見出し画像

【公開終了】今村夏子「むらさきのスカートの女」全文試し読み

令和最初の、第161回芥川賞を受賞した今村夏子さんの『むらさきのスカートの女』の文庫判が発売となりました。それを記念して発売日の本日6月7日(火)の10時から翌8日(水)の10時まで24時間限定で作品全文を公開しました。


 うちの近所に「むらさきのスカートの女」と呼ばれている人がいる。いつもむらさき色のスカートを穿いているのでそう呼ばれているのだ。
 わたしは最初、むらさきのスカートの女のことを若い女の子だと思っていた。小柄な体型と肩まで垂れ下がった黒髪のせいかもしれない。遠くからだと中学生くらいに見えなくもない。でも、近くでよく見てみると、決して若くはないことがわかる。頬のあたりにシミがぽつぽつと浮き出ているし、肩まで伸びた黒髪はツヤがなくてパサパサしている。むらさきのスカートの女は、一週間に一度くらいの割合で、商店街のパン屋にクリームパンを買いに行く。わたしはいつも、パンを選ぶふりをしてむらさきのスカートの女の容姿を観察している。観察するたびに誰かに似ているなと思う。誰だろう。  
 

つづきは文庫版


誰でも参加できるPOPコンテストを開催しています。大賞受賞者の方には1万円分の今村夏子さんの直筆サイン入り図書カードをプレゼント! 応募期間は2022年6月末までです。詳細はこちらから


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!