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せやまさんとはじめてお会いした日のこと【クリキャベ編集日記-その1- 編集者K・改稿編】

第2回note創作大賞 朝日新聞出版賞受賞作『クリームイエローの海と春キャベツのある家』の著者せやま南天さんと担当編集者Kの編集日記です。
★第1回は、改稿について。編集者Kによる日記です。3回目までの打ち合わせでの裏側を、編集者Kの目線からお届けいたします!

せやま南天さんとはじめてお会いした日のこと
 ―打ち合わせ①―


はじめてせやまさんにお会いしたのは第2回note創作大賞授賞式の約3週間前。弊社の一室で打ち合わせが行われた時のこと。

私の右手には、先輩編集者のYさん、左手には文芸編集長、正面斜め左にはnoteのSさん、そして正面にはせやまさん。

最初の打ち合わせでお話したのは、書籍化を前提にした今後のスケジュールと改稿について。「作品の好きだと思ったところをお伝えしよう」とどきどきしながら挑んだのですが、緊張して……うまく話せたか覚えがありません。

せやまさん! あの時伝えられなかったかもしれない「クリキャベ」の大好きなところをもう一度お伝えさせてください(たくさんあるので、凝縮した3点です!)。

1.プロローグのはじまりかたが好きです(最初の、一文・二文目は、地の文ですが、津麦の感情が現れていて本当にワクワクしました。そして、自転車に乗る親子の描写が、私には、このあとの物語に繋がっていくように感じられて大好きです)

2.作品の細部、登場人物の一人ひとりの行動や、お料理の場面がとても丁寧に描かれていて素敵だなと思いました。献立が出てくることもとても面白く、よいアクセントだと思います。

3.自宅のデスクで読んでいて、4節で共感して大泣きをしました……(具体的には「見えない相手と自分を比べて、暗い気分になってしまう」というところで。人と比べるなとよく言いますが、どうしても比べてしまうこと……あります。津麦の考えることはよく分かるし、そんな気持ちと葛藤している津麦の強さに感動しました。)

このはじめての打ち合わせで、書籍化を見据えた改稿のお願いをしました。おもにお願いしたのは、

「主人公・津麦の過去をもっと知りたい」

ということ。津麦の現在のことが丁寧に描かれていた分、津麦がどういう過去を過ごしていたのかや、津麦と母との関係にとても興味がわいたからです。

ちなみに、はじめての打ち合わせでこんなにも緊張したのには理由があります。「せやまさんに嫌われたくなかった……」
好かれたいと思うばかりに、完全に上がってしまいました。
(若いから、経験がないから、信頼できないと思われないかな……と、そんな思いがずっと頭の片隅にありました )

また、テクニカルな面でも改稿が必要だと考えていました。ある程度の枚数がなければ書籍化が難しくなります。
せやまさんの場合は、この段階で約52000字。400字詰め原稿用紙で考えると130枚でした。初回の打ち合わせで、最終的に180枚以上を目指したいというお話をしました。

改稿の締め切りは2週間後に設定。
せやまさんと、筆の速さと生活リズムを相談して、少し短いかと思いつつ、「2週間でできると思います」というお声を聞いて! まずは2週間後の締め切りとなりました。


主人公・津麦の過去が描かれる!
 ―打ち合わせ②―


2週間後、締め切りの日の朝。
私は、締め切りと言えば、夜になってしまうタイプなので……「朝の提出、尊敬です」と思っておりました。短い期間であったのにも関わらず、遅れずに、何なら早めの提出で本当に心強い方です。
(そして、原稿を読んで一番率直な感想は、2週間でこんなに書いてくださるのか! ということでした。ありがとうございます!)

