#北原亞以子
俳優・奥田瑛二さん「吉次の生みの親たる北原さんと、意見が分かれないことを願うばかり」/北原亞以子著『脇役 慶次郎覚書』の文庫解説を特別公開!
こいつはとんでもないへそ曲がりと見た。さて、どう演じるべきか——。 NHKドラマ『慶次郎縁側日記』から出演の話をいただき、最初に原作を読んだときには、しばし考え込んだものだった。 何しろ、演じてほしいといわれた吉次は、とにかく強烈な人物だ。妹夫婦が営む蕎麦屋に居候する岡っ引で、弱みをつかんだ町人を強請っては金を得ている鼻つまみ者。そのせいで、「蝮の吉次」なんて異名までちょうだいしている。背中を丸めて歩く姿には、拭いようのない孤独と哀愁が染み付いている。 主役の慶
「読み継がれなければならない物語がある」――NHK時代劇にもなった傑作時代小説シリーズ『峠 慶次郎縁側日記』が復刊!作家・村松友視氏による文庫解説を特別公開
元南町奉行所の同心・森口慶次郎が市井の弱き者に寄り添う、人情時代小説シリーズ、北原亞以子著『峠 慶次郎縁側日記』(朝日文庫)が発売になりました。本作は、善良な薬売りの若者が一瞬の過ちで人生を踏み外してしまう悲哀を描く中編小説「峠」など8編を収録しています。今回の出版にあたり、著者の北原亞以子さんと親交のあった作家・村松友視氏による文庫解説を公開します。 毒は上澄みとなって表面に浮上するか、澱となって底に沈むかで、中間には存在しない。したがって毒見の役は、まず上澄みをたし