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波乱の人生を糧に……実社会から学んだ山本一力だからこそ書けた傑作 『江戸人情短編傑作選 端午のとうふ』末國善己氏による文庫解説を公開!
現役の時代小説作家の中で、市井人情ものの第一人者は山本一力である。と断じても異論は出ないのではないだろうか。 現在の活躍を知る読者は、著者が順調な作家人生を歩んできたと考えているかもしれない。ただ著者は、49歳だった1997年に「蒼龍」で第77回オール讀物新人賞を受賞するも同作はなかなか単行本に収録されず(中編集『蒼龍』の刊行は2002年)、デビュー作『損料屋喜八郎始末控え』が刊行されたのは新人賞受賞から3年後の2000年だった。この間、著者は何度も担当編集者に書き直し