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朝日新聞出版の文芸書

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書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。
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#桐野夏生

「これは私たちの物語だ」 親に棄てられJKビジネスに引きずり込まれていく女子高生たち…桐野夏生さんが『路上のX』で描いたリアル

2018年2月に単行本として発売され、21年2月5日に文庫化された、桐野夏生さんの『路上のX』(朝日文庫)。親に棄てられ「JKビジネス」に引きずり込まれていく女子高生の姿を描いた作品だ。自身も高校時代に街をさまよっていた経験から、虐待や性暴力被害を受けた10代の少女を支える活動を行う一般社団法人Colabo(コラボ)を立ち上げた、代表の仁藤夢乃さんが文庫版に解説を寄せてくれた。発売を記念して、一部を抜粋でお届けする。 「これは私たちの物語だ」  この本を開いてすぐ、そう思

全国主要書店で開催中!朝日文庫「グランドフェア」ラインナップを紹介します

安藤 俊介『アンガーマネジメント入門』  仕事で家庭で、日々、イライラ、ムカムカに悩まされている人必読! 怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」を、わかりやすく、実践しやすいよう解説した入門書。日本にアンガーマネジメントを普及させた安藤俊介氏(一般社団法人日本アンガーマネジメント協会 代表理事)による、最新17刷のロングセラー文庫。 伊藤比呂美『読み解き「般若心経」』  死にゆく母、残される父の孤独、看取る娘の苦悩。苦しみにみちた日々の

【朝日文庫「名作フェア」】ラインナップ全10作品を紹介!目印は緑の帯

■伊坂幸太郎『ガソリン生活』  聡明な弟・望月亨とのんきな兄・良男の凸凹兄弟がドライブ中に乗せたある女優が、翌日急死する。望月一家はさらに大きな謎に巻き込まれていき…!?  車同士がおしゃべりする唯一無二の世界で、謎が謎を呼び不思議が広がっていく、仲良し家族の冒険譚です。解説は津村記久子さんで、「善良な人々を箱庭に入れて愛でるのではなく、悪もひっくるめた世間を渡っていく彼らの姿への信頼と、力強い誠実さが根付いている」と絶賛。文庫刊行から6年後の今も増刷を続ける名作ミステリ

【桐野夏生著『砂に埋もれる犬』書評】可視化される虐待

 全国の児童相談所(児相)が相談対応した18歳未満の子どもへの児童虐待は、30年連続で増え続け、2020年度で過去最多の20万5029件(厚生労働省調べ)となった。途方もない数字だとしか言いようがない。  桐野夏生氏の新作『砂に埋もれる犬』は、貧困の中での児童虐待、ネグレクト(育児放棄)の問題に正面から向き合った小説だ。  12歳の少年・小森優真、4歳の弟篤人、32歳の母亜紀の3人は神奈川県内の工場の多い街で、亜紀が付き合っている元ホスト北斗さんの狭いアパートで暮らす。小