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李琴峰:連載エッセイ「日本語からの祝福、日本語への祝福」

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台湾出身の芥川賞作家・李琴峰さんによる日本語への思いを綴ったエッセイです。朝日新聞出版のPR誌「一冊の本」で連載中の内容を1カ月遅れで転載します。毎月1日に最新回を公開予定です。
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2024年4月の記事一覧

日本語お上手ですね――李琴峰「日本語からの祝福、日本語への祝福」第23回

日本語お上手ですね――李琴峰「日本語からの祝福、日本語への祝福」第23回

第23回 日本語お上手ですね

 複雑な気持ちにさせられる褒め言葉がある。「日本語お上手ですね」である。複雑な気持ちというか、気分を害する時もある。

 客観的に見て、私は日本語が上手だ。これは間違いなく事実だし、この事実は、使える漢字や語彙の量、文型のバリエーション、または発音の自然さや、産出する文の文法的正確さなどによって定量的に評価できるものである。「日本語お上手ですね」という文は、いわば

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