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鈴峯紅也さんの人気シリーズ「警視庁監察官Q」の主人公・小田垣観月の学生時代を描いたスピンオフシリーズです。11月24日より、毎週木曜日に最新回を掲載予定です。
書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。
台湾出身の芥川賞作家・李琴峰さんによる日本語への思いを綴ったエッセイです。朝日新聞出版のPR誌「一冊の本」で連載中の内容を1カ月遅れで転載します。毎月1日に最新回を公開予定です。
「貧困ジャーナリズム賞2022」受賞、「第45回講談社本田靖春ノンフィクション賞」「2022年Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞」ノミネート。2022年4月20日発売、永田豊隆さん『妻はサバイバー』に関する記事をまとめています。
弊社も「エッセイ」「ミステリ小説」「恋愛小説」「お仕事小説」部門の選考に携わります、創作大賞2023に参加される方の参考になりそうな記事を集めています。
二十七 この日はまだ上弦の月には満たない夜で、白昼に上り始めた月は〈最終電車〉すら待つ…
二十六 その木曜日の朝もまた、けたたましいベルの音から始まった。 音からするに、最終…
第13回 四文字の宇宙 日進月歩の情報技術により、賢明愚昧関係なく誰でも三者三様、十人十…
二十五 火曜日の出勤は裕樹に約束したがそれだけで、木曜から月曜は店に出なかった。 ――…
二十四 この翌日の木曜日は、一か月に一度の東大病院の日だった。 検査やら何やらで早く…
二十三 週明けの月曜日は、一日中はっきりとしない生憎の天気だった。 薄陽の時間はあっ…
2023年6月8日 17:00
二十七 この日はまだ上弦の月には満たない夜で、白昼に上り始めた月は〈最終電車〉すら待つことなく、早々に西の端に消えていた。 空に月なき晩、ということになる。風もない。 観月は、昼間のままの出で立ちで銀座の夜に立った。 と言って、この夜は〈蝶天〉に行くわけではない。夜の十時半過ぎは、たとえ同伴であっても出勤には遅すぎる時間だ。 銀座線を降り、帰路に就こうとする足早な人の流れに逆ら
2023年6月1日 17:00
二十六 その木曜日の朝もまた、けたたましいベルの音から始まった。 音からするに、最終兵器として購入した三つ目だということに疑いはない。(あれだわよねぇ。松婆も竹婆も、同じようにああは言うけどさ) 前日は、普通に駒場キャンパスで学生生活を満喫した一日だった。 そうして、ドミトリーに戻って就寝し、朝を迎えた。 清々しいはずの朝に、三つ目の目覚ましがけたたましい。(だから、こ
2023年6月1日 12:00
第13回 四文字の宇宙 日進月歩の情報技術により、賢明愚昧関係なく誰でも三者三様、十人十色の主義主張を自由闊達に、百家争鳴のごとく侃々諤々、丁々発止と談論風発できるから、採長補短すれば大同団結の理想の世へ直往邁進できるだろう、そう専門家たちは自画自賛していたが、そんな呵々大笑に値する大言壮語はすぐに雲散霧消し、今や清廉潔白な聖人君子と曲学阿世の豚児犬子が玉石混淆となり、金科玉条と狂言綺語の境は
2023年5月25日 17:00
二十五 火曜日の出勤は裕樹に約束したがそれだけで、木曜から月曜は店に出なかった。――多分ね。バイトは昨日で終わり、かな。 と、東大病院での検査の日に、〈四海舗〉で松子に言った言葉は嘘ではない。 十六日の火曜日は、四営業日振りの〈蝶天〉だった。 なんとなく懐かしくもあり、どことなく〈馴染んだ職場〉の匂いもした。 この夜は午後七時前の定時に入り、しっかりとミーティングから出た。
2023年5月18日 17:00
二十四 この翌日の木曜日は、一か月に一度の東大病院の日だった。 検査やら何やらで早くて一時間半、長ければ二時間を優に超すのがいつもの流れだ。毎月十日前後の、百合川女医の都合に合わせて通うことになっていた。 予約はこの日の、午前十一時だった。 時間から言って、昼を跨ぐのは目に見えていた。 それでまず、朝イチで〈四海舗〉に顔を出した。 ドミトリーで竹子の朝食を摂り、〈四海舗〉で
2023年5月11日 17:00
二十三 週明けの月曜日は、一日中はっきりとしない生憎の天気だった。 薄陽の時間はあっても肌寒く、もう十一月であることを体感する。 観月はこの日、久し振りに自分なりの定時で〈蝶天〉に出勤した。 前週は同伴づいて、資生堂パーラーから営業中の〈蝶天〉に入った。ミーティングから出て京風スイーツを味わうのは、随分久し振りな気がした。 この日のスイーツは、抹茶を練り込んだ生地の豆大福だった