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季刊文芸誌「小説トリッパー」(3、6、9、12月発売)のweb版です。連載(小説やエッセイ)のほかに、朝日新聞出版発行の文芸ジャンルの単行本や文庫に関する書評やインタビュー、試し読みなども掲載していく予定です。本と出会えるサイトになればと思っています。

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季刊文芸誌「小説トリッパー」(3、6、9、12月発売)のweb版です。連載(小説やエッセイ)のほかに、朝日新聞出版発行の文芸ジャンルの単行本や文庫に関する書評やインタビュー、試し読みなども掲載していく予定です。本と出会えるサイトになればと思っています。

    マガジン

    • 李琴峰「日本語からの祝福、日本語への祝福」

      台湾出身の芥川賞作家・李琴峰さんによる日本語への思いを綴ったエッセイです。朝日新聞出版のPR誌「一冊の本」で連載中の内容を1カ月遅れで転載します。毎月1日に最新回を公開予定です。

    • 中山七里「特殊清掃人」

      中山七里さんによる連載小説です。毎週金曜日に最新話を公開する予定です。

    • 朝日新聞出版の文芸書

      • 54本

      書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。

    • 小川哲『君のクイズ』

      2022年10月7日発売の小川哲さん『君のクイズ』に関する記事をまとめています。

    • 高山羽根子「オブジェクタム/如何様」

      高山羽根子さんの朝日文庫『オブイジェクタム・如何様』に関する記事をまとめています。

    記事一覧

    「昔の仲間が何を遺したのか、何を言おうとしたのか気になるんだな」――中山七里「特…

    第1回から読む 「清掃は済みましたが、遺品整理がまだです」  白井はナイロン袋に収めたパ…

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    1か月前

    部屋には住む者の性格と嗜好が現れる。片づけ具合からは精神状態が、ゴミからは生活水…

    第1回から読む  よくあるように〈みかろん&スーパー・ラディカル・バンド〉は当初コピー・…

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    1か月前

    同族が生物から静物へと変わる時の臭い。絶望と無情を嘔吐感とともに思い出させる臭い…

    第1回から読む  川島は音楽センスに秀でていたこともあり、バンドのリーダーを任じていた。…

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    1か月前

    心身とはよく言ったもので、肉体の疲労は精神の疲弊を呼び起こす――中山七里「特殊清…

    第1回から読む 三 絶望と希望       1  腐敗液と清掃に使用した捕虫網やタオル類…

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    1か月前

    小さい魚は催眠術をかける――李琴峰「日本語からの祝福、日本語への祝福」第3回

    第3回 小さい魚は催眠術をかける  子供時代はポケモンにハマっていたというのは前回書いた…

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    2か月前
    「昔の仲間が何を遺したのか、何を言おうとしたのか気になるんだな」――中山七里「特殊清掃人」第21回

    「昔の仲間が何を遺したのか、何を言おうとしたのか気になるんだな」――中山七里「特殊清掃人」第21回

    第1回から読む

    「清掃は済みましたが、遺品整理がまだです」

     白井はナイロン袋に収めたパソコンを掲げてみせる。

    「室内を拝見しましたが、形見になるような品物はベースと雑誌とCD、それからこのパソコンくらいでした」

    「ずいぶんと簡素な生活ぶりだったのね」

    「一応、パソコンをお預りしてよろしいでしょうか。保存された情報の中に他の形見の存在を示すものがあるかもしれません」

    「ああ、隠し預金と

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    部屋には住む者の性格と嗜好が現れる。片づけ具合からは精神状態が、ゴミからは生活水準が窺える――中山七里「特殊清掃人」第20回

    部屋には住む者の性格と嗜好が現れる。片づけ具合からは精神状態が、ゴミからは生活水準が窺える――中山七里「特殊清掃人」第20回

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     よくあるように〈みかろん&スーパー・ラディカル・バンド〉は当初コピー・バンドから始まった。ところが人気を得るに従って川島作詞作曲のオリジナル曲が多くなる。バンドの人気はボーカルみかろんの声に拠るところが大きいが、実は川島のオリジナル曲にこそ吸引力があった。言わば川島とみかろんがバンドのツートップであり、白井と松崎はいつでも替えの利く要員でしかなかった。本人がその事実に気づかぬは

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    同族が生物から静物へと変わる時の臭い。絶望と無情を嘔吐感とともに思い出させる臭いだ。――中山七里「特殊清掃人」第19回

    同族が生物から静物へと変わる時の臭い。絶望と無情を嘔吐感とともに思い出させる臭いだ。――中山七里「特殊清掃人」第19回

    第1回から読む

     川島は音楽センスに秀でていたこともあり、バンドのリーダーを任じていた。特に押し出しが強いタイプではなかったが、冷静な判断力と調整型の性格は、個性豊かなバンドメンバーを統率するのにうってつけの人材だった。

     その川島が特殊清掃対象物件の住人だという。言い換えれば孤独のうちに死に、その後二週間ほど発見されなかったのだ。

     馬鹿な。

     川島瑠斗に限って、そんなことがあるはずがな

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    心身とはよく言ったもので、肉体の疲労は精神の疲弊を呼び起こす――中山七里「特殊清掃人」第18回

    心身とはよく言ったもので、肉体の疲労は精神の疲弊を呼び起こす――中山七里「特殊清掃人」第18回

    第1回から読む

    三 絶望と希望

          1

     腐敗液と清掃に使用した捕虫網やタオル類を入れた専用容器を置くと、近くに立っていたゴミ処理場の職員が冷ややかな目でそれを見た。

     冷ややかな視線に悪意はないと分かっていても、白井は緊張してしまう。体液の付着した廃棄物は全て感染性廃棄物となり、他のゴミと一緒にできない。専用容器に一切合財を放り込み、指定された場所に搬入し、中身ごと焼却処分される

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    小さい魚は催眠術をかける――李琴峰「日本語からの祝福、日本語への祝福」第3回

    小さい魚は催眠術をかける――李琴峰「日本語からの祝福、日本語への祝福」第3回

    第3回 小さい魚は催眠術をかける

     子供時代はポケモンにハマっていたというのは前回書いた通りだが、アニメだけでなく、ゲームにもまた忠実なファンで、初代の『ポケットモンスター 赤』からやっていた。

     中国語の吹き替えと字幕がついているアニメとは違い、ゲームはかなり難儀した。何しろキャラクターやポケモンの名前から、地名、技名、会話、アイテム名など、全部日本語なのだ。日本語といっても漢字があれば何と

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