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パラティー1杯目 天神西通り店の朝食ビュッフェ〈連載:ロイヤルホストで夜まで語りたい・番外編〉

多々あるファミリーレストランの中でも、ここでしか食べられない一線を画したお料理と心地のよいサービスで、多くのファンを獲得しているロイヤルホスト。そんな特別な場での一人一人の記憶を味わえるエッセイ連載「ロイヤルホストで夜まで語りたい」番外編。
高橋ユキさんが全4回にわたってロイヤルホストの各店舗とそこでテーブルを共にする、ある人について綴ります!

パラティー1杯目 天神西通り店の朝食ビュッフェ

高橋ユキ

 普段、刑事裁判を傍聴したり事件の取材をしたりして記事を書く仕事をしている私が、なぜロイヤルホストをテーマに執筆することになったかといえばおそらく「#ロイヤルホストを守る市民の会」が理由であろう。
 「#ロイヤルホストを守る市民の会」とは、普段の仕事とは全く関係のない、たわむれに思いついたタグであり、しかも私はその「#ロイヤルホストを守る市民の会」の代表を自称している。そんな説明をされても意味がわからないと思うので経緯を軽く振り返りたい。
 「ロイヤルホストを守る市民の会」というワードと共に初めてロイヤルホストのパンケーキの写真を旧Twitterにアップしたのが2020年5月。当時、ロイヤルホスト系列の店舗が大量閉店の恐れありといった報道が広まっていた。新型コロナウイルス感染拡大により飲食業界は大きな打撃を受けていたころだ。私は常日頃から、打ち合わせ、また同業者との愚痴を言い合う場としてロイヤルホストに通っていた。とはいえ「#食べて応援」なるタグは、それを目にした人が「応援しなきゃダメなのかな」と圧を感じそうで嫌だ。そんなことをおぼろげながら考えた結果の「ロイヤルホストを守る市民の会」だった。あとからタグにしてくれる方が現れ、今に至る。
 守る会などもちろん存在しないが、さも存在しているかのように装ってみたのである。「守る」といいながら防衛のための積極的なアクションをしないことも重要だった。
 ロイヤルホストに行くたび、このタグをつけてSNSに投稿しているうちに、広まって今に至る。代表を自称してはいるものの、目下、フェードアウトしようとしている。誰が広めたか知らないが、いつのまにかあるもの……みたいにしたいからだ。
 前置きだけで記事のスペースを埋めてしまうところだった。私はロイヤルホストをテーマに各店舗の様子と人について書くような依頼を受けたので、私の故郷である福岡の店舗から始めさせていただく。東京の人はロイヤルホストを「ロイホ」と略すが、福岡人は「ロイヤル」と称すのはもはや日本中に知られた話であろう。
 そんなロイヤルは天神・西通り沿いのリッチモンドホテル1階にあり、同ホテルの朝食会場としても使われている。くわえて、驚きのビュッフェ形式であり、パンケーキやオニオングラタンスープなどの人気定番メニューのほか、がめ煮や明太子といった九州の味も並ぶ。
 近年の福岡地裁・高裁の取材ではリッチモンドホテルを選び、1階のロイヤルでビュッフェ朝食を食べるのが定番となっている。ただ、まさか未来の自分がロイヤルホストをテーマに「ルポ」を書くことになるとは想定していなかったため、当時、メモを取ることもしていない。撮影していた写真からせめてもの「ルポ」(辞書によれば「現地報告」)をさせてもらうと、前回ロイヤルの朝食ビュッフェを利用したのは今年1月。鳥栖市で両親を殺害した元九州大学の男子学生の控訴審取材のためにリッチモンドホテルに泊まった。ビュッフェは和洋とメニューが揃っており、特にロイヤルホストの和風メニューが多数並んでいる珍しさから、気を緩めると統一感のないチョイスとなる。和風にするか、洋風にするか。前日夜には心を決めておいたほうが良い。決めていたとしても、ビュッフェに気持ちがたかぶり、多少の乱れは生じてしまうことだろう。実際私はこの日、洋風と決めていたがアジの南蛮漬けを皿に載せてしまった。
 あれもこれもと選んだ結果、満腹になってしまうのだが、さらにコーヒーも飲んでおこう、などと、店舗内で無理をする必要はない。出入口に持ち帰り用のコーヒーが備えられているからだ。客室に戻ってゆっくりと準備しながらコーヒーを飲み、そして西鉄バスで六本松に向かう。


撮影・高橋ユキ

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
1974年、福岡県生まれ。フリーライター。