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鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」

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鈴峯紅也さんの人気シリーズ「警視庁監察官Q」の主人公・小田垣観月の学生時代を描いたスピンオフシリーズです。11月24日より、毎週木曜日に最新回を掲載予定です。
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記事一覧

鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」第17回

十七  けたたましいベルの音がした。  目覚ましだ。  音からするに、最終兵器として購入…

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1日前
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鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」第16回

十六 「で、今夜は何があったの? まあ、言いたくなけりゃ、言わなくていいけど」  美加絵…

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8日前
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鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」第15回

十五  即妙体の自在を得た観月は、すでに吹き流れる風も同じだった。 「さっさと済ませるわ…

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2週間前
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鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」第14回

十四  翌日も、ジュンナは通常通りに出勤してきた。ただ、伊橋敬一とキミカは、ともにこの日…

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3週間前
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鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」第13回

十三  翌週の月曜日になった。二十五日だ。  ついでに言うなら友引になる。松子ではなく、…

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4週間前
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鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」第12回

十二  同じ日の、夜だった。八日目の月が西の空にあった。  この夜、観月はさすがに〈蝶天…

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1か月前
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鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」第11回

十一  真紀たちとの集合場所は、本郷通りの東大赤門前だった。  観月は六分で辿り着いた。 「ごめん。本当にごめん」  赤門の前には、腕組みで仁王立ちの真紀の他に、〈打ち合わせ枠〉一杯の八人がいた。  今回は四年生が四人で三年生が三人、二年生が観月と真紀の二人で、一年生は杉下穂乃果の一人だけだった。  観月を除き、これが今回の、くじ運のいいメンバーだった。  学年と人数が偶然にもシンクロする割合になったが、そもそも一年生の会員は穂乃果一人で、入会したばかりだ。駒場

鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」第10回

十 「ああ。お陽様が気持ちいい。多分」  観月はこの日、〈四海舗〉にいた。件の中庭の、半…

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1か月前
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鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」第9回

九  この夜、観月は新人キャストとして、店で働く者たちの前で挨拶した。  オープンは午後…

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1か月前
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鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」第8回

八 〈銀座スリー〉は、銀座五丁目の並木通り沿いにあった。寿司屋のある場所からなら、約六百…

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2か月前
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鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」第7回

七  仏滅の金曜日になった。天気は少し下り坂のようだ。  空一面を覆う雲は厚く、ときおり…

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2か月前
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鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」第6回

六  東大駒場キャンパス、正式には駒場地区キャンパスのⅠキャンパスは、面積こそ本郷キャン…

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2か月前
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鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」第5回

五 「火は落としたよ。今日も味噌汁は冷めてるさね」  鍋を置き、割烹着姿の竹子は厨房と食…

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3か月前
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鈴峯紅也「警視庁監察官Q ZERO」第2回

二 「失礼ですけど、あなたは?」    観月は条頭、中華あんこ餅の皿から顔を上げた。    条頭は薄く伸ばした柔らかい餅を細長く切り、あんこを包んだ上海の伝統甘味のことをいう。  ここ〈四海舗〉では、五センチほどの長さの条頭が二本一皿で二百五十円だ。甘さと値段がちょうどよく、知る人ぞ知る本郷裏界隈の名物として評判らしい。  観月はちょうど、注文した五皿の条頭を全部食べ終えたところだった。  だから、男に向かって顔を上げた。  これが一皿目や二皿目だったら、全部食べ終