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朝日新聞出版の文芸書

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書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。
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#文庫解説

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」「どうする家康」「光る君へ」の女性キャラを網羅したゴージャスな歴史エッセイ『歴史をさわがせた女たち』の細谷正充氏による文庫解説を特別公開!

 今年(2022年)のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は、源平合戦から鎌倉幕府の成立、そして幕府内の闘争を描いている。三谷幸喜の脚本は秀逸であり、鎌倉幕府の複雑な人間関係を分かりやすく見せながら、北条義時を始めとする人々の魅力を表現。大きな人気を獲得した。ドラマによって、この時代の面白さを知り、歴史書や歴史小説を購入した人も多いだろう。私も毎年、ドラマと関係ある本を積み上げてしまう。そして気づくのだ、また、永井路子の『歴史をさわがせた女たち 日本篇』が、積み上げた本の中に入

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「こんな女の人がいたのか!」幕末の女商人・大浦慶の生涯を描いた、朝井まかて『グッドバイ』/文芸評論家・斎藤美奈子さんの文庫解説を特別公開!

「こんな女の人がいたのか!」と思わせる、胸のすくような一冊――幕末の女商人・大浦慶伝  図ったわけではないと思いますが、2010年代ころから、歴史に埋もれた有名無名の女性たちの業績を発掘し、再評価する動きが世界中で起きています。  日本でも翻訳書が出ているレイチェル・イグノトフスキー『世界を変えた50人の女性科学者たち』(野中モモ訳)ほか「50人の女性」シリーズ(創元社)や、ケイト・バンクハースト『すてきで偉大な女性たちが世界を変えた』(田元明日菜訳)ほか「すてきで偉大な女

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葉室麟さん最後の長編歴史小説『星と龍』が待望の文庫化! 東京大学史料編纂所・本郷和人教授による文庫版解説を特別公開

 戦前、楠木正成と後醍醐天皇は、日本史で五指に入るヒーローであった。とくに楠木正成は水戸学がその生涯を賞揚したから、水戸学に強い影響を受けた幕末の志士、明治の元勲たちは「われ楠木正成たらん」と願った。実証的な研究が不足していた時代であるからかえって、1人1人が「おれの楠木正成」像を作り上げ、行動の指針としたのである。  それでも明治初年には、議論があり得た。福沢諭吉は『学問のすゝめ』で一身独立して一国独立す、国民1人1人が学問して覚醒し、それを基礎として国家が自立することこ

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北村薫さんによる感動の傑作長編『ひとがた流し』が文庫新装版に!『日日是好日』の森下典子さんによる文庫解説を特別公開

〈あなたがどこかで生きているということがずっと私の支えだった――。〉 アナウンサーとして活躍する千波、受験を控えた娘を持つ牧子、あらたなパートナーと新しい生活を歩んできた美々。三人は進む道を違えながらも、人生の大きな危機に直面したときに手を差し伸べ支えあい、四十代になった。 二度とない永遠 なんと精緻な、そして壮大な物語なのだろう……。 『ひとがた流し』は、私が初めて読んだ北村薫さんの小説である。  ストーリーは所々で枝分かれし、さまざまな登場人物の人生を物語り、それぞれの

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歴史好きにも難解な平安末期を伊東潤氏が“平清盛”を通して描く『平清盛と平家政権』。歴史ライター・西股総生氏による文庫解説を特別公開

 伊東潤氏は、恰幅のよい作家である。  いや、何もルックスのことを言っているのではない。氏の小説は、古代から近世に至るさまざまな時代に題材を取り、また、本書のような史論や紀行物も多い。書くものの幅が広いのだ。  こうした「幅の広さ」を支えているのが、旺盛なリサーチ力であり、何より氏のあくなき好奇心であることは、作品を読めば直ちに理解されるところであろう。  また、一般には知られていないような人物や、細かな事件を掘り起こして題材とした作品もあるが、主役級の有名な人物を、正面から

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「せり場」で売られた少女たち 故・森崎和江の代表作『からゆきさん』本当の衝撃【文庫解説:文芸評論家・斎藤美奈子】

「からゆきさん」。漢字で書けば「唐行きさん」。そんな人たちがいたことを、この本ではじめて知った方もいるでしょう。 「からゆきさん」とは、もともとは江戸時代の末期から、明治、大正、昭和のはじめくらいまで、海をわたって外国(唐天竺)に働きにいく人を指す九州西部・北部の言葉でした(唐天竺とは中国とインドを意味しますが、遠い外国の別名でもあったので、「外国に行く」ことを「唐行き」と呼んだのです)。ですが、やがてそれは海外に売られた日本女性の総称に転じます。  からゆきさんの出身地

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梨木香歩が描く痛みから始まる“物語”『椿宿の辺りに』皮膚科学研究者・傳田光洋氏による文庫巻末エッセイを特別公開!

