校正者さんは欠かせない存在【クリキャベ編集日記-その7- 編集者K・校正編】
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校正者さんは欠かせない存在
年が明けた2024年1月。
改稿を終え、入稿し、ついに初校ゲラになった『クリキャベ』を、校正者さんのもとへお届けしました。
そして、校正を終え、
校正者さんによって一字一字チェックしてもらったゲラを
著者のせやまさんにお届けします。
編集者は、著者に渡すだけ……
のように見えますが、校正者さんからゲラが戻った後、著者に渡すまでに、実はこんなことをしています。
① 校正者さんの指摘を確認する。
※校正者さんは、編集者がかなりしっかり読んでいたつもりでも、気が付けていなかった細かな点を見つけてくださいます。
② 編集者の意見も加える。
※校正者さんの指摘を読んで、編集者から補足があれば加えます。また、改めて確認して疑問に思った点なども提案と一緒に書き込みます。
校正者さんから戻った初校ゲラを確認してみると、
本来は私が気づけたらよかったのになという指摘もありました。
例えば……
作中の「お姉ちゃん」の呼び方について。
主人公の津麦が家事代行に訪れる織野家は、
朔也、真子、樹子、慶吾、昌、凛
の6人家族。
慶吾や昌、凛からみたら、お姉ちゃんは真子と樹子の2人ですが、
初校までは、2人を区別することなく、「お姉ちゃん」としていました。
でも、お姉ちゃんが2人いたら、呼び方を区別することもよくありますよね。
そこで、「真子姉ちゃん」「樹子姉ちゃん」としますか? と校正者さんからご指摘をいただきました。
このように、私が気にかけられなかった点があり、
本造りにおいて、校正者さんは本当に欠かせない存在だなと思います。
『クリキャベ』で重要な、お料理のシーンも、食材や調理器具はこれでOKか、と一つ一つ確認いただいています。
調理手順についても!
炒めっぱなしになったままの食材はないか、など細部まで確認していただき、その丁寧な作業には驚かされます。
校正は作品をよりよいものにするために必要で、ありがたいものですが、
著者にとっては、自分の文章の分かりにくい表現や整合性を指摘されることになります。
きっと、嬉しいものばかりではないからこそ、できるだけストレスがなく、著者に校正をしていただけるように、編集者はしっかりと指摘内容を確認したり、資料をまとめたりして、準備をしなければなりません。
(これは先輩から教わったことです)
ついに校了へ
ー校正ゲラのお渡しから校了までー
せやまさんにとって、はじめての校正だったので、
「指摘を全て採用して、修正しなければならない」
と思ってしまわないかな……と思い、
「全てを修正する必要はないです」ということを
しっかりお伝えして初校をお渡ししました。
初校ゲラのお戻しは、短い時間ですが、2週間ほどでお願いしました。
締め切りの日
せやまさんから戻って来た初校ゲラを確認し、
1つ1つの指摘に丁寧に向き合って、
この指摘は○○の理由で修正しません、と意見を書いてくださったゲラを見て、
なんて頼もしい方なんだと思いました。
本当に丁寧な校正でした。
校正は、再校へと続きました。
再校では、初校でしっかりと修正がされたからこそ、さらに鋭い指摘が多くあります。
例えば、登場人物一人ひとりの口調を統一していったり……。
その鋭い指摘に臆せず、
最後まで丁寧に校正をしていただけました。
(また、初校で指摘された箇所を再び考え直していただけたのかなと思える部分もありました! 校正でも、改稿時の丁寧さそのまま!という印象を受けました)
最後は、
再校を反映した「念校」をさらに校正者さんに読んでいただき、
調整をして……無事校了となりました!
(せやまさん、本当にお疲れ様でした!)
編集者Kの校正編(完)
コラム
ータイトル決めの裏側ー
改題の可能性??
「タイトルはこのままでいいですか」
時は遡ること、4回目の打ち合わせの最中。
せやまさんからこんな質問をされました。
正直なところ意外な質問でした。
なぜなら、私自身はこのタイトルにとても惹かれていて、「改題」という考えがなかったからです。
「クリームイエロー」「海」「春キャベツ」「家」
どれも誰もが知っている単語だけれど、
普段はこの並びで見ることはないため想像が膨らみ、
作品通りのあたたかさも感じるタイトルです。
せやまさんに改題を考えた理由を伺ってみると、
・内容がストレートには分かりづらいタイトルな気がするがそれで良いのか?
・「クリームイエロー」より「黄色」のほうが、誰でもすぐにイメージが思いうかぶのではないか?
ということでした。
分かりづらさについては、心配ないと思いました。
その部分が、読者の想像力を働かせ、ワクワクさせてくれるところでもあるし、きっと、書籍の形になれば、分かりづらい部分は帯やカバーで補えると考えたからです。
しかし、
「クリームイエロー」については、よく分からず……。
この物語の主人公・津麦が、家事代行の仕事で訪れる織野家は、
シングルファーザーの朔也が5人の子どもを育てている家庭。
例えば、多くの人が
「クリームイエロー」を女性的だと感じるようなら、
家事に苦しむのは女性だというイメージを与えてしまわないか。
この作品は、男性の読者にも届けたい。だから、絶対それは避けるべき。
打ち合わせを終えて、その日は疑問を抱えたまま社に戻りました。
いろいろと意見を聞いてみる
分からないときは聞いてみる!
新人のうちは、たくさん質問できるのが特権!
そう思い、いろいろな人に意見を伺うことにしました。
①
まずは、いつも頼りにさせていただいている先輩編集者のYさんに聞いてみる。
(ふむふむ。せやまさんに改題の案をいただこう……。)
②
男性の視点も欲しいので、社内の男性編集者にも聞いてみる。
(やはりそうか……。編集者にはこのタイトルの受けは悪くない!)
③
せっかくなので私と同じ世代の人の意見も聞こうと思い、
「クリームイエローって色、言葉は女性的だと思う? 男性的だと思う? どちらでもない??」
と、友だちにLINEで送信してみる。
(半分くらいがクリームイエロー=女性的の意見……! どちらでもないの意見もあるなぁ)
④
最後には、ChatGPTにも聞いてみた。
(参考になるけれど、これを瞬時にこたえるChatGPT、恐ろしい……。)
いろいろ意見を聞いて分かったことは、
「クリームイエロー」は、
極端に、性別に関連づけられる色、言葉ではないけれど、
男性的と考える人はいない一方で、女性的ととらえる人はいるということ。
その前提で、
せやまさんからいただいた、他の改題案とも比較し……
やはり――、
『クリームイエローの海と春キャベツのある家』
が作品に合っていると私は考えました。
調べた結果、
女性に向けた作品ととらえられやすい部分は確かに若干ありますが、
懸念していたほどではなく、
あたたかさとインパクトどちらも兼ね備えている点で、
作品にぴったりのタイトルだと思いました。
せやまさんから「タイトルはこのままでいいですか」と聞かれなけば、
こんなにしっかりと周りの人の意見を聞くことはなかったと思います。
どんな疑問も、早い段階で、しっかりと考えてぶつけてきてくださる!
そのことを、とてもありがたく感じました。
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最後までお読みいただきありがとうございます!
次回その8は、せやま南天さんによる編集日記、「校正編」です。
発売まであと、2週間半となりました!
次回で、書籍完成までの裏側をお見せする日記は最後になります。
お楽しみに!
4月5日発売予定『クリームイエローの海と春キャベツのある家』
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予約もはじまっています! どうぞよろしくお願いいたします。
書籍編集部K