麻見和史『殺意の輪郭 猟奇殺人捜査ファイル』第2回
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自分の進路について、尾崎は母親とは何も相談してこなかった。
だから尾崎が大学二年のとき、将来は警察官になるつもりだと話すと、母親はひどく驚いたようだった。
「あんた、そんなことを考えていたの」母親はまばたきをしながら尋ねてきた。「やっぱり、うちの家計のせい?」
尾崎が大学一年のときに父が他界し、母はパートの仕事でだいぶ苦労をしていた。大学の学費は奨学金でまかなえたが、尾崎も積極的にアルバイトをして家計を助けていたのだった。
「それもある。でも、それだけじゃな