【伊藤比呂美著『いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経』書評】暮しのもろもろと日々声に出して読みたいお経。
■無のダンスを踊るかんのん
タイトルも、小さなお経のようだ。すぐさま声に出し唱えてみたくなる。いつか死ぬ、それまで生きる――これはわたしたちの合言葉ではないか。それにしても、こんなにたくさんのお経があるなんて知らなかった。本書には、現代語訳によって生々しい命を授けられたお経と、生き死にをめぐるエッセイが収められている。今を生きるものばかりでなく、死んでしまった人々、いきものたち。そして彼らを取り囲む自然、記憶。すべてが息づき、一続きの流れのなかにある。もとはサンスクリッ