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朝日新聞出版の文芸書

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書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。
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#朝日文庫

【累計40万部突破!】群ようこさんの大人気「生活」シリーズ最新文庫『たべる生活』が発売

■最新文庫『たべる生活』  とにかく体は、たべるものでできている――。料理はどちらかというと嫌いだと語る群さんが、自分の身体を一番心地よい状態に保てるよう、〈たべること〉にとことん向き合った「食」エッセイ。「自分で御飯を作るということは、“米と味噌さえ家にあれば大丈夫”という気持ちの根っこができること」。 ■やたらとしんどいときこそ、ぬるーく。シリーズ第1作『ぬるい生活』  年齢を重ねるにつれ、体調不良、心の不調など、様々な問題は出てくるもの。そんな“ままならなくなって

大矢博子さんが「夫婦」をテーマに編んだ名作短編集『朝日文庫時代小説アンソロジー めおと』文庫解説を特別公開!

 時代小説の醍醐味は、現代とは異なる文明、異なる社会システム、異なる価値観の中で暮らす人々が描かれているという点にある。  中でも結婚の制度は時代によって大きく変わってきた。たとえば江戸時代をとってみても、結婚のシステムやそこに求められる夫婦像も、民法の内容に至るまで、今とはかなり異なっている。  本書では、そんな異なる社会に生きる「夫婦」に焦点を当てて、6作をセレクトした。武家の夫婦ものと町人の夫婦ものが3作ずつ。新婚から歳月を重ねた老夫婦まで、明るく微笑ましい夫婦から

NHK大河「光る君へ」をより深く楽しめる一冊!永井路子著『この世をば 藤原道長と平安王朝の時代 上・下』澤田瞳子さんによる文庫解説を特別公開!

 英雄を一点非の打ちどころのない人物として描くことは、非常にたやすい。なぜなら英雄とは凡人の予想もつかぬ人間であるがゆえに英雄たりえ、突飛な行動も非論理的な言説も「英雄」という設定の前には、すべて許されてしまうからだ。  難しいのはむしろ、英雄をただの平凡な生身の人間として描くこと。超人であれば遭わぬであろう悩み苦しみ、ただ人であるがゆえの苦悶……生身の人間を余さず文章を以て捉えるには、残酷なまでにひたむきな観察と精緻な描写が必須となる。  本作において永井路子は、平安中

「本、とりわけ歴史小説の未来について」 火坂雅志・伊東潤著『北条五代 上・下』刊行エッセイで伊東潤氏がその想いを熱く綴る!

 本が売れなくなったと言われて久しいが、1996~97年をピークにして、紙の本の売り上げは減り続けている。2020年頃のコロナ禍の巣ごもり需要でいったん下げ止まったものの、微減状態は続いている。とくに情報性や緊急性の低い文芸本の需要は、依然として下げ止まっていない。  考えてみれば、周囲を取り巻くすべてが便利になった社会で、文字を読むという行為だけは文字ができた氷河期から変わらず、電子書籍が登場しても、その手間が改善されたわけではない。  最近はAudibleと呼ばれる、

「久米宏は罪深い」の真意とは? 久米氏初の自叙伝『久米宏です。ニュースステーションはザ・ベストテンだった』をライター・テレビっ子の戸部田誠(てれびのスキマ)さんがレビュー!

 久米宏は罪深い――。  そう僕は思っていた。なぜならテレビのニュースを「わかりやすいもの」に変えてしまったからだ。それまでニュース番組は視聴率競争とは無縁のものだった。そもそも数字が獲れる発想はなかったのだ。そんな中、1985年に始まった久米宏がキャスターを務める『ニュースステーション』は、その「面白さ」で高視聴率を獲得。他のニュース番組も視聴率獲得を目指すようになった。  本作は、「『土曜ワイドラジオTOKYO』『料理天国』『ぴったしカン・カン』『ザ・ベストテン』『お

【今年も開催!朝日文庫の秋の時代小説フェア】ラインナップを一挙公開!

■朝井まかて『グッドバイ』  長崎の油商・大浦屋の女あるじ、お希以──のちの大浦慶。黒船来航騒ぎで世情が揺れる中、無鉄砲にも異国との茶葉交易に乗り出し、一度は巨富を築くが、その先に大きな陥穽が待ち受けていた──。実在の商人・大浦慶の生涯を円熟の名手が描いた、傑作歴史小説。 ■伊東潤『江戸を造った男』  明暦の大火の折に材木占買で財を成した商人・七兵衛(河村瑞賢)は、海運航路整備・治水・潅漑・鉱山採掘などの幕府事業を手がけ、その知恵と胆力で難題を解決していく。新井白石をし

呉座勇一氏が読んだ火坂雅志・伊東潤著『北条五代 上・下』/文庫解説を特別公開!

 戦国時代関東における武田・上杉・北条の三つ巴の戦いは、俗に「戦国関東三国志」などと呼ばれる。だが、川中島の戦いで知られる武田信玄・上杉謙信のライバル関係に比して、北条氏(鎌倉時代の北条氏と区別するため、学界では後北条氏・小田原北条氏と呼ぶことが多い)の存在感は必ずしも大きくない。北条氏を主人公としたNHK大河ドラマはいまだに制作されていない。  戦国時代屈指の有力大名でありながら、北条氏はいささか地味な存在である。けれども親子兄弟骨肉の争いで弱体化したり、優れた後継者に恵

1996年刊行の情報編集術のバイブル、松岡正剛著『知の編集工学 増補版』/アップデートにあたり執筆した「序文」を特別公開!

