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朝日新聞出版の文芸書

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書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。
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#森絵都

「笑いあり涙あり感動あり!短編集ならではの醍醐味」書評ライターの松井ゆかりさんが、大好評の森絵都さん最新刊『獣の夜』をレビュー!

 森絵都作品の魅力はいくつも列挙できるが、思わず笑ってしまうユーモアというのも間違いなく筆頭にカウントされる要素のひとつだ。本書でそれがとりわけ顕著に感じられるのは、表題作であろうか。主人公の紗弓が夜の約束に備えて仕事を片づけていたところに、一本の電話が入った。予期せぬ頼みごとをしてきたのは、大学時代に同じサークルだった泰介だ。夜の約束というのはやはりサークル仲間で現在は泰介の妻となっている美也のサプライズ誕生会のことなのだが、泰介は自分が彼女をパーティー会場に連れて行くはず

「容赦はないが愛はある」とは一体どういうことなのか? 話題の作家・阿部暁子さんが、作品が大好きという森絵都さん最新刊『獣の夜』について綴ります

 私は森絵都さんほど、やさしい物語を書く人はいないと思っている。ただ、そのやさしさは、甘さや手加減とは無縁のものだ。  本作には7編の短編が収録されている。「雨の中で踊る」は、コロナ禍のさなかにリフレッシュ休暇を取らされた男性が「フットマッサージでも行ってきたら」と妻に送り出される(追い出される)ところから始まり、海パンと海と“セッション”によってこんな場所まで到達するのかと物語の怒涛の広がりに圧倒される。「Dahlia」はわずか5ページのディストピア小説、そこに凝縮された

【書店員さんからの感想続々!】森絵都『獣の夜』

■『獣の夜』書店員さん感想集 とてもよかったです! どのお話も希望に溢れていて。彼ら(登場人物たちが)がこの先どんな選択をしても、明るい未来を生きる予感がして、幸せな気持ちになります。表題作『獣の夜』はちょっと他の作品と違う、まさに肉々しい話でした。がニヤリとしながら彼女たちを応援しました。 コロナ禍の真っ最中にこの作品群に触れていたら!今とは違う感情が沸いていたかも。読むタイミングで思うことが違う作品たちだと感じました。全部好きな作品たちで一番が選べません・・・! ちょっ

※終了【期間限定 全文公開】森絵都さん待望の新刊『獣の夜』発売記念!収録短編から「太陽」を期間限定で特別全文公開!

※期間限定の試し読みは終了しました ■書店員さんの感想も! ■森絵都『獣の夜』(朝日新聞出版) ■書籍データ

2023年に朝日新聞出版から発売予定の文芸書単行本情報を一挙に解禁します!

■2023年1月10日発売予定『植物少女』朝比奈秋  美桜が生まれた時からずっと母は植物状態でベッドに寝たきりだった。小学生の頃も大人になっても母に会いに病室へ行く。動いている母の姿は想像ができなかった。美桜の成長を通して、親子の関係性も変化していき──現役医師でもある著者が唯一無二の母と娘のあり方を描く。 ■2023年3月発売予定『また会う日まで』池澤夏樹  海軍軍人、天文学者、キリスト教徒として生きた秋吉利雄。3つの資質はどのように混じり合い、たたかったのでしょうか

冬号は創作が3本と充実、豪華対談も実現。長期連載2本が堂々完結!<「小説TRIPPER」2022年冬季号ラインナップ紹介>

◆創作江國香織 「川のある街Ⅱ」  川の流れる小さな地方の市街地。海に面したその一帯を縄張りにするカラスたち一羽一羽の生態と、彼らが生息している同じ土地を舞台に、先祖代々暮らすもの、地縁から離れようとするもの、旅で訪れたもの、そして子どもたち――街にかかわる人々とカラスたちの姿を同じ質量で描く野心作。前作「川のある街」につづくシリーズ第二作。 王谷晶 「君の六月は凍る」  7月の初めにわたしはその事実を知り、30年会っていない君のことを、そして君が住み続け、わたしが離れ

※終了※【期間限定 試し読み】森絵都『カザアナ』第1章から第3章公開!

※期間限定での試し読みは終了しました。たくさんの方にお読みいただき、ありがとうございました! 続きが気になる方は、ぜひ文庫版でお楽しみください ■カザアナ 森絵都 目次 【主な登場人物】 ※期間限定の試し読みは終了しました。読んでくださったみなさま、ありがとうございました。この続きは朝日文庫でお楽しみください。

作家・伊坂幸太郎「森絵都さんの『カザアナ』が面白すぎる」

『カザアナ』が面白すぎる/伊坂幸太郎 『カザアナ』が面白すぎる。最近、おススメの本を聞かれるたびに(聞かれなくても)、そう言っています。  たまたまこの本を書店で見かけたのですが、作者の森絵都さんはリアリズム寄りというのか、青春小説や人間ドラマを描く人という印象がありましたので、帯に書かれている「異能の庭師たち」という言葉が気になりました。「監視社会化の進む」ともあるため、「森絵都さんってこういう作風だったっけ?」と内心、首をひねり、「異能」とは言っても、リアリズムの中

作家・森絵都さんの想像力が大爆発した傑作『カザアナ』 本作に込めた思いとは

■「過去と未来を渡す風」森絵都  ときどき、現実の世界に架空の何かを引っぱりこみたくなる。  たとえば、『カラフル』という小説に胡散臭い天使を登場させたように。『ラン』という小説であの世とこの世を行き来する自転車をモチーフにしたように。ファンタジーの世界そのものを描くのではなく、あくまで舞台は現実の人間社会に据え、そこにファンタジーのかけらを紛れこませる。なぜそのような設定に心惹かれるのか。その理由も今ではわかっている。一粒で風味を一変させるスパイスのように、異質な何かが