ロイヤルホストで夜まで語りたい・第13回「ここが最高の定位置」(青木さやか)
ここが最高の定位置
青木さやか
西暦2000年。わたしは中野五差路のロイヤルホストにいた。ロイホにいくかパチンコにいくか雀荘にいくか。毎日の3択はどれだって深く考えなければ楽しかった。義務ではない自主的にいっている。思考するな。楽しい。
地元から共に上京した彼氏はある日、多くの電化製品と一緒にアパートから忽然と姿を消した。突発的に出ていってしまったと思ったが、考えてみれば、そんなわけはない。綿密に計画立てていたに違いない。クソが。わたしのいない時間を見計らって出ていくことしかできないクソが。正面切って出てってみろよ。いかないで、とすがるとでも思ったか。その通りだよ。3年暮らしたんだ、それ程度の厄介こなしてからいなくなれよ。あ〜何でわたしはクソみたいなオトコばっかとくっついたり離れたり、すがったりしてんだろう。悔しい、ひとりぼっち、許せない。後悔させてやりたい。火をつけてやろうか。火をつけてやる、火をつけてやる、どこにって、驚け。わたしに火をつけてやる、わたし自身だ、わたし自身を火だるまにして、この街、中野ごと火だるまにしてやる、最後に黒焦げのわたしが五差路に横たわる、プスプスと音を立てて焦げ死ぬんだ。
続きは『ロイヤルホストで夜まで語りたい』をお読みください!
初回限定特典には、一色美奈保さんによる描き下ろしイラストを使用したステッカーつき。書籍限定で藤井隆さんとハリセンボンの近藤春菜さん・箕輪はるかさんによる特別鼎談も収録!詳しくは下記URLをご確認ください。