【朝比奈秋著『私の盲端』書評】現役医師によるデビュー作
「食」と「熱」の祝祭
就活を控えた21歳の大学生・比奈本涼子は、自分の身体にこもる熱をもてあまし気味だ。大学で女友だちと過ごす退屈な時間より、長くアルバイトをしている料理店「橙」で過ごす時間にどうやら充実したものを感じている。
そんな涼子を、突然の病が見舞う。アルバイト先での勤務中に突然、大量下血して倒れたのだ。幸い命はとりとめたが、大腸の一部を切除したので、再手術までのあいだ人工肛門で暮らすことになる。腸壁を裏返して医師が丁寧に縫い付けてくれた、薔薇のような人工肛門