あのころの構想と最近の編集工学 生成AI時代の反撃 この本の単行本初版は1996年7月に刊行された。「情報は、ひとりでいられない。」というサブタイトルで、帯には「自分も世界も編集できる――インターネット時代の〈考える技術〉初公開」とある。  1996年という年は、のちに「失われた10年」と揶揄された時期の半ばにあたっている。世界が宙吊りになっていくだろうことがバレた時期だ。ベルリンの壁が崩壊し、第1次文明戦争ともいうべき湾岸戦争がおこり、日本はバブルがはじけてかなり空疎に

リアルな心理描写と驚愕のラストに震撼する『悪い女 藤堂玲花、仮面の日々』/大矢博子氏による解説を期間限定で特別掲載!

 本書は2014年に刊行された『ダナスの幻影』を大幅加筆修正のうえ改題・文庫化したものである。ノンシリーズとしてはデビュー作以来の2作目。近年の吉川英梨の活躍に慣れた読者からすると異色作と言ってもいいこの作品を、ようやく文庫でお届けできることを嬉しく思う。  吉川英梨は2008年、第3回日本ラブストーリー大賞エンタテインメント特別賞を受賞した『私の結婚に関する予言38』(宝島社文庫)でデビュー。ブレイクのきっかけとなったのは2011年、デビュー2作目として出された『アゲハ 

「この作品は、蘇生と題された喪失の物語だ」俳優・中嶋朋子さんによる、小川洋子著『貴婦人Aの蘇生 新装版』巻末エッセイを特別公開

喪失と再生  20代の後半だったろうか、小川洋子さんの「薬指の標本」「まぶた」といった作品に次々出会い、えもいわれぬやすらかさを覚え喜びに震えた。手渡されたのは、異なるものたちの、ささやかな声に充ちる世界。そこで私は深いやすらぎを得て、初めて呼吸することが叶ったような感覚になった。胸のうち、無意識に抱えていた言語化できない違和感、社会や常識に与えられた物差しでは、どうしてもはかりようのない、心の中の襞。その微細な凹凸を、丁寧に、その襞の在りようのまま、寸分違わぬ正確さで読み

「恋せぬふたり」の脚本家・吉田恵里香さんが、中村航さん最新文庫『サバティカル』を通して向き合えたもの

「分かった気」になっていることが多すぎる。  他人のことも、自分のことも。素直に分からないと言えずに、つい「分かった気」になって、思考を停止させ受け流している。だって毎日の生活があって、自分や家族を養っていかなくてはならないから。そんな風に忙しい日々を理由にして、大半の人間が「分かった気」になっている自分を放置してしまう。では忙しいという言い訳を失った時、我々は「分かった気」になっていることと、どれだけ向き合えるのだろうか。 『サバティカル』の主人公・梶は自分が沢山作って

関ヶ原は家康と三成だけの戦いではない! 安部龍太郎著『関ヶ原連判状』末國善己氏による書評を特別公開

 壬申の乱(672年)後、激戦地の近くに作られた不破関は、鈴鹿関、愛発関と共に古代の三関の一つに数えられている。交通の要衝にあった不破関の近郊は、南北朝時代、京を目指す南朝とそれを阻止する室町幕府が戦った青野原の戦い(1338年)、豊臣秀吉の没後、徳川家康(東軍)と石田三成(西軍)が天下の覇権をかけて争った関ヶ原の戦い(1600年)と何度も有名な合戦の舞台になっている。  家康と三成が激突した“天下分け目”の一戦は、9月15日に始まり僅か半日で東軍が勝利した。ただ激戦地にな

【司馬遼太郎 生誕100年】書店フェア続々開催!! 開催書店一覧とNHKドキュメンタリー「新 街道をゆく」再放送情報など一挙公開

フェア開催予定書店一覧旭屋書店(全店) 期間:開催中~8月末まで予定 開催店舗:なんばCITY店/ららぽーと甲子園店/イオンモール奈良登美ヶ丘店/新越谷店/志木店/アリオ上尾店/アトレヴィ大塚店/梅田地下街店/船橋店/イオンモール浦和店/池袋店 公式HP: 〜未来につなぐ〜 生誕100周年 司馬遼太郎展 - 旭屋書店 公式サイト 紀伊國屋書店新宿本店(2階) 期間:開催中~8月末まで予定 公式HP: 紀伊國屋書店新宿本店公式URL 「司馬遼太郎 生誕100年」フェア開

緻密に構築されたトリックに挑む『密室ミステリーアンソロジー 密室大全』/編者の千街晶之氏による解説を期間限定で特別掲載!

 遥か昔から、密室トリックのネタはとっくに切れたと言われつつも、実際には密室トリックが枯渇したことなどなく、今でも多くのミステリー作家が新たな密室を生み出し続けている。何故、ひとはこれほどまでに密室に魅了されているのか――。 『密室ミステリーアンソロジー 密室大全』(朝日文庫)は、タイトルからもわかる通り「密室」がテーマ。青柳碧人、大山誠一郎、恩田陸、貴志祐介、中山七里、東川篤哉、麻耶雄嵩、若竹七海(敬称略)の実力派ミステリー作家8名の作品を収録しています。  本作の刊行