痛みから始まる「物語」の発見  痛みは孤独だ。  あるいは、痛みは自分が孤独であることに気づくきっかけになる。そして、それは自分だけの物語を見つける道を示す。  現代社会では会社員、公務員はもちろん、フリーランスの人でも、何かの組織に属したり関わったりしている場合が多い。そんなぼくたちの日常生活は、組織やマスメディア、インターネットなどが提供する「常識」に支えられている。その「常識」に逆らってばかりでは生活に不便が生じるし、むしろその「常識」に全てを委ねていた方が、大抵、楽

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読まなきゃわからない高山羽根子の不思議な世界 『オブジェクタム/如何様』佐々木敦氏による文庫解説を特別公開!

 本書は、2018年刊行の『オブジェクタム』、2019年刊行の『如何様』の2冊の作品集を合本し、更にエッセイ「ホテル・マニラの熱と髪」を加えた文庫版である。高山は2009年に「うどん キツネつきの」で第1回創元SF短編賞を受賞、同名の短編集が2014年に刊行されており、『オブジェクタム』は2冊目の単著だった。その後、『居た場所』(2019年)と『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』(同)の2冊を挟んで『如何様』が刊行された。そして2020年に「首里の馬」で第163回芥川龍之介

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「こうあるべき」をぶっ飛ばす!柚木麻子らしさあふれるエンタメ小説『マジカルグランマ』宇垣美里さんによる文庫解説を特別公開!

 私の記憶の中の祖母はいつだってゴージャスだ。海外で仕立てたオートクチュールのスーツを身に纏い、お気に入りのネックレスはゴールドのスカラベ(黄金虫、というかフンコロガシ)。その年代にしてはスラリと背が高く、しゃなりしゃなりと歩くたびに黒々としたボリュームのあるショートカットがふわふわとたなびいていた。いつだって祖父のことが一番大好きで、「パパぁ~」と甘えた声で逐一相談する姿は私よりよっぽど少女然としていて、呆れを通り越して笑ってしまうくらい可愛らしかった。私が父の持っていたパ

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宇江佐真理が描いた“男装のおんな通詞”激動の生涯『お柳、一途 アラミスと呼ばれた女』高橋敏夫氏による文庫解説を公開!

激動する時代に、人の思いと生き方の一途さを問う 「お柳、一途」とは、なんともすばらしいタイトルだ。  主人公であるお柳(後に通詞の田所柳太郎で愛称アラミス)のつよく変わらぬ思いと、ひたむきな生き方をみごとに凝縮した言葉なのはもちろんだが、それにとどまらない。  お柳が「一途」なら、お柳と思いを交わすもう一人の主人公、榎本釜次郎(榎本武揚)の思いと生き方も一途である。お柳の父でオランダ通詞(通訳)の平兵衛や、お柳の友でキリシタンのお玉も一途である。  また、釜次郎をとり

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江戸市井小説の名手・宇江佐真理が“堀”に思いを託した短編集『おはぐろとんぼ』の大矢博子氏による文庫解説を特別公開!

堀でつながる家族の情   本書『おはぐろとんぼ』は2009年に実業之日本社から刊行された短編集である。実業之日本社文庫(2011年刊)を経て、この度、装いも新たに朝日文庫からあらためて読者の皆様にお届けできる運びとなった。  2009年といえば、看板シリーズである「髪結い伊三次捕物余話」シリーズ(文春文庫)を継続する傍ら4冊もの新刊を上梓した年だ。1995年のデビューから丸10年以上が過ぎ、宇江佐真理が円熟期を迎えて精力的に執筆していた様子が窺える。  宇江佐真理は北海

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波乱の人生を糧に……実社会から学んだ山本一力だからこそ書けた傑作 『江戸人情短編傑作選 端午のとうふ』末國善己氏による文庫解説を公開!

 現役の時代小説作家の中で、市井人情ものの第一人者は山本一力である。と断じても異論は出ないのではないだろうか。  現在の活躍を知る読者は、著者が順調な作家人生を歩んできたと考えているかもしれない。ただ著者は、49歳だった1997年に「蒼龍」で第77回オール讀物新人賞を受賞するも同作はなかなか単行本に収録されず(中編集『蒼龍』の刊行は2002年)、デビュー作『損料屋喜八郎始末控え』が刊行されたのは新人賞受賞から3年後の2000年だった。この間、著者は何度も担当編集者に書き直し

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