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川添愛:連載エッセイ「パンチラインの言語学」

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文学、映画、アニメ、漫画……でひときわ印象に残る「名台詞=パンチライン」。この台詞が心に引っかかる背景には、言語学的な理由があるのかもしれない。ひとつの台詞を引用し、そこに隠れた…
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#シャア

偉い人にはそれがわからんのです(よ)(『機動戦士ガンダム』)――川添愛「パンチラインの言語学」第6回

 前回の予告どおり、今回も『機動戦士ガンダム』を取り上げる。前回はニュータイプの話でお茶を濁してしまい、言語学要素がいつにも増して薄めだった自覚はある。できれば今回もアムロとララァの謎会話のことや、ララァに「大佐、どいてください、邪魔です!」と言われてしまった可哀想なシャアの話とかをしたいものだが、そこをぐっとこらえて、もうちょっと言語学寄りに『ガンダム』のセリフを眺めてみたいと思う。  この作品の特徴の一つとして、一部のキャラのセリフの「芝居がかった感じ」が挙げられる。た

「あの鳥のこと、好きだったのかい?」(『機動戦士ガンダム』)――川添愛「パンチラインの言語学」第5回

 今回はアニメ『機動戦士ガンダム』を取り上げる。なぜだ。坊やだからさ……ではなくて、前回の連載でなにげなく「お子様ゆえのあやまち」というフレーズを書いたのが直接の理由だ。私の頭の中にあったのは、本作のメインキャラの一人「赤い彗星のシャア」のセリフ、「認めたくないものだな、自分自身の若さゆえのあやまちというものを」なのだが、よく考えたらシャアがこれをどんな場面で言ったのかを完全に忘れていた。それで確認すべく第1話から見始めたら、頭がすっかり「ガンダム脳」になってしまった。  同