麻見和史『殺意の輪郭 猟奇殺人捜査ファイル』第21回
午後十一時四十五分。尾崎はマンションの敷地内にいた。
ごみ収集箱の陰に隠れて、静かに前方を見つめている。この時刻、敷地内を歩く者はひとりもいない。たまに表の通りを車が走っていくが、このマンションに入ってくる車両は一台もなかった。
敷地内にはぽつりぽつりと街灯が灯っている。青白い光が辺りを照らしていたが、充分な明るさとは言えなかった。あちこちに暗がりがあるから、尾崎がこうして隠れていても容易にはわからないだろう。
前方三十メートルほどの場所に、地域の集会所が見える