記事一覧
北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第8回
第3峰『夏目影二郎始末旅』其の弐
真のテーマは男の友情だった!?
荒唐無稽な活劇を支える写真家の描写力
『夏目影二郎始末旅』を、著者は約15年間かけて書き上げた。全15巻だから、佐伯泰英の作品群にあって、さほど長いほうではない。でも、読みごたえはたっぷり味わえる。中身が濃いのだ。中盤までは各巻400ページを越すボリューム。さらに、光文社文庫の〈決定版〉では、巻末ごとに『佐伯泰英外伝』と題し、
北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第7回
第3峰『夏目影二郎始末旅』
血と汗と涙が炸裂する、ハードボイルド股旅ロマン
ダークヒーロー夏目影二郎が関八州の悪を討つ
続編もスピンオフもない全15巻完全燃焼の傑作
遅咲き時代小説家の佐伯泰英が、デビュー作の『密命』に続いて放った長編シリーズが本作『夏目影二郎始末旅』だ。刊行時期は2000年から2014年。当初は日文文庫から発行されたが、途中から版元が変わり、光文社文庫として全15巻で完
北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第6回
第2峰『鎌倉河岸捕物控』其の弐
いぶし銀! 金座裏九代目・宗五郎親分の安定感とオヤジ力
絶妙な設定で大がかりな捕物が可能になった
人呼んで「金座裏」の9代目宗五郎。江戸でもっとも古株の十手持ち(岡っ引き)で、将軍家御目見の古町町人(代々江戸で暮らしてきた人たち)でもある。
金座は幕府が金貨の鋳造などを行う重要な機関で、現在も日本銀行の本店が同じ場所にある。そこで著者は、裏口の本両替町