web TRIPPER

季刊文芸誌「小説トリッパー」(3、6、9、12月発売)のweb版です。連載(小説やエッセイ)のほかに、朝日新聞出版発行の文芸ジャンルの単行本や文庫に関する書評やインタビュー、試し読みなども掲載していく予定です。本と出会えるサイトになればと思っています。

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季刊文芸誌「小説トリッパー」(3、6、9、12月発売)のweb版です。連載(小説やエッセイ)のほかに、朝日新聞出版発行の文芸ジャンルの単行本や文庫に関する書評やインタビュー、試し読みなども掲載していく予定です。本と出会えるサイトになればと思っています。

マガジン

  • ロイヤルホストで夜まで語りたい

    多々あるファミリーレストランの中でも、ここでしか食べられない一線を画したお料理と心地のよいサービスで、多くのファンを獲得しているロイヤルホスト。そんな特別な場での一人一人の記憶を味わえるエッセイ連載。毎週月曜日と金曜日に公開中!

  • 朝日新聞出版の文芸書

    • 257本

    書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。

  • 上坂あゆ美:連載エッセイ、短歌「人には人の呪いと言葉」

    喉につかえてしまった魚の小骨のように、あるいは撤去できていない不発弾のように、自分の中でのみ込みきれていない思い出や気持ちなどありませんか。あなたの「人生の呪い」に、歌人・上坂あゆ美が短歌と、エッセイでこたえます。

  • 吉川英梨『新人女警』

    新人女性警官が未解決の一家惨殺事件に挑む! 二転三転する容疑者、背後で暗躍する指定暴力団、巧妙に張り巡らされた伏線――。ラストに待ち受ける驚愕の真犯人とは!? 警察小説の新たな傑作誕生!! 毎週木曜17時更新予定

  • ジェーン・スー 伊藤亜和:往復書簡 日々の音沙汰

    作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストのジェーン・スーさんと文筆家・モデルの伊藤亜和さんによる往復書簡。朝日新聞出版のPR誌「一冊の本」で連載中の内容を転載します。毎月第2火曜日に伊藤亜和さんのお便り、第4火曜日にジェーン・スーさんのお便りを公開予定です。

記事一覧

北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第21回

北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第20回

年森瑛「バッド入っても腹は減る」第8回

北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第19回

はこびるって何だよ!(『勇者ヨシヒコ』シリーズ)――川添愛「パンチラインの言語学」第9回

北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第18回

北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第21回

第10峰『古着屋総兵衛影始末』『新・古着屋総兵衛』其の壱 家康の命を受けた一族が江戸を守り、海を攻める 巧みな設定で全11巻を駆け抜ける『古着屋総兵衛影始末』 表の貌は老舗の主、裏の貌は江戸の諜者 『古着屋総兵衛』シリーズは、全11巻の『古着屋総兵衛影始末』、全18巻の『新・古着屋総兵衛』からなるアクション連山。佐伯作品の中では物語の設定が強固で登山もしやすいが、こぢんまりとまとまるのではなく、その枠にとどまらない自由奔放さを併せ持つ個性派時代小説でもある。『新・古着

北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第20回

第9峰『空也十番勝負』其の弐 〝十番〟と数を限定したのは、書き過ぎ禁止令だった⁉  剣術小説のタイトルに十番勝負とついていたら、読者が想像するのは巻ごとに強敵が現れ、迫りくるピンチをしのいで相手を倒すパターンではないだろうか。流派の違いで闘い方を変えたり、相手の得意技に一度は傷を負いながらもかろうじて勝ちを収め、つぎの強敵を求めて旅を続けていく。そして、最終巻で最強の相手にたどりつき10番勝負が成就する筋書きが王道。連作小説としてまとまりやすいし、読者も読みやすいように思

年森瑛「バッド入っても腹は減る」第8回

「今度ちいちゃんと焼肉行くんだけど年森は食べれたっけ?」 「食べれないけど雰囲気は味わいたい」 「おけ! いこうず!」  というわけで中学からの友人であるちいちゃん、ユウと焼肉に行った。好きなの食べなと言われたので、二人が焼いているそばから興味をひかれた肉だけもらった。帰りに公園でたむろしていたらゲリラ豪雨に見舞われ、あまりのずぶ濡れ具合に爆笑しながら別れた。横断歩道の向こうで「気をつけて帰んな~!」と叫んでいる二人の姿は雨滴にほとんどかき消されて、でも笑っている声だった。

北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第19回

第9峰『空也十番勝負』 どうにも止まらない! 執筆欲と読書欲の共鳴で新山が隆起 10代の若武者を主役に据えた、元気ハツラツの磐音続編 年齢を意識し、〝十番”に限定。コンパクトな物語を志すも……  リアルタイムで読んだわけではないので、『居眠り磐音 江戸双紙』が全51巻で終わったときの読者の反応は知らないが、新刊が出るたびに読み継ぎ、足掛け15年間も同作品を追いかけた読者の胸中は達成感に満たされただろうと想像できる。  人気があるから長編シリーズになる。その一方で、通

はこびるって何だよ!(『勇者ヨシヒコ』シリーズ)――川添愛「パンチラインの言語学」第9回

 最近、また『勇者ヨシヒコ』シリーズを見返している。数年ごとに『ヨシヒコ』を見たくなる時期があり、今がちょうどそれにあたるようだ。疲れすぎていて他に何も見たくないときでも、『ヨシヒコ』なら見られるし、見たら楽しめるという点で私にとってはたいへんありがたい作品だ。一話あたり30分という長さもちょうどいい。  見たことのない人のために説明すると、ストーリー上の設定は、故郷の村で勇者として選ばれた真面目な青年ヨシヒコ(山田孝之)が魔王の手から世界を救うために旅をする、というものだ。

北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第18回

第8峰『居眠り磐音 江戸双紙』其の弐 全読者の胸を熱くさせる神回の第3巻、珠玉の第16巻 『居眠り磐音 江戸双紙』が大長編でありながら尻すぼみにならずに人気を保ち、傑作と称される理由として挙げておきたいのは、緩急の使い分けが見事にはまっている点だ。とりわけ前半がすごくて、急展開のオープニングから一転して静かになったかと思いきや、物語の骨格を形成するのと同時進行で感情を揺さぶられるドラマがピークを目指して前にせり出してくる。  大長編である。しかも、小さな事件をていねいに