マガジンのカバー画像

朝日新聞出版の文芸書

191
書評や文庫解説、インタビューや対談、試し読みなど、朝日新聞出版の文芸書にかかわる記事をすべてまとめています。
運営しているクリエイター

2023年1月の記事一覧

【辻村深月さん×加藤シゲアキさん対談全文公開!】変化する小説との向き合い方

辻村深月(以下、辻村):文庫化された加藤さんの初のエッセイ集、『できることならスティードで』のテーマは旅です。そもそも、なぜ旅がテーマのエッセイ集を書くことになったのか伺ってもいいですか。 加藤シゲアキ(以下、加藤):最初は「小説トリッパー」から、旅というテーマのコラムでエッセイを一篇書きませんかという依頼があったんです。ちょうど一人でキューバに行こうと思っていた時期でした。一人で行くのは少し不安だったんですが、これは取材なんだ、と思うことで背中を押されるように飛行機に乗る

「敗者の視点で描かれた残酷な事実の先にある“勝利”」書評家・渡辺祐真さんによる、小川哲『君のクイズ』評論を特別公開!

遊びとはなにか? ~ゲームとプレイ~  遊びとは何だろうか。  周りを見渡せば、子どものごっこ遊びから、スポーツやスマホゲーム、そしてクイズに至るまで、数えきれないほどの遊びやゲームに我々は囲まれている。有名な哲学者の言葉を持ち出すまでもなく、人間は遊ぶ生き物と言っていい。  文化人類学者のデヴィッド・グレーバーは、「ゲームとは純粋に規則に支配された行為」だと述べた。[注1]遊びやゲームには厳格なルールが定められている。将棋なら駒の動かし方や勝敗の決め方、スポーツなら使って

【2023年本屋大賞ノミネート】小川哲『君のクイズ』を取り上げてくださったメディア&著名人を一覧で紹介!

 直木賞受賞でもいま大注目の作家・小川哲さんの最新小説『君のクイズ』が2023年本屋大賞ノミネート作に選ばれました! 本作は、2022年6月、小説トリッパーに掲載されたのち、10月7日に書籍として刊行。発売後、SNSを中心に瞬く間に話題となり、この3カ月で多様なメディアで幅広く取り上げていただきました。取り上げられ方も様々で、広義のエンタメとして、狭義のミステリとして、より広い文学として……などなど、ジャンルを越え、業界を越え、話題にしていただきました。  そこで、取り上げ

「SNS空間の呪縛を脱するための提言」書評家・三宅香帆さんによる、宇野常寛『砂漠と異人のたち』評論を特別公開!

なぜ今、社会提言型の批評なのか「砂漠が見たい」――気がつくと、それが僕の口癖になっていた。そしてある日、Tは僕が自分でも気がつかないうちに精神的に参ってきているのではないかと言い出した。「一般的にその状況が続くと待っているのは、肥満とアルコール中毒、そして妻の怒りです」。それは一般的なことではなくむしろ……と指摘しようかと思ったが、それより先にTは続けてこう述べたのだ。 「だから行きましょう、本当の神と獣の世界へと」  宇野常寛の最新刊『砂漠と異人たち』(朝日新聞出版、20

2023年に発売予定の朝日文庫の一部をご紹介いたします!

 まずは今年の第一弾として、1月10日(火)には金原ひとみさんの『fishy』が発売されます。結婚したばかりの男に思いを寄せる作家志望の美玖。不倫する夫を監視しながら自尊心を守ることに必死な編集者の弓子。仕事も家庭も充実しているように見えるが、本当の生活が見通せないインテリアデザイナーのユリ。女たちの新たなつながりを描く物語です。  また、津村記久子さんの『まぬけなこよみ』も発売。初詣の帰り道、お正月の終わりを感じて物悲しくなり、ひな人形の人間関係に思いを馳せる……。季節の

2023年に朝日新聞出版から発売予定の文芸書単行本情報を一挙に解禁します!

■2023年1月10日発売予定『植物少女』朝比奈秋  美桜が生まれた時からずっと母は植物状態でベッドに寝たきりだった。小学生の頃も大人になっても母に会いに病室へ行く。動いている母の姿は想像ができなかった。美桜の成長を通して、親子の関係性も変化していき──現役医師でもある著者が唯一無二の母と娘のあり方を描く。 ■2023年3月発売予定『また会う日まで』池澤夏樹  海軍軍人、天文学者、キリスト教徒として生きた秋吉利雄。3つの資質はどのように混じり合い、たたかったのでしょうか