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北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第2回
第1峰『密命』
すべてはここから始まった!
崖っぷちから放たれた、衝撃の時代小説デビュー作
1999年1月、書店の文庫本コーナーに1冊の時代小説が姿を現した。『密命 見参! 寒月霞斬り』という勇ましい題名がつけられていたが、覚えのある読者はいなかった。なぜなら、雑誌掲載もされず、単行本として出版されることもない〝文庫書き下ろし作品”だったからである。
だが、売れた。大宣伝をされたわ
北尾トロ『佐伯泰英山脈登頂記』第1回
はじめに(佐伯泰英山脈をこれから登る人たちへ)
佐伯泰英。平成時代を代表するベストセラー作家のひとりであり、賞レースに縁のない無冠の帝王であり、遅咲きの〝オヤジの星”であり、〝書き下ろし時代小説文庫”を定着させて出版のありようまで変えた男。本好きの誰もが名前くらいは知っているエンタメ小説界の巨人だ。
新刊が出れば必ずと言っていいほど書店の売れ筋ランキング上位に入る売れっ子作家。しかも、