いただいた改稿原稿には津麦の過去がたくさんありました。
幼少期のこと、商社時代のこと、そして津麦と母との関係性。
作品が深くなっていったのを感じました。

ただ、津麦の過去が描かれる場所が前半部分に固まってしまっていた印象を持ちました。

私は、先輩編集者のYさんと相談し……
(改稿の際は、Yさんが一緒にみてくれています。このころは、自分の感想や考えに自信がなかったこともありました。Yさんが「大丈夫。読めてるよ」と声をかけてくださったことがきっかけで、安心して意見を発言できるようになっていきました。最近話題になる心理的安全性が高い状態ってこういうことなんだなぁと、当時、思っていました。)
……2回目の打ち合わせに向かいました。

いただいた改稿原稿にメモをする日々でした!


10月27日。
そう、2回目の打ち合わせは、第2回note創作大賞の授賞式の日。

事前のやり取りの中で、せやまさんから

「授賞式も緊張しますが、
原稿の感想を聞く方がドキドキかもしれません(!)」

とメッセージをもらっていましたが、確か私も緊張していたなと思い、今メールを見返すと

「(実はこちらも緊張しているのですが)」


と書いてありました……。

1回目の改稿についての印象などをお話して、さらなる改稿をお願いしました。たくさんメモをとっているせやまさんをみて、私も頑張らなければと思ったこと覚えています!


プロットが届きました
 ―打ち合わせ③―


2回目の打ち合わせのあとの10月31日。
早速、一通のメールが届きました。

メールのタイトル:【クリキャベ】構成のご相談

津麦の過去を描くタイミングについての案が2つと、Excelでつくられた丁寧なプロットが添付されていました。細かいプロット(すごい……)をよく見ると、私が前回の打ち合わせでお話した感想なども書かれていて、その丁寧さに敬服しました。

いただいた案をみて、本当によく考えてご相談してくださっているのが分かりました。
私も、時間をかけて悩み……
自分なりの答えをもって3回目の打ち合わせに臨みました。
3回目は初のオンライン(zoom)です。少し複雑な説明が必要だったので、びっしりとメモをしたノートを見ながらの打ち合わせでした。

対面での打ち合わせは、細かいニュアンスまで伝えられてやはり良いのですが……、素早く対応したいとき、電話と違ってお顔を見て話せるオンラインを使っていかない手はない! と思います。ただ、オンラインってあたたかさがあまりなくなってしまいます。「いつもよりも笑顔を増やして、あたたかい雰囲気に」と意識するようにしています。

数日後。2回目の改稿の締め切り日に届いた原稿は、前回の「津麦の過去が書かれる場所が前半部分に固まってしまっていた」ことがしっかりと修正されていました。

せやまさんの改稿は、前の打ち合わせでお話した部分以外の細かいところも、毎回修正されてきます。本当に細やかです。身体のある部分についての描写や、お料理の手順に、登場人物の話し方。そういった部分から、どんな思いで改稿をされたのかがひしひしと伝わってきました。

また、この段階で、描かないこととした津麦の過去もあります。

泣く泣くカット、です。私の胸の中にしまってあります。でも、その描かれなかった部分は、津麦の性格として作品に表れているなと思います。恐らくそういう場面が、せやまさんの中でほかにもあるのかもしれませんが、書いたことが無駄だったのでは全くなく、キャラクターの過去としっかり向き合っていただくことが作品の深みに繋がるのだとこの改稿を通して感じました。


みなさんへ


「クリキャベ編集日記」その1、いかがでしたか?
 
私はここ1カ月ほど考えていたことがあります。
「『クリキャベ』を応援してくださる方々のハッシュタグ=ファンネームが欲しい……!」
 
そこで、ファンネームを考えました!(せやまさんにも一緒に考えていただきました!)
 
#クリキャベサポ  です。
(せやまさんはサッカー観戦がご趣味なのです)
 
既にクリキャベサポのみなさん! これからクリキャベサポになるみなさん!
応援よろしくお願いいたします。

次回は、せやまさんの編集日記(改稿編)です! お楽しみに。
 
 
書籍編集部 K


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