#森絵都
「笑いあり涙あり感動あり!短編集ならではの醍醐味」書評ライターの松井ゆかりさんが、大好評の森絵都さん最新刊『獣の夜』をレビュー!
森絵都作品の魅力はいくつも列挙できるが、思わず笑ってしまうユーモアというのも間違いなく筆頭にカウントされる要素のひとつだ。本書でそれがとりわけ顕著に感じられるのは、表題作であろうか。主人公の紗弓が夜の約束に備えて仕事を片づけていたところに、一本の電話が入った。予期せぬ頼みごとをしてきたのは、大学時代に同じサークルだった泰介だ。夜の約束というのはやはりサークル仲間で現在は泰介の妻となっている美也のサプライズ誕生会のことなのだが、泰介は自分が彼女をパーティー会場に連れて行くはず
「容赦はないが愛はある」とは一体どういうことなのか? 話題の作家・阿部暁子さんが、作品が大好きという森絵都さん最新刊『獣の夜』について綴ります
私は森絵都さんほど、やさしい物語を書く人はいないと思っている。ただ、そのやさしさは、甘さや手加減とは無縁のものだ。 本作には7編の短編が収録されている。「雨の中で踊る」は、コロナ禍のさなかにリフレッシュ休暇を取らされた男性が「フットマッサージでも行ってきたら」と妻に送り出される(追い出される)ところから始まり、海パンと海と“セッション”によってこんな場所まで到達するのかと物語の怒涛の広がりに圧倒される。「Dahlia」はわずか5ページのディストピア小説、そこに凝縮された