台湾出身の芥川賞作家・李琴峰さんによる日本語への思いを綴ったエッセイです。朝日新聞出版のPR誌「一冊の本」で連載中の内容を1カ月遅れで転載します。毎月1日に最新回を公開予定です。
- 運営しているクリエイター
#語学
修業時代の洗礼――李琴峰「日本語からの祝福、日本語への祝福」第20回
第20回 修業時代の洗礼
私の留学先は別科日本語専修課程というところだった。
文学部や法学部といった一般的に知られる学部・学科とは違い、別科は日本語や日本文化、日本事情の講義を開講する、もっぱら留学生を対象にした教育プログラムである。正規の教育課程であることに変わりはないが、ほとんどの日本人学生はその存在すら知らないので、「李さんは何学部ですか?」と訊かれたら、説明はかなり面倒だった。こう