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季刊文芸誌「小説トリッパー」(3、6、9、12月発売)のweb版です。連載(小説やエッ…

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季刊文芸誌「小説トリッパー」(3、6、9、12月発売)のweb版です。連載(小説やエッセイ)のほかに、朝日新聞出版発行の文芸ジャンルの単行本や文庫に関する書評やインタビュー、試し読みなども掲載していく予定です。本と出会えるサイトになればと思っています。

マガジン

  • 朝日新聞出版の文芸書

    • 183本

    書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。

  • 長井短『私は元気がありません』

    2024年2月7日発売の長井短さん『私は元気がありません』に関する記事をまとめています。

  • 『クリームイエローの海と春キャベツのある家』編集日記

    • 11本

    創作大賞2023(note主催) 朝日新聞出版賞受賞作『クリームイエローの海と春キャベツのある家』の著者 せやま南天さんと、担当編集者Kによる編集日記です。

  • 警察短篇小説競作

    名手による警察小説をお楽しみください。

  • 年森瑛:連載エッセイ「バッド入っても腹は減る」

    パスタを茹でながら、キャベツを煮込みながら、一冊の本をじっくり読む――。いちばん読書がはかどるのはキッチンだ。いま再注目の新人作家による、おいしい読書日記連載スタート。毎月15日更新予定。

記事一覧

【試し読み】櫻木みわさんの最新作『カサンドラのティータイム』/「この物語を必要と…

カサンドラのティータイム 1 友梨奈  照明がまぶしかった。アナベルの花が雪のようにかが…

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1年前
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※掲載終了しました※ 近々遺言状の作成を依頼されるのかとばかり思っていたんですけ…

2022年12月7日文庫版発売決定  中山七里さんの朝日新聞出版からの既刊

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1年前
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ありふれた災厄 月村了衛

 新しくオープンしたシネコンの発券機は、購入番号を何度入力してもチケットを吐き出してはく…

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※掲載終了しました※ 「ここに父がいたなら、そうしろと言うでしょう」――中山七里…

2022年12月7日文庫版発売決定 中山七里さんの朝日新聞出版からの既刊

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※掲載終了しました※ 特殊清掃という仕事柄、欲の皮が突っ張った遺族は幾度も見てき…

2022年12月7日文庫版発売決定 中山七里さんの朝日新聞出版からの既刊

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※掲載終了しました※ 歳を食うと家族が鬱陶しくなるヤツもいる――中山七里「特殊清…

2022年12月7日文庫版発売決定 中山七里さんの朝日新聞出版からの既刊 ​

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【試し読み】櫻木みわさんの最新作『カサンドラのティータイム』/「この物語を必要としていた」「心底励まされた」雑誌掲載時から共感の声が広がる話題作

【試し読み】櫻木みわさんの最新作『カサンドラのティータイム』/「この物語を必要としていた」「心底励まされた」雑誌掲載時から共感の声が広がる話題作

カサンドラのティータイム

1 友梨奈

 照明がまぶしかった。アナベルの花が雪のようにかがやいていた。北アメリカ原産の、アジサイ科の花だった。大きな霧吹きを持った美術係のスタッフが、花と葉に、水をたっぷり吹きかけている。照明の熱から守るための処置だった。花のあまい香りが濃くなった気がしたが、気のせいだったかもしれない。
 戸部友梨奈は、カメラ機材の邪魔にならないよう後方のうすぐらい壁際に立ち、照

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ありふれた災厄 月村了衛

ありふれた災厄 月村了衛

 新しくオープンしたシネコンの発券機は、購入番号を何度入力してもチケットを吐き出してはくれなかった。

「すいません、ちょっと」

 背後を振り返った梶田義昭は、ロビーを横切ろうとしていた女性従業員に大声で呼びかけた。

「はい、どうなさいましたか」

 九〇度に近い角度で進行方向を変え、小走りに寄ってきた従業員にスマホの画面を示す。

「オンラインでチケットを購入したんですけど、何度やってもダメ

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