。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる――。 現代社会の生きづらさを恐るべき解像度で描き、多くの共感を呼んだ、2023年最大のベストセラー小説『傲慢と善良』を、名手・鶴谷香央理がコミカライズ!! 【毎月20日 11時更新予定】 小説公式サイトはこちら https://publications.asahi.com/feature/gouman/
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作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストのジェーン・スーさんと文筆家・モデルの伊藤亜和さんによる往復書簡。朝日新聞出版のPR誌「一冊の本」で連載中の内容を転載します。毎月第2火曜日に伊藤亜和さんのお便り、第4火曜日にジェーン・スーさんのお便りを公開予定です。
第二章 奪われた光 1 四月十六日、午前七時十五分。 身支度を整えたあと、尾崎は深川署の講堂に入っていった。 捜査本部にはすでに二十名ほどの刑事たちが集まっていた。捜査本部が設置されてから二日目の今日、やるべきことは山ほどある。それらを整理し、段取りを考え、いかに効率よく捜査を進めるか、みな真剣に計画を立てているのだ。 広瀬はまだ出てきていない。それを知って、なぜだか尾崎はほっとした。彼女を嫌っているわけではないが、どうも自分の中に苦手意識があるようだ。相棒
7 午後八時から夜の捜査会議が開かれることになっている。 尾崎と広瀬は七時前に捜査本部へ戻り、報告のための情報をまとめていった。それぞれメモ帳を見て重要な項目を抜き出し、自分の考えを述べて意見を一致させておく。コンビの間で言うことが違っていては、のちに幹部から突っ込まれる原因になる。また、ふたりが別の方向へ進もうとしていたら、明日以降の捜査に支障が出てしまうだろう。 報告内容がまとまったので、打ち合わせを終わりにした。 広瀬はもう少し考えることがあると言って、自
6 安川がパチンコ店に戻っていくのを見送ってから、尾崎は広瀬を見つめた。 「どういうつもりだ。さっきのは明らかにやりすぎだぞ」 責める調子で尾崎が言うと、彼女は不思議そうな顔をした。 「そうでしょうか? 私は捜査上の秘密を明かしたりしていませんし、問題はなかったと思っていますが」 「昨日今日入った新米じゃないんだから、君にもわかるはずだ。助けを求めた人間を警察が守れないなんて、そんな話をするのはまずいだろう」 「具体的に考えれば誰でもわかるはずです。でも実際には
5 西葛西駅から電車に乗り、都心部へ向かう。 車内は思ったよりも混んでいた。ドアのそばに立ったまま、尾崎は流れる風景を見ていた。 東京メトロ・東西線の電車は西船橋から西葛西まで、高架の上を走っている。そしてその先、南砂町駅の手前から地下に潜る形になる。なぜかというと、西葛西と南砂町の間には荒川があるからだ。川の下を掘り抜くのは難しいから、建設当時そのように設計されたのではないだろうか。 地下に入ると窓の外が暗くなった。明かりがガラスに反射して、振り返らなくても車
前回のせやま南天さんの日記(その6)はこちら 前回の編集者Kの日記(その5)はこちら 校正者さんは欠かせない存在 年が明けた2024年1月。 改稿を終え、入稿し、ついに初校ゲラになった『クリキャベ』を、校正者さんのもとへお届けしました。 そして、校正を終え、 校正者さんによって一字一字チェックしてもらったゲラを 著者のせやまさんにお届けします。 編集者は、著者に渡すだけ…… のように見えますが、校正者さんからゲラが戻った後、著者に渡すまでに、実はこんなことをしています。
1 あれは……。三枝貴明は瞬きを止めた。 普段はしない黒縁眼鏡をかけ、生えていないはずの顎髭を蓄えているが、同じ職場で一つ下の後輩――谷澤雅史を見間違えはしない。人間は不特定多数の集団から見知った顔を瞬時に見つけ出す習性があり、刑事はその能力を日々磨いている。 変装――。 三枝はそれとなく周りを見回した。午後二時半、山下公園に近い高級ホテル『横浜グランドメゾンホテル』の喫茶ラウンジは、多くの利用客で席がほぼ埋まっている。サマーバカンス中の客や、土曜の大安とあって、こ