#時代小説
【いまこそ読みたい!不朽の名作】吉川英治文学賞受賞の傑作短編集、待望の復刊/北原亞以子著『夜の明けるまで 深川澪通り木戸番小屋』末國善己さんによる文庫解説を公開
江戸の市中には、警備を容易にするため町の境界に木戸があった。木戸は夜四つ(午後10時頃)に閉じられ、それ以降に木戸を抜けるには、(町医者と産婆を除いて)木戸番がチェックをした後に、木戸の横に作られた潜戸を通っていたという。 犯罪が起こると、木戸を閉じて捕物に協力する木戸番は、町を火事と犯罪から守っていたが、少ない予算で運営されていたため、屈強な若者ではなく安い給料で働いてくれる老夫婦が雇われることが多かった。給料が少ない代わりに、木戸番は番小屋での商売が認められていて、
徳川家康と毛利輝元の視点で、東西両軍の虚々実々の駆け引きをリアルに描く、伊東潤著『天下大乱』/文芸評論家・高橋敏夫さんによる書評を特別公開!
■「静謐(平和)」を求める常識転倒の巨篇 すぐれた歴史時代小説の醍醐味は、なんといってもまず人と出来事をめぐる常識の転倒にある。 5年、50年ではない。150年、ときには500年をこえる時間の中で形成され現在にいたる、部厚く堅固な常識がゆさぶられ、そこから新たな人と出来事が出現する。 伊東潤の最新刊『天下大乱』は、「天下分け目の決戦」とみなされてきた関ヶ原の戦いをめぐる、いくつもの常識転倒の物語にして、「天下の静謐(平和)」への人びとの希求が執拗なまでに束ねられた大作
歴史好きにも難解な平安末期を伊東潤氏が“平清盛”を通して描く『平清盛と平家政権』。歴史ライター・西股総生氏による文庫解説を特別公開
伊東潤氏は、恰幅のよい作家である。 いや、何もルックスのことを言っているのではない。氏の小説は、古代から近世に至るさまざまな時代に題材を取り、また、本書のような史論や紀行物も多い。書くものの幅が広いのだ。 こうした「幅の広さ」を支えているのが、旺盛なリサーチ力であり、何より氏のあくなき好奇心であることは、作品を読めば直ちに理解されるところであろう。 また、一般には知られていないような人物や、細かな事件を掘り起こして題材とした作品もあるが、主役級の有名な人物を、正面から