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朝日新聞出版の文芸書

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書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。
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#解説

歴史好きにも難解な平安末期を伊東潤氏が“平清盛”を通して描く『平清盛と平家政権』。歴史ライター・西股総生氏による文庫解説を特別公開

 伊東潤氏は、恰幅のよい作家である。  いや、何もルックスのことを言っているのではない。氏の小説は、古代から近世に至るさまざまな時代に題材を取り、また、本書のような史論や紀行物も多い。書くものの幅が広いのだ。  こうした「幅の広さ」を支えているのが、旺盛なリサーチ力であり、何より氏のあくなき好奇心であることは、作品を読めば直ちに理解されるところであろう。  また、一般には知られていないような人物や、細かな事件を掘り起こして題材とした作品もあるが、主役級の有名な人物を、正面から

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「せり場」で売られた少女たち 故・森崎和江の代表作『からゆきさん』本当の衝撃【文庫解説:文芸評論家・斎藤美奈子】

「からゆきさん」。漢字で書けば「唐行きさん」。そんな人たちがいたことを、この本ではじめて知った方もいるでしょう。 「からゆきさん」とは、もともとは江戸時代の末期から、明治、大正、昭和のはじめくらいまで、海をわたって外国(唐天竺)に働きにいく人を指す九州西部・北部の言葉でした(唐天竺とは中国とインドを意味しますが、遠い外国の別名でもあったので、「外国に行く」ことを「唐行き」と呼んだのです)。ですが、やがてそれは海外に売られた日本女性の総称に転じます。  からゆきさんの出身地

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【待望のシリーズ復刊】北原亞以子による人情時代小説の金字塔『傷 慶次郎縁側日記』 菊池仁氏の文庫解説を特別公開!

    <本書が原作>     時代劇セレクション「慶次郎縁側日記」(主演:高橋英樹)     NHK総合 毎週水曜日 午後3時10分から放送中     ※放送予定は変更になることがあります。  シリーズものとしては、池波正太郎「鬼平犯科帳」と比肩しうる面白さと人気を博した北原亞以子「慶次郎縁側日記」の待望の再刊が始まる。本書はその記念すべき第1巻である。  作者は重い病で病床にありながらも、旺盛な筆力を示していたが、2013年に75歳で急逝した。まずプロフィールを紹介す

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貫井徳郎著『迷宮遡行』の法月綸太郎さんによる解説を特別公開!

 十年間勤めた不動産会社をクビになった迫水の許から、ある日突然、妻の絢子が家出する。「あなたとはやっていけなくなりました。ごめんなさい。私を捜さないでください」とだけ書いた置き手紙を残して。親友の後東に励まされ、妻を捜し出す決意を固めた迫水は、身寄りのない絢子の過去を知る歌舞伎町のバーテン新井をたずねるが、新井は何かに脅えているようで、話をした翌日には姿を消してしまう。絢子と新井が相次いで失踪したことに不審を覚え、新井の身辺を探ろうとする迫水の前に、やがて暴力団関係者らしき男

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