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川添愛:連載エッセイ「パンチラインの言語学」

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文学、映画、アニメ、漫画……でひときわ印象に残る「名台詞=パンチライン」。この台詞が心に引っかかる背景には、言語学的な理由があるのかもしれない。ひとつの台詞を引用し、そこに隠れた…
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#パンチラインの言語学

なりたい自分になりたい(『違国日記』)――川添愛「パンチラインの言語学」第10回

 今回はヤマシタトモコの『違国日記』を取り上げる。ガッキー主演の実写映画も見ようと思ったが、この原稿の締め切り前に見られなさそうなので、取り上げるのはもっぱら原作漫画の方だ。  本作は、突然の事故で両親を亡くした15歳の少女・朝と、彼女の叔母である小説家・槙生との同居生活を描くものだ。槙生は姉(朝の亡き母)と折り合いが悪く、朝ともほとんど面識がなかったが、朝が両親の葬式で親戚中からたらい回しにされそうになっているのを見かねて、ほぼ勢いで彼女を引き取ることを決める。そのとき親戚

はこびるって何だよ!(『勇者ヨシヒコ』シリーズ)――川添愛「パンチラインの言語学」第9回

 最近、また『勇者ヨシヒコ』シリーズを見返している。数年ごとに『ヨシヒコ』を見たくなる時期があり、今がちょうどそれにあたるようだ。疲れすぎていて他に何も見たくないときでも、『ヨシヒコ』なら見られるし、見たら楽しめるという点で私にとってはたいへんありがたい作品だ。一話あたり30分という長さもちょうどいい。  見たことのない人のために説明すると、ストーリー上の設定は、故郷の村で勇者として選ばれた真面目な青年ヨシヒコ(山田孝之)が魔王の手から世界を救うために旅をする、というものだ。

Whatでは英語を話すのか?(『パルプ・フィクション』)――川添愛「パンチラインの言語学」第8回

 皆さんにとって、「これまでの人生で、見た回数が一番多い映画」は何だろうか? 私は『パルプ・フィクション』である。数えたことはないが、たぶん40回ぐらいは見ている。  初めて見たのは大学生のときだ。正直言って、一度目はあまり面白いと思えなかった。なんとなくクライム・サスペンスのつもりで見始めたが、ハラハラドキドキするような感じでもなく、登場人物たちはなんか本筋とは関係ないことをベラベラ喋ってるし、暴力シーンはやたらと怖いし、どちらかというと繰り返し見ることはないタイプの映画だ

「やっ……てますね」(『不適切にもほどがある! 』)――川添愛「パンチラインの言語学」第7回

 今回取り上げるのは、今年一月から三月にかけて放映された宮藤官九郎脚本の人気ドラマ『不適切にもほどがある!』だ。各所で話題になった本作、私も毎週楽しみに見ていた。謎のバス(実はタイムマシン)に乗って1986年から2024年にタイムスリップした中学体育教師、小川市郎(演・阿部サダヲ)が時代を飛びこえながら活躍し、昭和と令和のギャップを浮き彫りにするコメディだ。  昭和生まれの人間からすると懐かしいネタが満載で、市郎の娘でスケバンの純子(演・河合優実)が市郎に買ってきてもらったカ