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朝日新聞出版の文芸書

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書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。
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2022年4月の記事一覧

江戸市井小説の名手・宇江佐真理が“堀”に思いを託した短編集『おはぐろとんぼ』の大矢博子氏による文庫解説を特別公開!

堀でつながる家族の情   本書『おはぐろとんぼ』は2009年に実業之日本社から刊行された短編集である。実業之日本社文庫(2011年刊)を経て、この度、装いも新たに朝日文庫からあらためて読者の皆様にお届けできる運びとなった。  2009年といえば、看板シリーズである「髪結い伊三次捕物余話」シリーズ(文春文庫)を継続する傍ら4冊もの新刊を上梓した年だ。1995年のデビューから丸10年以上が過ぎ、宇江佐真理が円熟期を迎えて精力的に執筆していた様子が窺える。  宇江佐真理は北海

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波乱の人生を糧に……実社会から学んだ山本一力だからこそ書けた傑作 『江戸人情短編傑作選 端午のとうふ』末國善己氏による文庫解説を公開!

 現役の時代小説作家の中で、市井人情ものの第一人者は山本一力である。と断じても異論は出ないのではないだろうか。  現在の活躍を知る読者は、著者が順調な作家人生を歩んできたと考えているかもしれない。ただ著者は、49歳だった1997年に「蒼龍」で第77回オール讀物新人賞を受賞するも同作はなかなか単行本に収録されず(中編集『蒼龍』の刊行は2002年)、デビュー作『損料屋喜八郎始末控え』が刊行されたのは新人賞受賞から3年後の2000年だった。この間、著者は何度も担当編集者に書き直し

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【井上荒野著『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』書評】セクハラが起こる現場の空気を克明に描く問題作

■生皮を剥いで社会の膜を破る  恋愛、合意、セクハラ、レイプ。  同じ行為について、これほど違う言葉で表されることはそれほど多くないだろう。だからこそ、被害者がどれほどその苦しみを語っても、加害者や第三者は平気でこんな言葉を投げかける。  それくらいたいしたことないだろう――。  どうして被害を受けた者と加害者との間に、これほど大きな認識の溝ができるのか。 『生皮』は、この意識のずれに迫った小説である。芥川賞作家を送り出した小説講座の人気講師を、かつての受講者が性暴

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