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季刊文芸誌「小説トリッパー」(3、6、9、12月発売)のweb版です。連載(小説やエッ…

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季刊文芸誌「小説トリッパー」(3、6、9、12月発売)のweb版です。連載(小説やエッセイ)のほかに、朝日新聞出版発行の文芸ジャンルの単行本や文庫に関する書評やインタビュー、試し読みなども掲載していく予定です。本と出会えるサイトになればと思っています。

マガジン

  • 北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』

    平成を大法する大ベストセラー作家・佐伯泰英。その膨大な著作をすべて読破してレポート。読者をひきつけてやまない魅力を全力で伝えます!

  • 朝日新聞出版の文芸書

    • 217本

    書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。

  • 鶴谷香央理:連載コミック「傲慢と善良」(原作・辻村深月)

    2024年6月20日(木)11時より連載スタート!!【毎月20日 11時更新予定】 婚約者・坂庭真実が忽然と姿を消した。彼女はなぜ姿を消したのか。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる――。 現代社会の生きづらさを恐るべき解像度で描き、多くの共感を呼んだ、2023年最大のベストセラー小説『傲慢と善良』を、名手・鶴谷香央理がコミカライズ!! 小説公式サイトはこちら https://publications.asahi.com/feature/gouman/

  • 年森瑛:連載エッセイ「バッド入っても腹は減る」

    パスタを茹でながら、キャベツを煮込みながら、一冊の本をじっくり読む――。いちばん読書がはかどるのはキッチンだ。いま再注目の新人作家による、おいしい読書日記連載スタート。毎月15日更新予定。

  • 川添愛:連載エッセイ「パンチラインの言語学」

    文学、映画、アニメ、漫画……でひときわ印象に残る「名台詞=パンチライン」。この台詞が心に引っかかる背景には、言語学的な理由があるのかもしれない。ひとつの台詞を引用し、そこに隠れた言語学的魅力を、気鋭の言語学者・川添愛氏が解説する連載がスタート! 毎月10日に配信予定。

記事一覧

【試し読み】櫻木みわさんの最新作『カサンドラのティータイム』/「この物語を必要と…

カサンドラのティータイム 1 友梨奈  照明がまぶしかった。アナベルの花が雪のようにかが…

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※掲載終了しました※ 近々遺言状の作成を依頼されるのかとばかり思っていたんですけ…

2022年12月7日文庫版発売決定  中山七里さんの朝日新聞出版からの既刊

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ありふれた災厄 月村了衛

 新しくオープンしたシネコンの発券機は、購入番号を何度入力してもチケットを吐き出してはく…

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※掲載終了しました※ 「ここに父がいたなら、そうしろと言うでしょう」――中山七里…

2022年12月7日文庫版発売決定 中山七里さんの朝日新聞出版からの既刊

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※掲載終了しました※ 特殊清掃という仕事柄、欲の皮が突っ張った遺族は幾度も見てき…

2022年12月7日文庫版発売決定 中山七里さんの朝日新聞出版からの既刊

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※掲載終了しました※ 歳を食うと家族が鬱陶しくなるヤツもいる――中山七里「特殊清…

2022年12月7日文庫版発売決定 中山七里さんの朝日新聞出版からの既刊 ​

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【試し読み】櫻木みわさんの最新作『カサンドラのティータイム』/「この物語を必要としていた」「心底励まされた」雑誌掲載時から共感の声が広がる話題作

【試し読み】櫻木みわさんの最新作『カサンドラのティータイム』/「この物語を必要としていた」「心底励まされた」雑誌掲載時から共感の声が広がる話題作

カサンドラのティータイム

1 友梨奈

 照明がまぶしかった。アナベルの花が雪のようにかがやいていた。北アメリカ原産の、アジサイ科の花だった。大きな霧吹きを持った美術係のスタッフが、花と葉に、水をたっぷり吹きかけている。照明の熱から守るための処置だった。花のあまい香りが濃くなった気がしたが、気のせいだったかもしれない。
 戸部友梨奈は、カメラ機材の邪魔にならないよう後方のうすぐらい壁際に立ち、照

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ありふれた災厄 月村了衛

ありふれた災厄 月村了衛

 新しくオープンしたシネコンの発券機は、購入番号を何度入力してもチケットを吐き出してはくれなかった。

「すいません、ちょっと」

 背後を振り返った梶田義昭は、ロビーを横切ろうとしていた女性従業員に大声で呼びかけた。

「はい、どうなさいましたか」

 九〇度に近い角度で進行方向を変え、小走りに寄ってきた従業員にスマホの画面を示す。

「オンラインでチケットを購入したんですけど、何度やってもダメ

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